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「ごめんね、正市、本当にごめん。」
俺が聞いた父の最後の言葉だった。父が交通事故で障がいを負う前までは何の問題もない、平和な家庭だった。俺が高校3年の頃、父は事故に遭い、仕事を辞めざるを得なかった。それから様態は急変し、母はいつから会ったのかも知らない浮気相手と逃げ出した。父に渡されたのは離婚届の書類のみ、胸の病まで患ってしまった父はそれから何一言も言えなくなった。ずっと沈黙してた父は、俺が初めての休暇を終え、部隊に戻ろうとした朝にそう語った。
「父さんは何も悪くねえだろう!何で自分を責めてんだよう!!!」
その言葉が自分を責める意味だと勘違いした俺は、怒鳴りながらドアを強く閉め、家から立ち去った。それが父の最後の姿だった。部隊に戻って翌日の朝、父が屋上から飛び降りたという連絡を受け、病院に駆け付けたがもう遅かった。俺に残されたのは父の家と父との思い出だけだった。その家すら奪いたかった母とも呼びたくない女性からしつこいほど連絡が来たが、当然全部無視した。
「どこから間違ったんだろう。」
葬式を終え、家に戻った俺は窓から照らされる夕日の光を浴びながらこう口ずさんだ。父の事故から?母の浮気から?今考えても何の意味もねえだろう。
「父に会いたいな……..」
「あの、起きてください。こんな所で寝ちゃダメですよ。」
「……….」
「あ~~~の~~~お~~~」
「ふえっ?!え???」
「やっと起きたか。」
ある女性の声を聴いて俺は授業中に居眠りしてた学生のように変な声を出しながら目を覚ました。
「え???え?????」
周りを見てみると、公園の風景と現代の都市のありふれた街並みだった。
「よかった~~~~~やっぱ夢だったか。」
「あの…..」
「よし!帰ろうっか!」
「ちょっと、ストップ!まだ、確認したいことがありますので。」
ようやく俺の目に二人の女性が入った。黒い制服を着ていた。一応、日本の警察の制服ではなかった。俺に今話掛けている女性の胸倉には「菱形、◇」の形をしている小さい図形が二つ、後ろの女性には一つだけついていた。階級かな?一応、この状況を抜け出すため、俺はやっと彼女の声掛けに応じた。
「えええっと……これ一応職質ですよね。拒否していいんですか?公園で寝てることが犯罪にはならないでしょう?まだ日も暮れてないし。」
「平民だよね、こいつ」
「間違いないっすね。基本的な法律も知らないし。」
俺の言葉を聞いた途端、◇◇の女性が◇の女性に聞いた。え、平民?どういう?21世紀の民主主義社会で平民って言語道断じゃないか!隣国の寒い国ではありかも知れないけど。それと、彼女たちは腕に「憲兵」って書かれている腕章をしていた。
「うわっ…..戦前の日本でもあるまいし。お二人さんはコスプレでもしてるんですか?」
「は?意味分かんないことはいいから、身分証出せ。」
「俺ちょっと忙しんで、今は付き合えないんです。では、またどっかで…..」
「ふっ!」
「けへっ!」
◇◇の女性は何の予告もなく、俺の腹を蹴った。激痛が俺を襲って来た。頭が真っ白になり、俺は呻いた。俺は腹を両手で抱えることしかできなかった。
「よく分からないなら教えてやるよ、平民。」
◇◇の女性は俺の胸倉を掴み、片手でゆっくり俺を持ち上げた。
「憲兵隊の治安維持活動に関する法律によると、士官階級以上の現職軍人、上級貴族の帝国人民を除くと、憲兵隊の検問を拒否することはできない。分かった?」
「憲…..兵?帝…国?」
「返事は?」
「わ…..分かりました!」
「ならいい。」
◇◇の女性は胸倉を掴んでた手をようやく放した。倒れそうな俺の体を後ろから◇の女性が支えた。
「君が分かってちょうだいね。うちの先輩は結構乱暴でさ~ところで、君、顔は本当にカッコいいね~私のタイプかも!どうする?私と結婚しない?」
いつもだったら嬉しい冗談だったが、今はそんな暇はなかった。
「いたずらはやめろ。とにかく、もう一発殴られたくないなら早く身分証出せ。」
「ケホ、ケホ….はい!」
俺は震えている手でポケットから財布を出して、身分証を渡した。
「…….」
10秒間身分証を眺めていた彼女はため息をしながら俺に衝撃的な話をした。
「これ、帝国の身分証じゃないよな。文字は読めるけど、身分も書かれてないし。」
「さっきから帝国って….それって一体どういう国ですか?ここは日本でしょう?」
「にほん?それって何だ。そんな国はねえよ。あんまり世間知らずとは言え、これはひどいな。ここは帝国だよ、帝国!大令華帝国。」
「え?大令華帝国?それって….」
この瞬間、俺は夢の内容が頭で浮かんで来た。俺が死んで、他の世界に転生させるとかの変な内容の夢が。しかし、その夢のことを現実だと受け止める人はいないはず、俺もそうだ。しかし、ここが俺がずっと暮らして来た日本で、さっきの夢が現実じゃないとしたら、俺の目の前にいる女二人は精神的に異常があるコスプレイヤーたちだという話になる。しかし、
「痛い……」
彼女たちの言動や、腰につけている拳銃をみると、あまりにもこれが演技などには見えない。自衛隊で拳銃を扱ったことはないが、俺の直観によるとあれは正真正銘本当の銃だ。そして、俺を蹴って、片手で持ち上げた彼女の力からみると、彼女が普通の人じゃないという事実が分かった。
「お前の保護者は今どこだ。」
「保護者って……」
「これも分かんないのか?男は外出する時、一人で出かけることは違法だ。必ず女の保護者と同行しなければならない。てことは……」
「男性維持管理法違反ですね~」
後ろから◇の女性がそう言った。
「手錠かけるから大人しくしてね~」
「いや….ちょっ…….」
俺が訳も分からない罪で逮捕されようとしたその瞬間、耳が痛くなるような大きな音が聞こえてきた。これはサイレンの音だった。俺は慌てながら、彼女たちの様子を見てみると、彼女たちは俺以上に顔が真っ青になっていた。
「せ…..先輩!これって何ですか?!」
「私もよく分からない、一体…..」
彼女の話を切って、彼女のチョッキに付けられている無線機から誰が聞いても慌てている声が聞こえてきた。
「*現在パトロール任務中の全隊員に伝達する!連邦の武力挑発によって全国に戒厳令が発せられた!全隊員は直ちに所属憲兵隊本部に復帰せよ!繰り返して伝達する!現在…..*」
「戒厳令?!まじかよ!くそが!!!明日から休暇なのに!!!もう…….おい!早く行こう!」
無線機の内容を聞いた◇◇の女性がどっかに走り出した。それを見た◇の女性が迷いながら◇◇の女性に向けて叫んだ。
「え?!先輩!!じゃ、この男の子はどうしますか?」
「ほって置け!緊急事態だから仕方ねえだろう!」
「わ…分かりました!!!」
◇◇の女性は◇の女性に付いて、この公園から去って行った。
「…..これは運がよかったとしか言えないな。戒厳令というやつが何かは分かんないけど。」
今の戒厳令というやつがなかったら、どうすることもできずに身を拘束される所だった。なんという公権力だろう。おれが何らかの犯罪を起こしてもないのに、逮捕という単語を説き及んだ憲兵というやつらは一体なんだろう。
「あ!それより!」
俺も一応走り出した。今、俺が一番したいことはここが日本か、それとも本当に夢の内容が現実だったのかを確かめることだ。公園を抜け出すと住宅街が見えてきた。俺は道に沿って走り続けた。街並みや道路標識を見てみると、誰がどう見てもここは俺が暮らしてきた日本だった。
「転生って、ありえないだろう!」
俺は一人で叫んだ。5分間全力で走り続けると、息が荒くなってきた。幸いかどうか分からないが、サイレンの音も止んでしまった。俺は走りながら多くの道路標識を一つ一つ確認した。しかし、残念ながら俺が勤務してた部隊が位置している地域、北海道の地名は見つけられなかった。少し安心していた俺の心は徐々に不安に落ち始めた。
「は…..は…..まさか…..違う…..」
一応止まって荒くなった息を落ち着かせた。止まったまま、もう一度周囲を見回した。すると、学校の制服を着ている大勢の学生たちが道を歩いていた。学生がいるなら、周辺に学校があると思い、道の向こうにとある学校を見つけることができた。学校の名前を調べるために、学生さんに話をかけてみようと思った。しかし、理由は分からいけど、俺は周りの人々の視線をたくさん集めていた。
「男の子?一人かな。一人で出かけることって禁止じゃないの?」
「男性維持なんちゃらの法律だったけ、それよりあの子めっちゃ可愛いんですけど。」
「可愛いなら話かけてみ?」
「お前がやって」
「できるわけねえだろうwww」
「あの……すみません。」
「え?」
俺を話題にしている女子学生の二人組に声をかけた。俺からは声をかけられるとは想像もできなかったような反応で、俺に声をかけられた学生の顔は赤くなった。
「は….はい!!」
「ここの学校の名前って何ですか?」
「中京下級貴族高校です!」
聞いたことのない学校だった。
「えええっと…..ここって北海道ですよね?」
「え、ほっかい?ほかい?すみません、もう一回…..」
「ほっかいどう、ですよね?」
「聞いたことがないですね。お前は分かる?」
「知らんな。」
彼女は隣にも聞いてみたが、二人とも分からない様子だった。
「ええっと….それより番号とかは知りたくないんですかね….えへへ…え?行っちゃった!」
「お前に興味があって話しかけたはずねえだろうwwwwwwwハハハハハ!」
「殺してやる。」
俺はランダムで10回ほど聞いてみたが、答えは全部
「分かんないっすね~」
「そこはどこですか?」
「帝国にはない地域だと思います。」
「北海?北の方かな?」
同じだった。日本人が北海道という地名を分からないはずはない。その事実を考えると、ここは違う世界だという推測がどんどん確実になってきた。俺の背中は冷や汗で濡れ始めた。
「え?え?そんなはずねえだろう。転生って….いやいやいや冗談だろう?そんなはずない……え?」
ずっと独り言を言いながらこの信じられない状況を否定していた俺は偶然、目の前にある喫茶店の窓ガラスに映っている自分の姿をみかけた。
「誰?これって…..俺?」
ガラスに映っている姿は30年間見てきた自分様子じゃなかった。はっきりしている目鼻立ち、ほっそりした顎のライン、奥二重、俳優かのようなイケメンの瞳が俺を眺めていた。目の前の人は確かに俺じゃなかった。
「ふーっ」
俺は両手で口を塞いで、ようやく吐き気を抑えた。脳が現実を受け止められないせいだろう。
「何で….何で…….」
一方、喫茶店の中では俺がグラスを眺めたせいで、ある3人の女子学生たちの会話が始まっていた。
「①あの子、めっちゃエロいな~~え??今私を見つめてる!!」
「②違う、私だろう。」
「③勘違いすんな、このブス処女ども。絶対私。」
「②へええ~その顔で言えるんかい?」
「③おめえも処女だろうが。」
「①二人ちょっと黙って。あの子、今泣きそうな顔してる!」
「②泣きそうな顔もエロい。」
「③変態かよ。」
「②じゃ、お前はあの子がやろうって言ったら、やらないの?」
「③いや、絶対やるでしょう。」
「①黙れってば。何か言ってるけど聞こえないな。」
「くそうがあああああああ!!!!!!!!!!!!!!!俺の退職金!!!!!まだ一文も使ってないのにいいいいいいいいいいいいいい!!!くそ女が何で勝手に転生させてんのよ!9年間俺がどれだけ苦労をしたか分かってるのか、俺の退職金返せ!いや、少なくとも退職金もこの世界に送ってくれよ!!!畜生が!」
「①うわっ!理由は分かんないけどめっちゃ発狂してる。」
「②ブス女と強制婚約が進んじゃったりとかじゃないのかな。例えば、私の目の前にいる女とか。」
「③お前、さっきから何で喧嘩売ってんの?殺すぞ。」
「②やれるもんならやってみwwwww」
「③くそが。」
「①発狂してる顔もエロいなあ~」
「③こいつも普通じゃないよな。」
「②それは同感。」
そうして、10分くらい経ち、この理不尽な状況に対する俺の気持ちはある程度収まってきた。
「はあああ~~。どうしよう、本当に。帝国なんちゃらとか言ってたけどめっちゃ危ない世界ぽいけど。帰れる方法とかないのかなあああ~~~~~。はああああ、死にてえ……これからどうすれば…」
一人でこれからどうすればいいか悩んでいる内に、今回は俺が話をかけられた。制服を着ている5人組の女子学生だった。
「①ねええ、そこのお兄さん?大丈夫?」
「大丈夫なわけねえだろう~」
俺は自暴自棄する思いで、俯いているまま、誰かも分からない女の子の質問に答えた。
「①そう?機嫌悪かったら、私たちと遊びに行かない?お兄さん、めっちゃ私のタイプなんだけど。」
「嘘だろう?俺の人生30年間、逆ナンとかされたこと一回もないけど、あ、今は顔変わってたっけ。」
「②え、何を言ってるのかよく分かんないな。30代って、私たちと同年代に見えるけど。」
「③ねね、さっき何だった?何で人にそんな話掛けてたん?」
「情報収集というか……てか、お前ら誰?」
俺の頭は再び冷静になった。ここが日本ではない、とある異世界だということを事実だと50%以上認めることにした俺としては、全てを警戒するしかない。実際、さっきも男性なんちゃらの法律で、転生したばかりなのに逮捕されてしまうところだった。一応、この状況を分析した所、今俺は軟派されているらしい。日本でこんなことをされたら両手を上げて大歓迎したい(されることはないけど)所だが、慎重に考えよう。ところで、さっきからおかしい。いくら男性側がイケメンだとしても、女性側から誘ってくることは少数だろう?彼女たちと俺の性別が反対だったとしたら、十分あり得る状況であろう。つまり、立場が逆転している。
「①ねえ~どうする?私たちが何か奢ってあげるから、ね?」
「ま、まあ….気持ちは嬉しいけど、俺この地域に来たばかりでさ?ちょっと忙しくて……じゃ…」
俯いていた顔を上げ、席を立つために体を起こした。すると、5人組の学生たちはいきなり顔が一変し、俺を行かせないと言わんばかりに俺を囲んだ。
「き….君たち背高いね。」
皆、俺より少なくとも頭一個分は高かった。俺も背が低い方ではないと思うけど、彼女たちはバレーボールかバスケの選手のように背が高かった。
「①お前、平民だよな。」
またそのセリフかよ!
「そ…そうじゃないとしたら?!」
「①そうなん?じゃ、何級?」
「え??あ…..えっと…その……」
「④へえええ~今、貴族詐称したの?これはいけないな~憲兵隊に通報しないと~」
「え?!それはちょっと困るんですけど!」
「①え~じゃ、一緒に行こう?」
「⑤まじで平民だったの?めっちゃ楽じゃん~」
「え….その…..」
「①はい~決定~」
俺の左右から二人が腕を組んだ。できるだけ足掻いてみたが、両方の女の子たちには何の影響も与えられなかった。俺が感じたのは圧倒的な腕力の差、まるで小学生と成人男性のような差だった。俺は人間の原初的な恐怖感を感じた。頭は真っ白、足は震え始めた。俺が自衛隊で初めての射撃訓練を迎えた時に似ている気分だった。
「か…..勝手にこ….断ったことは謝りますから!ゆ….許していただけますか……」
「③めっちゃ震えてる~可愛い~~~」
「①私たちを悪者のように言わないでよ~お前は今、好きだから、自分の意思で付いて来てるだろう?」
「…………」
「①返事は?」
「はい……」
彼女の表情はまるで、獲物を目の前にしている虎のようだった。俺が絶体絶命の危機を迎えようとしているその瞬間。
「おい、そこストップ。」
救世主が現れた。
「戒厳令が出されている厳重な状況で、いい度胸だね。」
「①は?てめえはなん….えっ。」
「⑤やば….風紀委員かよ!」
「④くそ!」
「③あ~~もう~~寸前だっとのに~」
「②名前特定されたら危ないぞ!お前も早く逃げろ!」
あっという間に4人が素早く逃げ出した。
「お前は仲間たちに付いて行かなくていいの?」
「①くそが、いつも邪魔しやがって……」
「10秒数えても残ってたら、お前の顔、覚えるかも~10~~~、9….」
「①わ…分かったよ!くそが!!」
最後まで残っていたやつも漫画の悪党が言うようなセリフを残して、立ち去った。俺はべたりと足の力が抜いてしまい、その場に座り込んでてしまった。
「た…..助かった。」
目がぼんやりとしたまま唖然としている俺に、目の前の女の子が手を差し伸べた。
「大丈夫ですか?」
黒くて長い髪、スタイル抜群の女の子だった。助けてくれた人には非常に失礼だけど、胸も結構でかかった。
「あ…..ありがとうございます。」
彼女の手を借りて、俺は立ち上がった。さっきのちんぴらたちよりは低いけど、背も俺より高かった。
「どういたしまして♬男性を守るのは女性の義務ですから。」
「逆じゃないんですか?」
「はい?」
「何でもないです……」
元の世界の常識はここでは通用しないということを、一応受け止めることにした。
「それで?お兄さんの保護者は?」
「一応……いないっすね。」
「へええ!男の子一人で外出しちゃ危ないですよ!さっきのやからのような連中と絡むかも知れないし。じゃ、家族とか、知り合いは?」
「詳しい事情は言えないんですけど…….いないんです。」
言った所で、信じてもらえるはずもなかった。転生しましたとか言っても精神的に問題がある人だと思い込むだろう。
「へえええ…..じゃ、これから一人どうするつもりですか?知り合いもいない、お金もないのに。」
「よく分からないですね…..俺もどうしたらいいか…..」
ぐーーーー
俺のお腹から原因が容易に把握できる音が聞こえてきた。
「………..」
「………..」
両方から気まずい雰囲気が漂った。恥ずかしい…………..
「私、まだ夜ご飯食べてないから食べに行きたいです~~一緒にどうですか?」
「………….お願いします。」
俺がこの世界で初めて経験する人の親切だった。
「美味しいですか?」
「これ…..完全に日本と同じじゃん…….」
「はい?」
「何でもないです……」
場所を飲食店に移した。「マオダンラオ」というハンバーガー屋さんに来たけど、メニュー構成や味はほぼ日本のマックと似ていた。まさか、食文化すら日本と似ているとは…..
「へえ~食うの本当に早いですね。私はまだなんですけど….(もぐもぐ)」
「結構お腹すいてて…..すみません。」
「大丈夫です!」
この世界に着いた時は昼間だったけど、今はいつの間にか日が暮れていた。太陽と月も俺が住んでた世界と同じく一つずつしかなかった。現代式の建物や車、携帯、テレビ、など、誰が見てもここは現代日本だった。しかし、それ以外は……
「あの…..」
「はい!お願いします!!」
「はい?」
彼女は待っていたかように、はにかんだ顔で俺に携帯を突き出した。
「連絡先交換の出番じゃないんですか?」
「俺、携帯持ってないです……..」
「え、そうなんですか……..」
「何か…..悪いっすね…….」
「いいえ…..大丈夫です……..」
彼女はガッカリした顔で、俯いてしまった。まあ、実は持ってるけど元の世界の携帯で、無用だった。さっき、店に来る途中試してみたけど、圏外と表示されているだけだった。
「えええっと…..ちょっと変な質問してもいいですか?」
「奨学金とか!仕送りとかめっちゃ貰ってるんで、私、結構金持ちです!!!」
「いやいやいやいや。そうじゃなくて……」
何でこの女はいきなり自分のスペックを自慢してるんだろう。
「さっきも言った通り、事情は言えないんだけど……俺は世の中の常識のことが一切分かりません。それで、常識に関する質問に答えて貰えますか?」
「そうなんですか…..一応分かりました。どうぞ!」
心配をしているような表情を見せた彼女は一瞬、クイズ大会に挑む参加者のように、熱意が溢れている表情に変わった。
「え、始める前に、お互いの名前も知ってないですね。」
「ええええ!」
彼女は財布をどっかに落としてしまった人のように反応した。名前を言う前に俺はちょっと考えた。名前だけは、日本人の名前と違うかも知れないと、考えた俺は
「ちょっと変な名前かも知れないんですけど……タ、カ、キ、ま、さ、イ、チです。」
外国人に名前を話すように、一文字ずつゆっくり話した。
「全然変じゃないですよ!」
「そ….そうですか?じゃ、そっちは…..」
「中京下級貴族高校で風紀委員を担っている黒雪恵と申します!」
俺を絶体絶命の危機から救ってくれた救世主の名前は、極普通の日本人の名前だった。あまりにも日本と似ているこの世界は、一体どこなんだろうか。
(※本作品は日本語の非母語話者が作成しました。不自然な文法や表現がありますので、ご指摘していただければ誠にありがたいと思います。)