ざわざわとうるさい小さな園庭 。
俺は 、 養護施設の玄関の階段に腰掛けて
遊んでる奴らをぼーっと眺めていた 。
楽しそうにはしゃぐ同年代の子供たちと 、いっつもひとりで黙っている俺 。
施設の先生はそんな俺をどうにか元気づけようとしているがそんなものかえって鬱陶しい 。
「 鬼ごっこする人このゆびとーっまっれ ! 」
あぁ 、 今日もだ 。
おやつの後のちょっとした自由時間 。
赤ちゃんから幼稚園児の子供たちが職員さんに早めのお風呂に入れてもらう時間だから
小学生から高校生みんなが大はしゃぎで鬼ごっこをする 。
他の自由遊びの時間で本気で走ったら危ないもんね 。
と 、 言うわけで最年長の『桃木らん』主催の鬼ごっこ大会が今日も始まるわけだ 。
しかし 、 問題なのはここからで 、
「 あ 、 なつ 〜 っ ! 」
「 … げっ 、」
「 ねぇねぇ 、 なっちゃんもやろ 〜 よ !!!」
「 ぶん 〃」
慌てて首を横にふる 。
こいつは強敵だ 。
俺が毎日どれだけ必死の思いで鬼ごっこを回避してると思ってるんだ 。
「 え 〜 ? やんないの ? 」
「 やんない 」
「 今日はすちもやるのに ? 」
「 それは珍しい … けど 、 」
「 赤ちゃんの世話から開放されたすちをいたわるつもりで !! 」
「 それはお前がやりたいだけだろ … 」
最悪だ 。
こうなると彼は梃子でも動かない 。
もう高校生だろ 。
「 らんく 〜 ん っ ! まだ 〜 ? 」
らんの背中越しに可愛らしい声が響く 。
「 あ 、 こさめ ! 」
中学一年生にも関わらず 、 小さな背丈に高い声 。
少しむっとしたように近づいて来たのは『 雨乃こさめ 』
こさめが来てくれたならチャンスだ 。
「 早く鬼ごっこしよ ? 」
「 わ 、 なにそれかわいい 」
「 あ 、 そういうの大丈夫なんで 」
「 何故 ?? 」
らんはこさめが大好きだから 。
とっととどこかへ行ってくれるだろう 。
「 全く 、 自分から誘っておいて … 」
こさめはやれやれと首を振ると突然ハッとしたように俺の顔を見た 。
「 あ 、 ! なつくんも鬼ごっこしよ !!! 」
「 … へ ? 」
いや 、 おまえもかい 。
「 … え 、 いや 、 しないけど 」
「 え っ !?!?! 」
『 そんな人類いるの ? 』って顔されても …
「 ね 〜 、 お願いおねがいおねがい !!! 」
「 いや 、 ちょ … 」
「 ね 、 こさめもしてほしいよね 〜 ? 」
「 うん ! 」
ひ 、 卑怯だ …
「 だって 、 なっちゃんこの施設来てからまともに遊んでないでしょ ? 」
それは関係ない
「 なっちゃんと遊びたいの !どうしても 。」
真っ直ぐな瞳に見つめられたじろぐ 。
「 … 今日 、だけ 、 な 」
負けた 。
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「 … はぁ 、 っ はぁ " 」
つ 、疲れた … 。
「 はい 、 お水 」
「 … 、 あり 、 がと 」
顔をそっとあげると『 緑野 すち 』がお風呂上がりの小さな子を抱っこして水を渡してきた 。
その後ろにはひょこっと『 黄瀬みこと 』が顔を覗かせている 。
すちとみことは俺の隣に腰かけた 。
「 みてみてぇ 〜 ! しゅご 〜 い !」
すちの膝の上に座った少女は目を輝かせて鬼ごっこの様子を指さした 。
未だに走っているのは鬼役のらんに 、俺と同い年の『紫乃 いるま 』だった 。
「 もう2人しか残ってないんだ 」
「 そうそう ! いっつもあの二人が最後まで走ってるんよな 〜 」
みことが不思議そうに言った 。
「 笑ってる … 」
「 らんらんはみんなのことが大好きだからねぇ 〜 」
「 誰も1人にしないっていつも言ってるもんなぁ 」
2人はそう優しく笑った 。
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自由時間も終わり 、 施設内に帰ることになった 。
「 あ 、 いたいた 、 なつ 」
振り返るとそこにはいるまがたっていて 、 俺に何かを伝えようとしているようだった 。
「 なに ? 」
「 今日 、 楽しかったか ? 」
予想外の質問に戸惑う 。
無理やり鬼ごっこさせられて 、 すちやみことと話して 。
楽しかったのだろうか 。
でも 、
「 わかんない 、 普通 ? 」
「そっか 、 なら良かったわ笑」
悪くはなかったと思う 。
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「 ねぇ 、 なつ 」
次の日 、 またらんに話しかけられた 。
また鬼ごっこに誘われるのかと少しだけ身構える 。
「 あのね 、 俺昨日なつと鬼ごっこできて嬉しかった 」
「 へ … 、?」
「 俺ね 、 なつが寂しいのやだな 」
「 なつが悲しむのもやだし 、 泣くのもやだし 、 傷つくのもやだ 」
「 もちろん 、 いるまやすちや 、 みこと 、 こさめ 、 みーんな幸せでいて欲しい 」
らんはとつぜん俺の頭を撫でた 。
「 よし ! じゃあ鬼ごっこしよう !! 」
「 うん … 、 」
『 らんらんはみんなのことが大好きだからねぇ 』
すちが言っていたことを思い出す 。
胸がぎゅっと苦しくなってあったかくって 、 ぼろぼろと涙を零した 。
本当は寂しかったし 、ひとりが好きなわけじゃない 。
だけど 、 上手く馴染めなくて 。
暖かい声をかけられてきっと嬉しかったんだ 。
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なつは 、 そう俺の隣で長々と話した 。
「 俺は 、 ただ みんなのことが好きなだけだけど 」
「 そういう話をしてるんじゃねぇよ 」
なつは泣いてる俺の隣に座ってぼそぼそと言った 。
「 お前が 泣いてるのがらしくないからやだ ! 」
「 傷つくのも 、 悲しむのもやだ ! 」
「 俺もお前に負けないくらいみんなのことが好きだから 、 」
なつはつられて泣きそうなのを我慢して笑う 。
「 最後 、 鬼ごっこしよう 」
今日は施設を退所する日 。
やっぱり涙は堪えきれなかった 。
みんなと離れるなが寂しかった 。
本当に 、 みんなの成長が大好きだった 。
最後の鬼ごっこ 。
いつも通り最後まで残るとしましょうか 。
「 よし 、 」
大きく息を吸う 。
「 鬼ごっこする人このゆびとーっまっれ !」
涙をふいて
思いっきり笑ってやった 。
コメント
7件
なんだよこれれれれ、最高なんだけどおおおおお😭😭😭😭、 言葉の選び方とか年齢層の設定とかもう神がかりすぎて… さいこうじゃん、
うわぁステキ✨️✨️ 言葉選びとか話の運び方とかもう色々と綺麗すぎます…!! すべて回想だったとは… ❤️くんの退所じゃなくて🩷くんの退所をラストに持ってくるの天才すぎます😭😭 コンテスト参加ありがとうございました☺️
めっちゃいい話......... どうしたらそんないい話思いつくんだ.... 凄すぎる......