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【 運命だったかもしれない二人 】
mm(♀) × lt(♀)
世界観ファンタジー
長いです(約4000文字)
雰囲気ダークです
mmmr様の二次創作です
御本人様には関係ありません
地雷の方はUターンお願いします!
__ lt side __
私は今日も、その景色を見つめる。
薄暗い屋敷の回廊。そこに窓や蝋燭はなく、ただ何か非人間的な力によって微かに照らされているだけだ。
いつからこうなったのか。なぜこうなったかは覚えていない。
??「……」
貴方は、今日も私を見つめる。
昨日と同じように。私と同じように。
如何せんもう見飽きるほど見たのだが、私は視線を外すことはできなかった。
体が動かないから。
??「……」
貴方は黒いローブを深く被っていて、いつもその正体を見ることができない。
でも、見つめられていることは分かる。
額縁の中に、ピッタリと蝶の標本のように固定されている私を見つめている。
??「………」
ローブの隙間から、貴方がにやりと笑った気がした。
自分は今、”貴方”に命の主導権を握られている。
それが例え思い込みだったとしても、私の背筋を凍らせるのには十分に冷酷な笑みだった。
__怖い。
目の奥に今までの記憶が蘇る。
故郷の村。
優しいお母さん。頼もしいお父さん。
一緒に笑い合った兄弟たち。
旅で出会った仲間。
運命だと思うほど仲良くなれたあの子。
__あ、あの子なら助けてくれるかも……
……だめだ。
私は、もう……
だれか、
助け、
て……、
mm「壊れてしまいましたか……」
私は、さっきまで被っていたローブのフードを取る。
それに合わせて、ローブの中に入っていた長い髪が解放され、地面につく寸前にまでさらさらと流れ落ちる。
そんなことを気にせずに、私は壁にかかった額縁を見つめ直す。
その額縁には、赤いヘアピンをした人間の女の子が飾られていた。
mm「まさかこんなに早く死んじゃうなんて……」
あの子は孤独に耐えられる強い子だと思ったが、そうではなかったようだ。
mm「わざわざ仲間だと偽装して近づく価値はありませんでしたね」
そう言えばあの子は、魔王を倒す勇者だったということを今更ながらに思い出す。
簡単に騙されるほどの純粋さが、勇者にふさわしいと判断されたのだろうか。
せっかく勇者となったのに、あいにく魔王を倒さずに死んでしまった訳だが。
mm「…楽しかったなぁ、あの子との旅……」
口からポロリと、思ってもいない言葉が出てきた。
本当に。なんで今更……
はっと気づいて、目から零れそうになる涙をゴシゴシと腕で拭く。
ここで泣いたら、私の魔王としての尊厳がなくなってしまう気がした。
……そうだ。本当は違う。
私はあの子と生きていたかったのだ。
最初は勿論、勇者を倒すためだった。
油断させて、パーティーの一員として過ごしていくうちに、彼女のことが好きになってしまった。
毎晩彼女と二人きりで焚き火を見ながら、雑談をする時間が何よりも大切だった。
自分は生きていると、初めて実感できた。
でも彼女は所詮人間。
勇者というのはどんな理由があっても、同胞のために魔王を倒さなくてはならない。
彼女には家族がいた。
貧乏だがその分みんなで力を合わせて生きており、仲がとても良い家族だと、彼女は誇らしげに笑いながら教えてくれた。
しかし、ltが勇者の能力を覚醒してしまってからは状況は一変。王国の者が家族を幽閉し人質にとり、彼女に魔王討伐を強要させたのだという。
だから戦う。魔王がどんなやつか知らないし、怖いけど。
家族のために。あの平穏な日々を取り戻すために……
それしかなかった。
そう語った彼女の目は、赤く腫れていた。
私はそっとその肩を抱きしめた。
それが、あの夜。
最後の夜だった。
翌日、私は愚かな提案をしてしまった。
彼女が死んだことにすれば、家族は解放されるのではないかと。
でもそれは哀れな提案でもあった。
仮にそれが成功し家族は解放されたとしても、彼女は一生家族に会えないのだから。
報われないのだ。
彼女は、最初はその提案に抵抗をみせた。
だとしても、どうしようもない。
彼女は魔王と戦いたくない。
私も彼女と戦いたくない。
でも戦わなくてはならない。
ならばしょうがない。彼女は、最終的にその提案を飲んだ。
彼女は仮死の薬を使って倒れた。
私は意識のないその体を王国まで持って行き、城の側に置いてその場を去った。
こうして、勇者の死を確認させることができたのである。
でも王は血も涙もない扱いをした。
彼女の身体を貼り付けにし、火炙りにしようとした。
この王国は普通、土葬をする文化だ。火炙りは重罪者の処刑方法だった。
王国は、勇気を絞り出して旅に出た彼女を、勇者としての役割も果たせない罪人として殺したのだ。
私が気づいた時には遅かった。
城の前の広場で処刑が行われていた。
メラメラと燃える炎。その燃えしきる揺らぎの中に、焚き火の前で笑い、そして泣いていたあの子の顔が浮かんだ。
私は発狂した。執行人や王、周りにいた野次馬までも、怒りに任せて全て殺した。
もしかしたらその中に彼女の家族もいたのかもしれないが、自我を失った当時の私にはそれを気にしていられる余裕がなかった。
もう炎が燃え尽きて炭になってしまった頃、私は張り付けられていた彼女の身体を板から取り外し、崩さないように優しく介抱した。
彼女の身体は跡形もない。辛うじて骨は残っているも、見るに堪えない惨い姿と成り果てていた。
仮死ではなく、本当に死んでしまった……
なんであの時、彼女の側を離れてしまったのだろう。
なんであの時、もっと早く気づかなかったのだろう。
なんであの時、あんな提案をしてしまったのだろう__
__なんで、なんで、なんで……
いくつもの後悔の念が、私の頭をえぐり取る。
その責め立てる声の中に、一つだけ異物が混じっていた。
『まだ魂は生きてる。そこから再生を狙うのはどうだろうか』
そう囁いたのは今でも誰か分からない。
自分だったかもしれないし、はたまた別の誰かだったかもしれない。
だが、この提案が確実に後の運命を大きく変えることになる。
私は治療を開始した。
彼女の体を特製の棺に入れ、体を再生させるために魔王とネクロマンサーの力を存分に使った。
死んでから比較的早くに治療に取り掛かれたからか、脳以外の肉体は全て復元することができた。
完全体となった身体の一方で、脳はまだまだ未完である。
脳は生物を構成する上で、一番重要と言ってもいいほどの臓器だ。
体を司り、その人の思考・性格も全て脳が決める。
そのため構造の複雑さ故に、他の器官よりも再構成にかなりの時間がかかるのだ。
mm「よし…」
ともかく、ここまで来たら安泰だ。彼女の心臓はどくどくと蠢いており、呼吸・脈拍も異常なし。
あと少し待てば、脳が出来上がり、また再び彼女を生き返させられる。
私はいつでも彼女の様子を見られるように、特製の棺を彼女ごと魔王城の壁に貼り付けた。
棺の縁は金の額縁と思わせるような装飾が施されているため、血に染まったような鮮やかな紅色の壁によく馴染んでいた。
lt「……」
mm「おっと、」
彼女のまぶたが、ピクリと一瞬だけ動いた。
私は慌ててあらかじめ用意していたローブを羽織り、そのフードを深くかぶる。
視界の上部にフードが映った直後に、彼女の瞼は開かれ、壁の色と同一の綺麗な紅色の瞳が現れる。
mm「危ないところでしたね」
私は呟く。
治療中の彼女には、まだ私の姿を見せてはならないのだ。
なぜかって?それは彼女が崩壊するのを防ぐためである。
死んでいる、という状態は生物にとって本能的に恐るべき対象だ。
もし治療中の彼女が、自分が死んだということを自覚すれば、それはどうなるだろうか。
__魂と肉体のバランスが崩れてしまう。
その上、至極当たり前のことだが、もうこの世界で生きられないという悲惨な事実、胸を裂くような感情が溢れ出てくる。
そうなると、ますます魂と肉体が分離してしまうだけだ。
間違って私を彼女の視界に入れてしまったら、まだ彼女が生きていたことを衝動的に思い出し、抑えきれない感情が彼女を埋め尽くしてしまう。
そして、その負担に魂が打ち勝つ事が出来なかったら、彼女の魂は消滅してしまう。
それらの悲劇を防ぐために、私は今日もベールを被る。
ひどく長い間__毎日毎日、毎時間毎時間、毎分毎分、ついには毎秒、いや、コンマに至るほどだったのかもしれない。
どれくらいかはさておき、数え切れないほど私は彼女の様子を伺い、また生を受け復活するのを待っていた。待ち望んでいた。
なのに……
mm「ぁ…あぁ……」
彼女は死んでしまった。
身体がドロドロに溶け、あんなに光り輝いていた額縁を跨ぎ重力に従って床へ雪崩れている。
あの美しい姿はどこにもない。
最早人ですら…生物ですらその原型はない。
黒い艶があった髪も、透き通るような肌も、健気なあの眼差しも。
彼女はどこにもいない。
死んでしまった。
2回目の死。
mm「…わ、」
声が震えた。
mm「わ、たし、が……もっと…もっと気を、つけて…いれ、ば………、」
良かった。
mm「ッッ”””」
“良かった”ではない。
そうすべきだったのだ。
私は罪人だ。
私は力の入らない足を無理やり動かし、窓際へと向かう。
はっきりとした意識のないまま、開いた窓から飛び出し、人外の背中についている翼を使って、目の前の空へ飛びたつ。
そしてはるか上へと向かう。
どこまでもどこまでも高く。
どんどんどんどん宇宙に近づきに行って。
どんなにどんなに苦しくてもいいから。
__だから、あの子を返して。
お願いだから。
あの子が戻ってきてくれるのなら、私は何もいらない。
私はいつまでもずっと、天へたどり着こうと翼を動かしていた。
__その先に天国はないことを知っているのに。
コメント
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せつな...
読了しました。第16話、lt視点の真実が重すぎて胸が痛いです……。勇者を装って近づいたのに、本気で愛してしまったからこその「生かすための偽装死」の提案。それが裏目に出て、彼女を二度も失うという皮肉。額縁に閉じ込めて再生を待つ間、ずっと覆面で見守り続けた執着と、それでも届かなかった無力感がひしひしと伝わってきました。「天国がないと知りながら飛び続ける」ラストが、救いのなさと美しさの両方で心に刺さります。設定の輪郭がしっかりしているからこそ、感情の壊れ方が怖いくらいリアルでした。
MIRAN@📢本日参加型更新
120
#キャラ崩壊注意⚠
mmmr推し
230
ルリィ
121