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その後、一旦小屋に戻ったレイブは昨日からの一連の流れをラマスに語って聞かせたのである。
途中まで笑顔を浮かべて話を聞いていたラマスであったが、学院長の依頼、模擬戦のやり直しの辺りで表情を曇らせて言葉を漏らしたのである。
「昨日ランディが担当した選抜試験をわざわざダーリンがやり直すって…… 何でだろう?」
レイブは至極普通のままだ。
「それはあれじゃないか、俺が許可を得ないままで弟子たちに任せっきりだったからさ、ちゃんと俺が見なきゃ駄目だ! って、そう言う事だろ?」
「だったらまず怒るでしょ? 違うかな?」
「うーん、言われて見ればあの短気なズィナミにしては終始笑顔だったのは不自然、おかしくも感じるなぁ…… じゃあ一体なんで再試験を命じたんだ?」
「それは判らないけど…… 怪しいわよねぇ~ うん、午後の試合、アタシもエバンガやギレスラ、ペトラも誘って見学に行く事にするわ」
「大丈夫かラマス? 又具合が悪くなっちゃったら――――」
「ペトラやエバンガが居れば平気でしょ? ギレスラに乗って飛んで行って貰えば揺れもしないしね! それよりも、ダーリンの人のよさに付け込まれて、備蓄倉庫の時みたいに滅茶苦茶忙しい仕事でも押し付けられちゃう方が大問題よ! これ以上忙しくされたら全員死ぬわよ、マジで」
「そ、そうか! そうだな……」
そんなやり取りを経た結果、学院の強権による更なる業務の押し付けを避けるべく、病み上がりのラマス(賢い)とペトラ(賢い)それにギレスラ(不遜で強引)の三者が、午後の選抜試験(やり直し)に立会ってレイブ(お人よし、どちらかと言うと脳筋)をサポする運びになったのである。
じゃあ後でね、うん後でね♪ そんな感じで別れを口にしたレイブは、往きと違ってウキウキスキップで学園へ帰って来たのだ。
ズィナミ学院長の部屋に向かうべく、一気に校舎までステップを踏もうと考えていたレイブは、不意に投げ掛けられた声に足を止める事となる。
『レイブ! こっちだこっち、もう皆待っているんだぞ! 学院長や副学院長もお待ちである、早くしなさい!』
校舎の手前、普段竜種や魔獣達が訓練に使っている広場の上空から頭を覗かせた緑の竜はエンペラだった。
緑色の巨大な体は蛇の様に長くうねって空中に浮遊している。
申し訳程度に付いている四肢は短くてとても物の役に立つようには見えなかった。
更に言えば、両の前肢を使ってガシッと掴んでいる球体の宝玉を片時たりとも離さないので、実質後肢の二本だけが自由に動かせる足、そう言って良いだろう。
一度だけレイブが聞いた事があった。
その玉は一体何なのか? 何か重要な意味でも有るのか? と……
エンペラは即座に返したものだ、何のつもりか大きなギョロ目を細めて明後日の方を向き、わざとらしい影を帯びた感じでである、ついでに声音も通常より低めで渋目の物にしていた事もお伝えしておこう。
曰く、
『意味が無い者には無いのだ、しかし、そこに意味がある、そう思う者には無限の意味がある…… それだけは言っておこう』
だそうだ。
この言葉を聞いたレイブは如才なく答えながら同時に思ったものだ。
「なるほどぉ~、深いっすね」
――――何て言うんだろ、ふわっ? ぬるっ? ゆるっって言うのかなぁ? 要約すれば大した意味は無い、そう言う事なんだろうな~、一々大仰だけどぉ…… ふうぅ~残念だなぁ~
と……
とは言え、残念なヘビ、いや竜だとしても、しっかりと師匠筋に当たる者を無碍(むげ)にしないのがレイブである。
何で表で、そんな疑問を持ちながらも表面は笑顔を浮かべながら、エンペラの小さい手が招く方向へむけて、いかにも楽しそうな小走りで近付いて行ったのである。