テラーノベル
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人見知りを大発揮している僕は、リヴァさんが色々と話してくれているうちの、半分くらいしか会話に参加できないまま試合の終盤を迎えてしまっていた。
(リヴァさんが敵の位置を教えてくれたり、敵を倒したときに褒めてくれたりするのに、僕は「了解」と「ありがとう」くらいしか返せていない。)
「敵があっちとそっちにいるから、そこ接敵したら私たちも行きましょう!
何かあったら私がヒールもしますし、蘇生もしますから!任せてください!」
なんと頼もしい。
指揮からサポートまでしてくれる上に、銃撃戦のゲームなのに場を和ませてくれる。
多分、僕よりゲームも上手い。真逆の性質を持った存在のような気がする。
そんなことを考えながら、僕は短く「了解」とだけ返した。
「うぁぁぁん・・ごめんなさい、私の力不足でしたぁ・・。ナイスファイトでした・・。」
敵は倒せたものの、別の敵に漁夫られて全滅。
VC越しに、リヴァさんが半べそをかいている。……なんか可愛い。
戦乙女みたいな子でも、不貞腐れて人間らしい一面を見せるんだな、とか、わけのわからないことを考えていた。
「僕も撃ち合い弱すぎて負けちゃいました・・・。リヴァさん、ナイスファイトでした!」
……あ、もうお別れなのか。
もっと話していたい。名前も顔も知らないけど、もっと知りたい。
僕は、思わず言葉を紡いだ。
「あの・・、リヴァさんさえよければ、このあとパーティ組んで、何戦か一緒に遊びませんか・・?」
ミュージシャンとして、ボーカルとして名の知れた大森元貴とは思えない、か細い声で。
完全にやらかした。気持ち悪いと思われたかも。断られたら普通に凹む!
そんな負の感情が爆発しそうになった、その時――
「えっ?!いいんですか!嬉しいです、ご一緒したいですっ!」
その瞬間、僕は誰もいない部屋でガッツポーズをした。
ゲーム音に紛れて気づかなかったけど、彼女の声はとても落ち着きがあって、透き通っていた。
あの後、無事に僕はリヴァさんとディスコードを交換しゲームの途中から雑談モードに突入していた。
「いつもどんなゲームしてる?」とか「あのゲーム面白いよね」とか、ずっとゲームの話で盛り上がっていた。
「そういえば、omotiさんってお仕事何さてるんですか?
私もそうですけど、平日の深夜にゲームしてる人って、あまりいないから!」
軽い興味で聞かれたんだと思うけど、僕は本日二度目のパニックを起こした。
「うーん……音楽ディレクター的な……?ちょうどひと段落したところで。
リヴァさんは、普段は何してるんですか?」
“みせすぐりーんあっぷるのボーカル”なんて言えない。
でも、一応音楽を作っているのは事実だから嘘ではない・・・と自分に言い聞かせる。
「夜更かししてる〜。お肌に悪いですよ〜!
私ですか?ちょっと色々あって・・お休み中なんです。人生の夏休み的なやつですね!」
そのとき、彼女の透き通った声が、少しだけ濁った気がした。
触れていいのかわからない。気を悪くされるかもしれない。
でも――
「僕でよければ、力になりたいです」
わ〜お。
話が前に進まん!!!