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俺は海人、高校一年生。
俺には双子の兄がいる。
いつもクールでカッコいい人だけど、ある人の前では急にデレになっちゃう、ツンデレちゃんだ。
「廉!!岸くんと喧嘩しないって約束するから、俺も一緒に行っていい!?」
ある日、俺の兄ちゃんー廉ーが出かける時に俺は言った。
岸くんというのは廉の……彼氏?って言ったらいいかな……という人。まあ、要するに、付き合ってるってことね。
「は!?え!?お前、きっさん嫌いやろ?ほんまに喧嘩せん?」
不仲やろと廉が頭の上に『?』を浮かべながら言う。
実は俺と岸くんはあまり仲が良くない。まあ、理由はすぐわかるよ。
「大丈夫、大人しくしてるからっ!」
「はいはい。分かったよ、行こ。」
よし、作戦成功!!
俺と廉は家を出て、岸くんの家に向かう。
歩くこと五分。
岸くんの家が見えてきた。
「ホントに喧嘩せん?ほんま、心配やわ…」
「大丈夫だって!……岸くんが喧嘩売ってきたら止めて欲しいけど……」
「まあ、そんとこはやったるわ」
そう言って廉は岸くんの家のインターホンを押す。
ピンポーンという音が鳴り終わった時、ドアが開き、岸くんが出てきた。
「よーっす……って!海人!?」
「よーす!岸くん!」
「行きたいって駄々こねるから連れてきたー喧嘩せんでな?ほんまに」
本日何度目の『喧嘩するなよ』だろ。まあ、それぐらい心配なんだね。
何度かゲームをして少し休憩する時間になった。
すると岸くんが立ち上がり、「そういえばさ、廉に頼まれてたクッキーできてるんだよね。食べる?」と聞いてきた。
廉は「きっさんのクッキー大好きー!!!」と即答し、岸くんに抱きついた。
「廉!そんなことしてたら海人が……うわお。こっわい目で見てる……」
俺の恨みの視線に気付いたのか、岸くんは肩を震わせる。そんな岸くんをスルーして、廉は続けて「海人も食べたいやろ?な?」と少し煽る感じで言ってきた。
まあ、食べますけども。俺も一回、岸くん特製クッキー食べたことあるけど、すんごい美味しかった。あ・の・時・だ・け・岸くんを見直したのを覚えている。
「廉、離れてくれないとクッキー取りに行けないんだけど……」と岸くんがつぶやくと、廉は「ごめん、ごめん」と岸くんから離れた。
じゃあ、取ってくるーと岸くんが部屋を出たところで俺は廉に尋ねる。
「いつもあんな感じでいちゃいちゃしてるの?」
廉は少し考えてから
「んまあ、基本、あんなもん。まあ………ちゅーするときもあるけどな………」と言い、照れ臭そうにそっぽを向く。
!?!?!?
「えーっと……凄いデスネ。」
ちょっと羨ましい…いや、岸くん恨むっ!!岸くんに会うずっと前から廉のこと大好きだったのに!!!
はい。俺と岸くんの不仲はここから来てるんです。
簡単に言えば……『廉の取り合い』かな。
やっぱ兄弟はダメなのかなぁ。
夕方まで岸くんの家にお邪魔して帰ってきた俺は自室に籠り、考える。廉はホントに岸くんのことが大好きなんだな……。俺にはツンツンしてるのに、岸くんにだけデレデレなんだもん。……デレデレ可愛かったなぁ。俺に対してもやってほしい……なんて言っても、俺ら兄弟だし。急に廉が俺に対する対応を変えてきたら両親がびっくりするだろうな。
……はぁ……。
眠くなってきたから、もう寝よ。
次の日の昼休み。俺は親友である平野紫耀と昨日のことについて話していた。
廊下の方では、岸くんと廉がこれはまた仲良く連んでいる……いや、いちゃいちゃしてる。
「……って感じでさー。全然俺が入る場所ないの!!逆に凄くない!?」
「いやー。バカップル健在って感じだねー。てか廉、クラスニ個隣なのに良く毎時間くるよねー。まあ、今日はジンが休んでるからかもだけどさ。」
廉のクラスには中学からの友達である神宮寺勇太もいるんだけど、あいにく今日は風邪をひいて休んでるんだ。廉は人見知りだから、話す相手がいなくて毎時間終わるごとにこうやって俺のクラスに顔を出しにくるんだ。……お目当ては岸くんだけど。
「はぁ。やっぱ諦めた方がいいのかなー」
俺はため息をつく。
「それ、何度も聞いてるけど、結局ダメだったじゃん。一生片想いのままおじいちゃんになるよー。そんなんだったらさー。」
少し煽りながら紫耀が言う。
「いや、今回こそ!頑張って諦めるんだ!」
俺は拳を固く握り、そう決意した。
紫耀がボソッと「絶対無理だ……」と言っていたけど、もうスルースルー!!
こんなよっわい自分を変えてやるよ!!
「………やっぱ、無理だぁぁぁぁ!!」
俺は帰宅早々、ベッドにダイブした。
その反動でベッドがギシギシッと音を立てる。
「やっぱイケメンすぎるんだよおおおお……」
今日の帰り、たまたま岸くんが追試ということで二人で帰ることができた。
朝、雨が降っていたので、大きな水溜りがあったんだけど、俺はボーッとしてて……というか『廉にときめかない』と決意した直後だったから余計緊張して、水溜りに気づかなかった。
「海人、危ない」と廉に急に腕を引っ張られ、なんとか水溜りを回避した。
その後の廉ったら!!
「海人、今日なんか随分ボーッとしとるなあ?なんかあったん?大丈夫?」と俺の頭を撫でてきたの!!!もうこれはどんな人でもキュン死するって!!
……はぁ。無理。しんどい。
すると。
コンコン
「海人ー?大丈夫……?なんかおっきい音したけど……」
廉の声だ。
えっ。さっきの聞こえてた!?
「え!?いや、大丈夫だよ!?」
俺は慌てながら答える。流石にわざとらしかった!?
「いや、それ絶対大丈夫じゃないやろ。『無理ー!』とか言っとったんやで?」
きっ…聞こえてた……。
「なんでもないってばぁぁぁぁ」
「なんでもなくないから入るなー」
止める暇も無く、廉がドアを開けて部屋に入ってくる。
ああああああああああ。
やめてえええええ。
「めっちゃ顔、真っ赤やで??」
入ってきて早々、廉に言われる。
たしかに熱あるんじゃないかっていうレベルに熱い。
「あ……えっと」
廉は「よいしょ」と俺の隣に座る。
「やっぱ、熱、あるんやない?」
そう言って廉は自分の手を俺のおでこに当てる。熱はないはずだけど……。カッコいい……。
「あれ、あんま無いやん。なんだー海人の頭がおかしくなっただけやん〜!」と廉はなぜか悔しそう。
「や、俺、そんなに頭、おかしくなった!?」
「え、だって目合わせただけで顔赤くなってたで?今もやけど。」
はい!?
え!?
「ウソっ!!!」
俺は思わず、自分の顔をペタペタ触る。そんな無意識になってたなんて……!恥ずかしいいいい……。
「なんか、俺に恋する乙女みたいやったわー。どこで覚えたん、そのあざとテク。」
廉に恋してるのはホントだけど、これ、テクニックとかじゃないから!!
……なーんて言えないよね。
廉にはもう岸くんがいるしさ。
そして廉は立ち上がり、「海人がアホになっただけやったから戻るわー。明日までに治しときー」とニヤッと笑って廉の部屋帰ってしまった。
……ていうか、明日までに治せなくない!?これ!?
廉が部屋を出てはや十分が経った。
晩御飯までまだ時間があるので、勉強しようと勉強机に向かう。
隣の部屋から廉の話声が聞こえる。話してる内容から、多分岸くんと電話してるんだろう。「ホントそういうとこ好きやで」とか「可愛い〜」とか岸くんに対してしか言わない言葉が聞こえる。いいなぁ。岸くん。めっちゃ羨ましいよ。
俺は数学の参考書を開き、今日の授業の復習も兼ねて問題を解くことにした。
「えーっと。因数分解だから……」何も考えずに手動かす。
簡単な単元だからすぐに終わってしまった。
「あーあ。ホントに諦められないんだよなぁ。」
解き終わってすぐに廉のことを思い浮かべてしまう癖、いい加減治したいのにな。
その時。
ピロン
スマホが鳴った。
見るとジンからメッセージが来ていた。
『紫耀から事情は聞いた!明日の昼休み、屋上集合!』とあった。
俺は『りょー』と返事をした。
紫耀……ジンにまで言ってたなんて。まあ、いいんだけどね。
次の日の昼休み。
ジンに言われた通り、紫耀と屋上に向かった。
もうジンは来ていた。
「おーっす!海人なんか顔死んでるなー。」とジン。
俺、そんなに疲れてる……??
俺が首を傾げていると、ジンは「うそ、嘘!!全然!むしろ昨日なんかあったでしょー!」と大袈裟に言う。
そりゃあ、もう!キュンキュンだったからねー!
俺は昨日のことを二人に話した。
「わお!廉そんなことするの!?いがぁい!」と紫耀は驚く。
そしてジンは言った。
「そう言うことなら、いい方法がある!これなら100%うまくいくよ!」
「ひゃっ!!100%!?」
なになにー!?!?
「それは……」
ジンはある作戦を俺に伝えた。……誰でも思いつく事だけどね〜。
「どう?やれる?」
ちょっと難しいかなと首を傾げるジン。
俺はううんと首を振った。
もういい加減、うじうじするのやめなくちゃ。
「廉。ちょっと、話あるんだけど。」
帰宅して制服から普段着に着替えて、隣の部屋にいる廉に言う。
「なんか怖いー!……まあ、ええよ。入って。」
廉に言われるまま、ドアを開けて部屋に入る。いつも通り、部屋は綺麗。廉はベッドに寝っ転がってゲームをしていた。
「で、何?話って。」
廉がベッドに寝っ転がったまま言う。
ホントは、気づいてるくせに。
「廉はさ、知ってるんじゃ無いの?」
一瞬、手が止まった。
でも廉はまたゲームを再開する。
「とりあえず、座んなよ。」
俺は廉が寝っ転がってるベッドの端の方に座った。
しばらくの沈黙の後、俺は勇気を出して言った。
「俺…好きなんだよね。廉のこと。」
「………知ってる。」
「恋愛の方だよ?分かってる?」
「……分かってる。だから俺も勇気を出して岸さんと付き合った。諦めてくれるかなって思ったけど……。」
「うん。諦めきれなかった。」
「流石に付き合えとは言わんよな?」
「当たり前でしょ。流石に血の繋がった兄弟だし、廉にはもういるし。」
廉はゲームをやめ、ベッドから起き上がる。
「なんで俺はモテちゃうんやろうなぁ〜」
「知らないよ、そんなの。」
「だってさ、さっき、紫耀とジンから同時にメールで告ってきたんやで!?『廉が好きです、好きすぎて死にそうです』ってきてさ!『勝手に死んどけ!』って返しちゃったわ!」
この話が本当かどうかはわからない。もし本当だとしてもジンと紫耀の悪戯だろう。だってジンの作戦は『さっさと告っちゃう』なんだから。
「廉はホントにモテるんだよ。俺が保証する。だってさ、血の繋がってる弟だって落とせちゃうんだから!」
「そーかもなぁ」
そうして少し間を置いて廉は続けた。
「海人。家の中限定で、彼女扱いしてあげてもええで?」
『してあげても』って言うのがツンデレな廉らしい。まあ、もう彼氏がいるからね。
「えへへ。いいの?」
すっごい嬉しい。
「家限定やけどな。」
そう言って廉は俺に顔を近づけてきた。何をするのかと思った次の瞬間、手慣れたような感じで短めのキスをしてきた。
………ああ、なるほど。こうやって岸くんも落としたのか。怖いな、この人。
「家限定やけど、これぐらいはやったるよ。」とケラケラと笑う廉。
岸くんとは多分これ以上のことしてるんだろうけど(まあ、その時点でなんてことしてんだよって感じだけど)彼女扱いされるって、やっぱり嬉しいなぁ。廉がデレデレしてるとこ見られるんだよ!?……岸くんの方が見れると思うけど。
「…廉、大好き。」
「え?なに?もう一回したいん?」
「そう言うことじゃ……」
「ふふ。嘘やって。ホントに海人は可愛いなぁ。」
そう言ってわしゃわしゃと俺の頭を撫でる。……ちょっと待って。今、あの廉が『可愛い』って言った!?
「れ……廉!?今…可愛いって……」
「あっ……!!いや、ほら、ゲームしよ!な!デート、デートっ!!」
廉が話を逸らす。
あーやっぱ『デレ』が出ちゃったのね。俺の前でもとうとう、デレを出してくれたよ。
そう思いながら、俺はゲームのコントローラーを握った。
END