俺たちの必殺技である風爆チャリ漕ぎで40分ほどで目的地に着いた。
「さすが森なだけあって木の量が凄いなもはやジャングルだ」
「ジャングル舐めるな」
「俺は飴しか舐めないよ」
「調子乗んなよ」
「俺はチャリしか乗らねぇ」
「よーし,帰るか」
「ごめんって俺が悪かったから!」
「しょーがねぇ。許してやるし帰してやるよ」
「は?」
「土にな」
「何も許してねぇじゃねぇか」
かいとと支離滅裂で魑魅魍魎の会話をしているといつもはすぐツッコんでくるはずのけんじがなぜか黙ったままだった。俺は深掘りしない方がいいような人の悩みもショベルカーを使ってでも掘り起こす。
「よーし!種探しするか!」
「コケだろ。なんだ種ってマジック見るのか?何に釣られたんだよ。」
かいとがそう言ってそれからは3人で川辺に行ってそのコケだか種だかを探していた。最初はやる気満々だったが10分いや20分ほど経つと少し開き始めていた。かいとは俺と同じように全力で草を掻き分けて探していたがけんじは中腰で眺めているだけだった。少しムカついたが半強制的に連れてきたのだからしょうがない。と言うか何だ?コケを探すって。こんな頭悪いことできるの俺たちの中だとりょうだけだ。そしてはるきのありがたさを知ることになった。はるきは俺たちを見ながら鼓舞してくれるしりょうは全力で探してくれる分こっちも頑張ろうと言う気持ちになる。なおきはしゃべりこそしないが集中して探してくれるし遊んでばっかりじゃダメだと教えてくれる。でも残念ながら残ったのはあたおか信者と勉強botだ。そんな中放り込まれたら閻魔様だろうと鬼だろうと泣いてこのジャングルから抜け出すだろう。もっとこうワクワクやドキドキのある宝探しなら楽しいだろうが残念ながらやっているのはモサモサの草々をわざわざ黙々と書き分けコケを探しているのだ。コケ探しでこんなにこけるなんて思ってもいなかった。コケだけに。なんつってw
「もう終わりにしないかー?」
けんじのこえでまだまだ続きそうだった長文に終わりを与えた。
「まぁここにはもうないだろうな」
かいとの賛成に俺も賛成だ。流石に飽きた。さすが秋田だ。ここは秋田じゃないけど。
「もう帰るか」
「そうだな」
高偏差値組が話し合っていた。
「おいけんじさんよぉ〜。おて手が綺麗ですねー」
「こんなもんだろ」
適当に返すけんじに泥だらけの手のひらを大きく広げて見せた。
「きったね,近づけんな」
「へへ,」
そうやって笑いかけてもけんじの頬は緩まなかった。
「じゃあ帰るか,」
「そういやけんじ静かじゃね?」
さっき視線をなおきや俺から目を逸らした時から静かだったのでなんとなくで聞いてみた。
「なおき,多分何か隠してるよな」
「急にどうした?てかなおきを信じていないのか?」
少し声が荒くなった。
「信じてるよ。信じた上で疑ってんだ」
「何をだよ」
「考えてみたらおかしくないか。何で『僕を助けると思って』なんて言ったんだ。多分あいつ自分が黒狼病かかってるって思ってるしその予想は正しいんじゃないか?」
確かにそうだった。けんじの言うことは間違いない。でも,いや,だからムカついて言い返してしまった。
「確かにそうかもしれない。でも,じゃあどうしてすぐ行くって言わなかったんだ!何で中腰で見つめてるだけなんだよ!なぜお前が1番最初に探すのをやめようって言ったんだ!」
「苔の位置とかを知ってるのは全部なおきなんじゃないか?まだ隠してることがあると思うんだ。だからなおきの家に行こう」
かいとがそう言い3人で元来た道を戻っていると視界にいかにもなそれらしいものが入ってきた。
「おい!!あれじゃね?!」
そう言ってそこに駆け出した。
「おい!!危ない!」
けんじのとても上ずった掠れた大声が聞こえた。そして右から何か黒くて小さい影が見えた。そこからは名前は知らないが色々スローに見える現象が起こり頭の中はクリアになった。聞こえるのは自分の心臓の音と小川の音,見えるのはさっきの黒い影と例のコケらしきもの。そして右手に激痛が走り頭がくらくらし出した。そしてそのコケらしきものがコケであるとわかったあとゆっくりと目を閉じた。
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