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小屋の表に出たレイブは周囲を見回した後、小さく呟きをもらす。
「ふむ、まずは定石通り臭いで追ってみるとするか、えっと鼻、嗅覚に集中して、グルグルグル」
なるほど、体内の生命力である魔力を一定部分に集中させて高速度で循環させる事で機能を高めているようだ。
ズィナミやバストロ始め、学院の生徒や他の魔術師が習得する鋼体術、それの部分版、精緻なコントロールを要する代わりにコストパフォーマンス的に考えれば、非常に便利な上位互換の技術と言えるだろう。
グルグル言いながら高められた嗅覚に集中していたレイブは深い溜息を吐く。
「グルグル言っていたら腹が空いて来ちまった…… 考えたら昨日の昼から何も食べて無いしな…… 集中できないから先に飯にするか? 何、まだそう遠くへは行っていない筈だ、良し、飯だ飯♪」
だいぶおかしくなっているレイブは小屋の隣に作られた魔物小屋、レイブ達にとっての生簀(いけす)へと鼻歌混じりで入っていく。
そこに居た人物がレイブの姿に気が付いて笑顔を向けて言う、ラマスだ。
「お帰りなさいダーリン、ランディに聞いたけど学院長に呼び出されちゃったんでしょ? お話し大丈夫だったぁ?」
「お? おお、学院長の話だったら何でも無かったよ、午後選抜試験の模擬戦を頼まれただけだ…… え、えっとぉ、こんな所で何をしているんだ? これで隠れたつもりだとか? とても逃げ果せる筈も無いだろうに?」
「ぷっ何それ? 心配させちゃったけど今朝は随分楽になってね、でもみんなが念の為休めって言って聞かなかったのよ~、やる事も無いから退屈で~! それで思い出したの、ダーリン昨日から何も食べて無いんじゃないかなって、んでお弁当持って行こうと思ってコカトリスを搾っていたんだけどねー、食べるでしょダーリン?」
七年以上、足掛け八年もの間、寝起きを共にして来たラマスの純真無垢(?)で天真爛漫(?)な笑顔が、レイブを妄想という闇から救い出した。
レイブは激しく顔を左右に振って周囲を見回した後、改めてラマスの瞳を見つめて口にする。
「こ、ここは魔物小屋? ラマス、一体こんな所で何を…… はっ! 体調は良いのか? 寝ていなければいけないんじゃないか?」
「え?」
今言ったばかりの事を再び聞き返されたラマスであったが、そこはそれ、慣れたものと言った感じで返す。
「だからね、随分楽になったのよ♪ うふふ」
「そ、そうか…… 良かったよ」
「はい、ご飯! お腹空いてるんでしょ、ダーリン」
「お、おうっ、頂きます」(パンッ!)
ラマスから受け取ったモンスター汁(コカトリス味)の手桶を受け取ったレイブは、躊躇の欠片(かけら)も見せずにゴクゴクと喉を鳴らして飲み干すのであった。
一瞬だけ眉間にしわを寄せて無言になった後、改めてラマスに視線を戻して笑顔で告げる。
「ご馳走様、人心地ついたよ♪ コカトリスだったんだな、美味しかったよ」
ラマスは再び吹き出しそうになるのを堪えているようだ。
「忙しくてもご飯だけはちゃんと食べないと駄目! もし又食事抜きなんてしたらアタシが具合悪い時でも届けに行くわよ? 無理してでも、いいの?」
レイブはワタワタしている。
「そ、それは駄目だ! 判ったよ、これからは忙しくても食事には絶対帰ってくる、約束だ! だから、調子が悪い時は休んでくれなきゃ困る、約束だぞ」
「判ったわ、約束するね」
「おう」