「お疲れ様です。」
「あ、おはようございます。」
俺の敬礼を礼儀正しく返してくれた彼は俺の部隊に新しく転入した小隊長だ。階級は3等陸尉、そうだ。彼は自衛官を9年もやって来た俺より上官だ。俺は彼に敬礼をしなければならない。しかし、これから彼と出会うことはない予定だ。何故なら俺は今日付で民間人に帰るためだ。俺は彼を後ろにしたまま、大隊長室に向かった。
こつこつ
「入れ。」
「失礼いたします。」
「除隊報告か。」
大隊長はつっけんどんした顔で俺を迎える。俺は敬礼をした。
「部隊に人手少ないこと知ってるくせによ。」
「…..」
大隊長は俺の敬礼を座ったまま無視して自分が言いたい文句を話し始めた。
「申し訳ございません。これまでお世話になりました。」
大隊長は煙草に火をつけ、一服吸い込み、煙を口から吐き出した。
「お前がやってた仕事を後輩に押し付けたやつがどの面を下げて言ってるのか、まったく。」
「…..もう帰ってもよろしいでしょうか。」
「出ていけ、これ以上お前の顔みたくねえよ。」
「失礼しました。」
俺の敬礼を最後まで無視した大隊長を後ろにした俺は、大隊長室を出た。9年間の自衛官生活の最後の場面がこれとは、俺は本当に彼に呆れてしまった。前任の大隊長はこれほどではなかった。彼は防衛大学校の出身ではないため、進級の道が保証されていない。今の自衛隊では非防衛大学校出身者は上に上がることが本当に難しいことだ。進級に焦っているからこう刺が立ってるような態度だろう。
「自分が勉強ができなくて防衛大に入れなかったくせによ。」
大隊長の前で言ってみたかった言葉を、衛兵所まで歩きながら言ってみる。俺は本人の前で言えるような人物ではなかった。
「ドア開けて、今日除隊する3中隊の高木。」
「お疲れ様です!分かりました!」
気合が入ってるような敬礼を、俺も返してくれた。俺もあんな頃があったのにな~。あいつはいつやめるのかな。
「お疲れ。」
ドアを出た俺は、正に除隊を迎えた。服務期間は9年3カ月、最終階級、2等陸曹。3頭陸士から始まった俺の自衛隊生活は幕を閉じた。本当に長い旅を終えた気分だった。俺に20代はどこに行ったんだろう。返してくれえええええええ!!!!
「もううううどうしよううううう!!!!~~~。」
まずい、まじでまずい。これ以上やってらんないと思って、除隊はしたけどこれからどうすればいいのよ…….
「死にてえ。」
この年で再就職は絶対無理だと思う。キャリアと言っても自衛隊の経歴しか存在しない30代の高卒のおじさんを雇ってくれるやさしい会社はこの世にないだろう。除隊しても外は地獄という言葉を繰り返していた先輩を思い出す。
「え、でも自衛官よりコンビニバイトのほうがましだろう。」
除隊したことを後悔はしない。でも、これからの先が真っ黒で、涙が出そうな気分だった。
「どうにかなるっしょwwww。」
未来のことは未来の俺に任せてらいい。まずはお酒を飲みたい気分だ。
「朝からお酒飲めるニートさいこ……」
その瞬間、俺の体は宙づりしていた。
「え?」
という断末魔を最後に俺の意識は消えてしまった。
…
…
…
…
…
「ここって….どこ?」
目を覚ましたら、色んな書類や事務道具が散らかっているとある事務室であった。
「ええっ…..と…..」
変な声を出しながら周りを探索すると、俺と同年代に見えるスーツ格好の女性が頭を抱えながらある作業に集中していた。彼女の顔はくまだらけで、苦しい表情をしていた。髪は黒色で、顔は結構いい方。俺が約1分間どうすればいいか迷っていると、彼女はようやく顔を上げ、俺を見かけた。すると
「えええええええ…..まもなく上がりなのに面倒くさい………」
「え?」
ここはどこで、彼女の正体すら分からない俺としては、彼女が何を言ってるのか全然理解できなかった。
「早く退勤したいからさっさとこっちに座ってください。」
「は…….はい。」
彼女が指している彼女の前にある椅子に一応着席した。
「どれどれ…..高木さんは短命者ですから転生処置の対象者です。転生する世界を私が選別しますので、私の質問…..」
「た…短命者?」
彼女の言葉を切って、俺は彼女が言及した言葉を繰り返した。
「文字の通り、天寿を全うできず死んじまったってことです。」
「え?俺は死んでませんよ!!!!!」
「だ!!!か!!!ら!!!」
いきなり、俺の目の前の女性は打ち切れ、俺に向かって怒鳴り始めた。
「早く終わらせて帰りたいんですから!!!これ以上、私の質問する時以外喋ったら高木さんを一番最悪の世界にお送りしますので、覚悟してください!!!分かりましたか!!!!!!!」
「はい!」
疲れと怒りが混ざっている彼女の表情と声を目睹した俺は、大人しく服従することにした。自衛隊で当直勤務をしていた過去の俺をみているような感じがして、少し彼女に同情した。まあ、服従は慣れていることだから(泣)。一応、俺はこの状況を夢を見ているような現状だと考えることにした。
「は…..くそ上司は何でいきなり長期休暇取ってるんだよ。」
「…..」
文句を一言口ずさんだ彼女は説明を続けた。
「どこまで話したっけ…..そう。死因は交通事故、他人によって運悪く死んでしまったので、これも転生時にプラスポイントです。」
「はい…..」
「それと…..病身の父親を最後まで支えたこともプラス、マイナスは…….犯罪歴なし、誰かをいじめて苦しめたこともなし、マイナスポイントはありません。結婚せず子供を持たなったことは短命したため論外。」
「………」
子供を持たないことも罪になるのか、現代の日本人は多くの人がマイナスポイントになるのかと、一人で考えていた。
「数回くらい被災者に募金したことと、自衛隊で復興活動に多数参加したことも少しだけプラス、ポイント換算は以上。転生世界の定員は…..えええ…めっちゃ曖昧じゃん。」
まるで、会社の面接を受けている気分だ。会社の面接を受けたことはないが。
「あ、こうしたらいけるかも。高木さんは恋愛経験なしの童貞でしょう?」
「いきなり何ですか!」
予想もできなかった質問が飛んできて、俺は自分も気づけないうちに声が上がってしまった。
「合ってますか?」
「事実なんですけど…….それが転生なんちゃらとどういう関係なんですか???」
「さっきの話忘れました?」
「すみません、その通りです。」
一瞬怖い表情に戻ってきた彼女の顔を見て、俺は従順モードに戻って来た。
「恋愛とかエッチなことがし放題になったら幸せになるでしょうね。」
「まあ、そうっすね。」
「よし、決定。」
何が?という疑問が沸いてきたが、早く変な夢から逃げたかった俺はその気持ちを抑えた。そして、机の上にあるパソコンをいじり始めた彼女は、その状態で引き続き質問した。
「中世社会と現代社会の中でどっちで死ぬまで暮らしたいんですか?」
「当然現代でしょう。」
「最後に、ポイント入力…….恋愛が目的だから、残りは見た目と年齢調整……え、こうしても3ポイント残ってんじゃん…….あ、基本能力をONにしたらいけるか。」
「めっちゃ適当じゃんか…..恋愛が目的っていってないけど。まあ、してはみたいけど」
俺は小さい声で独り言を口ずさんだ。
「登録完了です。こことここ……あ、ここサインしてください。」
と言いながらただいまプリントされた紙3枚を俺に突き出した。
「はい…….」
サインを終え、どういう内容か読んでみようと思った途端、彼女はあっという間に紙を回収した。
「ご愁傷様でした。これからの新生活、ご武運を。」
「えええ、ちょっと最後に俺からの質問も……」
俺の言葉をすっきり無視し、彼女は隣の赤いボタンを押した。その瞬間また意識が消えてしまった。この時は知らなかった。よりによって気分が悪い「職員」と会ったのかを。
…
…
…
「あああああ、ようやく退勤だ!」
一回背筋を伸ばした彼女は結構速いスピードで自分の荷物を整理し始めた。すると、隣の部屋からドアが開かれ結構高いテンションのもう一人女性が入って来た。
「お疲れ~いや~転生担当部は大変だね~~私は人事部でよかったわww」
「死ね。」
「つれないな~さっさと飲みに行こう!」
「いや、私家に帰って寝る。」
「そう言わないで行こうよ~~~~うん?これは今日の最後の転生者かな?どれどれ~」
彼女にねだっていたもう一人の女性は、ただいま転生した高木の書類を手に取った。書類を眺めていた女性は眉根にしわをよせた。
「え、何でプラスポイントの人をこの世界に転生させたの?」
「いや、女性が圧倒的に多い世界なら男として幸せだろう?」
「もちろん、この高木さんという人が住んでた世界だったらそうだけど、ここは男性少数の女性優位の世界じゃん。この世界の男は奴隷か、籠の鳥扱いかの人生を送っているけど。いや~懐かしいな!私も転生担当部にいた時、マイナスポイントのやつら、この世界にたくさん送ってたよな。性犯罪者はここに着くと最初はめっちゃ喜ぶけど、半年以内に自殺するか、廃人になるよ。正に易地思之の処罰と言えるかな。」
「え?」
「え?じゃないよ。」
「ちょ、ちょ、ちょ、ちょ、ちょっと待って、てことは私は…….」
「うん。善人を地獄に送ってしまったことになるね。」
「え、え、え?じゃ、私……」
「懲戒…..かな?」
「くそううううううう!!!!!!!!!!!!」
「私ちょっとトイレ…」
暴れ始めている彼女を後ろした女性は避難するかのようにその部屋から逃げた。
(※本作品は日本語の非母語話者が作成しました。不自然な文法や表現がありますので、ご指摘していただければ誠にありがたいと思います。)
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