TellerNovel

テラーノベル

アプリでサクサク楽しめる

テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

『月が欠けても、君がいてくれたら』

一覧ページ

「『月が欠けても、君がいてくれたら』」のメインビジュアル

『月が欠けても、君がいてくれたら』

1 - 月の光をいつになったら好きになれるんだろう…

♥

517

2025年06月21日

シェアするシェアする
報告する







ほんとは、コンテストに出そうと思ったけど、だめ作になったんで、コンテストには出しません!





奇病パロ(月命病)




白×黒




白が多分女


 








『月が欠けても、君がいてくれたら』


初兎(しょう)は、月を嫌っていた。 満月の光を浴びるたび、命が削られていく気がした。実際、それは“気のせい”ではなかった。


《月命病》——月の満ち欠けと連動して身体機能が低下し、満月の夜に発作と共に命を落とす奇病。 日本でも症例が十指に満たないほどしか存在せず、完治例は一つもない。


「なんで、うちなん……」


彼女が病を知ったのは十四歳の夜だった。修学旅行の夜、京都の宿で倒れた。原因不明の高熱と意識障害。医者は首をかしげながら口をつぐんだ。結局、診断が下ったのは半年後だった。


それから五年。治療らしい治療はなかった。薬も効かない。希望もない。


十九歳になった今、彼女は病院の個室で、静かに余命を数えていた。


「もう、何度目の満月やろ……」


カーテン越しに見える夜空。あの月が、また彼女を削っていく。呼吸が浅くなる。指先が冷える。心臓が、軋むように痛む。


——その夜。


「失礼します。初兎さん、ですね」


ドアをノックして入ってきたのは、若い医師だった。白衣のポケットにペンが数本、胸元には新人研修バッジが光っている。


「俺、今日から配属された悠佑(ゆうすけ)言います。担当にしてもらいました」


「……ふうん。また新しい先生か。どーせすぐ辞めるやろ」


「せやろか。でも、俺はもう決めてる。あんたを助けるって」


「……は?」


「《月命病》、治す方法。俺、見つける」


初兎は笑った。


「なに言うてんの、あんた。ほんまアホやな。そんな夢みたいなこと……」


「夢やあらへん。俺の、信念や」


その目に、嘘はなかった。迷いもなかった。


それから、彼の治療が始まった。


——


実験的治療。 脳内の視交叉上核への刺激。 月齢に合わせた内分泌の周期制御。 電磁波干渉。


どれも前例がなかった。 危険性もあった。 でも、悠佑は言った。


「怖がらんでええ。俺が、全部受け止めるから」


「……ずるいなあ。そんなこと言われたら、うち……信じたくなるやん」


「信じてええよ。命、かけるから」


毎晩、彼は病室に来た。ノートを開き、データを解析し、ういの手を握って話をした。


ういはその時間が、次第に楽しみになっていた。 初めて、月の夜が怖くなかった。


——


春。満月の夜。


最大の発作が訪れた。


「しょうっ! 意識戻して! 脈が落ちてる!」


「……い、たい……さむ……い……」


手が氷のように冷たい。 眼が、虚空を見ていた。


「もう、間に合わんかもしれへん。せやけど——」


悠佑は決断した。


「緊急手術や。自律中枢にデバイスを埋め込む。……俺がやる!」


周囲のスタッフがざわめいた。


「無茶や! そんなの、成功例ない!」


「……せやから、俺が一人目になる」


——そして手術が始まった。


24時間。


脳への微細手術。 神経伝達遮断。 電磁バイオ波制御デバイスの埋め込み。


何度もモニターがアラートを鳴らした。 心拍停止3回。


「戻ってこい……しょう、お願いや……!」


——午前5時。


「……う、……ぅ……」


「しょう……!? 目、開けて……っ!」


「……あんたの、声……でかいわぁ……」


泣き笑いする彼女に、悠佑は号泣した。


「……生きてる、生きてるやんな……!」


「……さむいから、はよ布団かけてや……」


彼女の手は、もう冷たくなかった。


——


半年後。


初兎は回復し、少しずつ日常を取り戻していた。


髪を切った。ショートになった。また、大学に通うようになった。


悠佑は病院に残り、研究を続けていた。

《月命病治療成功》の症例は、今や全国の医療雑誌で取り上げられ、彼の名前は一気に知られるようになった。


「しょう、今夜……月、見に行かへん?」


「ええよ。今度は、悠くんと一緒なら……きっと、綺麗に見える思う」


夜の公園。風がやさしく吹く。二人は並んで歩いた。

見上げた夜空に、まんまるの月が、穏やかに光っていた。


「なあ、しょう。来年も、再来年も……その先もずっと、一緒に月を見ようや」


「……しゃあないなあ。悠くんが隣におるなら、月も悪くないわ」


二人に沈黙が流れた。


そして、、、


「…悠くん、ありがとな」


「……俺の方こそ。しょうが、生きてくれて、ほんまに……」


「なあ。これからも、ずっと隣におってくれる?」


「うん。絶対、どこにもいかん」


空にはまんまるの月。 けれど、もはやそれは、命を奪うものではなかった。 二人を照らす、希望の光になっていた。




この作品はいかがでしたか?

517

コメント

4

ユーザー

やばああああいすきいいいいいい!!!!!! え、ガチですき。やばい。しぬ…((

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚