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『×月×日 私は幸運な人間ではない。幸運な人間がどのような人物かというのはわからないが、私の現状を表す言葉としては相応しいだろう。』
『○月□日 私のような人間がなぜこのような状況に陥ったのか、それを詳細に記すことを望まれることは理解しているが、それはあまり愉快なこととは言えない。少なくとも、私がこの日記を書いている時点では、そのことだけを記すと約束しよう』『ああ、何ということだろう! 私はなんということをしてしまったのだ!』
「またこれだよ」
少年は小さく呟き、モニターから目を離してベッドへ身体を投げ出した。画面の中では白衣を着た男が涙を流していた。少年はそれを見てうんざりした気分になった。
『こんなことが許されるはずがない! 許されるわけがない! いや、許されてたまるものか!!』
モニターの中で男はわめき散らしていた。
この部屋の中には今、彼しかいない。だからこの声を聞いている人間は、ここにはいないはずだった。だがしかしそれでもなお、彼はどこかで誰かに見られているような感覚を覚えることがあった。まるで監視カメラがあるかのように。あるいは、そう、「あの人」がいるように感じられた。
『我々は、私たちは、一体なんなのだ?』
それは唐突な問いだった。しかし私はそれを理解できたし、私の中で答えは既に浮かんでいた。だから私がそれに答えることに迷いはなかった。
「君は、君のやりたいことをやるといいよ」
彼は一瞬だけ目を見開き驚いたような表情を浮かべたけれど、すぐにいつものように笑顔になってこう言った。
『君がそう言うなら、僕は僕の好きなようにさせてもらうよ』
それから数年して、彼は私と決別するようにいなくなってしまった。それ以来彼がどうなったのかを知ることはない。でも、きっとどこかで自由にやっているんだろうと思う。だって私の望み通りの人生を歩んでいるに違いない