テラーノベル
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……、…落ち着け、、…。
……どういう言い方をすればいい?…
原因なんて、寝室の一件の事しか思い当たらなかった
元貴が普段決して表には見せない反応を見せてしまう程にプライドを傷つけてしまった事と、元貴の中のわだかまりがこんなにも大きかったのかと、内心かなり動揺していた
ああ…
元貴のもやもやが消えた訳じゃないって分かってたのに、なんで自分の格好つけなんて優先させたの…
俺のバカっ…と、狼狽えた頭を最速で回転させる
とりあえず、ベッドサイドに置いていた水を取り、 キャップを開けて元貴の手に持たせて、 出来るだけ優しい声で、元貴に告げる
「元貴、お水、飲んでほしいな。…飲める?」
頬に手を添えて、口の端を指で拭いながら聞く俺に、素直に従う元貴
元貴を少しでも安心させたくて、手を握った
「……元貴、、。こないだのこと…?まだ、気になる…?」
「………」
言葉に迷ってる様な顔をして言い淀む元貴を、そっと引き寄せて、抱きしめて言った
「…ごめんね…。俺、ここまで元貴がする程、気にしてたと思わなくて…」
抱きしめた腕に少しだけ強く力を込める
「あれは…」
「それは違うよ。」
言い掛けた俺の言葉に、即座に、元貴の驚く程真っ直ぐな鋭い声が重なった
…ぇ…?、
…でも…それ以外なにも…
強がりとは思えないような、あまりにも真剣な声に、俺の頭が動揺する
「……ぁ、いや…、違くは、、ないけど…、、」
「でも、それは俺の中の問題で、しょうがないというか…本当に、良くて……」
今度は鋭さが和らいで、少し言い淀む様な声だった
………、?…
抱きしめていた俺の身体をぐいっと押して、俺の目を真っ直ぐ見つめて元貴が言う
「若井は何も、悪くないじゃん。」
「……ただ、若井のことを、幸せな気持ちにしたかったの…。」
……、/…?…?…
動揺してあまりピンときていない様な俺の様子に、”伝わってない”と思ったのか、照れを隠して視線を逸らし、元貴が言った
「いや、…だから、、」
「…いつもさ…若井が俺に……してくれる、みたいに…若井のことを、気持ちよく、幸せな気持ちにしたかったの」
「こないだ、あの場ですぐあやまらなきゃって思ったけど、…出来なかったし…」
「勉強しないと…お前の事、気持ちよくできないし…」
「練習したけど、いろいろ…時間もあんま取れないし、そんなすぐ、上手くなんなかった..?、…。」
なるべくちゃんと伝えようとする元貴の声が、僅かに震えていた
「……」
きゅうぅっと心臓が勝手に縮こまる
元貴が再度、ちゃんと俺の目を見て言う
「…若井の…過去に、、誰が居たとしても、……俺は、それを超えたいし、。」
「超えれるかは置いといたとしても、超えるつもりだし…。…身体も、気持ちも。」
「………」
あぁ…
大森元貴って、こういう人だった…
平気に振る舞っていても、”自信がないから、頑張る”
俺が同じ思考でぐちゃぐちゃと留まっている内に、元貴はとっくに自分の気持ちと向き合って、腐らずに原動力へと昇華していた
……元貴には、敵わない……。
ずっと、こうやって努力を積み重ねてきた
…こうやって、俺の想像の遥か上を、元貴はいつでも飛んでいる。
直近の、目まぐるしい日々を思いだす
…俺以上にスケジュール過多なのに…
……そんな事に割いてる時間がどこにあったの……?、…
謝ったり心配したりは、元貴に失礼だと思った
これだけで、充分伝わる…
元貴の顎に、優しく触れて持ち上げて、わずかに横を向かせ、俺の胸に元貴の顔を押し当てる
「………元貴、ここ、わかる?…」
「…元貴にだけ…。……ありがとう。」
「………ぅん。…」
元貴の顔が、安心したようにふっと緩んで、俺の鼓動に耳を澄ませるように、そっと目を閉じた
コメント
5件
心理描写が細かくて最高すぎる…読んでてニヤニヤとドキドキがすごい!尊すぎるうぅ!
続きも待ってます♪
やっぱ主天才!