「バゴーーンッ!!」
石レンガでできた建物の中に、大きな音が響き渡った。
「あーあ、本当に正面から行くんだね。」
ヨーラが呆れながら言った。
「仕方ないだろ!これぐらいしかないし!」
アルレイドが足元の欠片を思い切り蹴って言った。
「何が起きた!?」
しばらくすると、大勢の慌てた足音と、飛び交う声が近づいて来た。
「こっからが本番だぜ!」
「あーもう!本当にわからないよ!?」
アルレイドは右手を扇子を持つような形にし、ヨーラは物陰に隠れた。
「イメージ!」
アルレイドは大きな声で唱えた。
次の瞬間、手元が一瞬白く光り、次の瞬間には、右手に、先の鋭くなったあの杖が握られていた。
「どうして魔法が使えるんだ!?」
こちらに走って来た人たちは全員驚いていた。
「どうしてって…、ここが外だからじゃねーか?」
アルレイドは不敵な笑みを浮かべた。アルレイドが立っているのは外の地面だ。
「ええい、もうどうなっても知らん!取り押さえろ!」
偉そうにしている、目と口が三日月形に裂けた仮面をつけた男性が叫んだ。
次の瞬間、何人もが一斉にアルレイドに飛びかかった。逃げ場は無いように見える。
しかし、アルレイドはそれをかわし、杖の平たい部分でなぎ払った。
「時間稼ぎにもならないじゃねーか。」
全員を倒し終わると、アルレイドは建物の中に入り、仮面の男性の方に歩いて行った。杖は消えない。
創造の魔法は、物体が作られた時点で一度魔法が消えているため、作られた物は特殊な魔法を使わないと消えない。杖が消えなかったのは、この建物内で魔法を使うことはできなくても、創造物を消す特殊な魔法がかかっていなかったのが原因だ。
「来るなっ!」
仮面をつけた男性は後ずさりした。
しかし、アルレイドは素早く杖で男性の仮面を真っ二つに割った。
「久しぶりだな、出張はもうないのか?」
アルレイドはニヤッと笑った。
「……フハハハハ、仮面では誤魔化せないという事だな。」
男性も笑った。前に列車で会った老紳士だ。
老紳士はまた後ずさった。
「アルレイド!離れて!」
アルレイドの倒した人たちを縄で縛っていたヨーラが叫んだ。
「もう遅い!」
老紳士は笑いながら言った。手にはガトリングガンを持っている。
老紳士は引き金を引いた。激しい騒音とともに、辺りは一瞬で煙に包まれた。
「これで邪魔者はいなくなったな!」
老紳士は声高らかに笑った。
「やっぱりだめですね…貴方は…油断は禁物ですよ…」
煙の中から誰かの声がした。
煙が晴れた。かと思った瞬間、その中から何かが飛び出した。それは素早く老紳士の間合いに入り、老紳士の体を遠くへ蹴飛ばした。老紳士は一瞬で気絶した。
「ありがとな!ヨーラ!」
アルレイドはヨーラに駆け寄った。
あの瞬間、ヨーラはとっさにシールドをつくったのだ。
「別に…私にも弾が当たるし…」
ヨーラの仮面は、この建物で魔法が使えるような仕組みになっていたらしい。
「早く行こう。多分腰抜けはみんな逃げた。」
ヨーラは牢屋の場所まで案内しようとした。
「私は外から行く!だから地図描いてくれないか?」
「…何で?」
「そのうちわかるって!」
アルレイドはニヤッと笑った。アルレイドなりの考えがあるらしい。
「バゴーンッ!」
牢屋中に大きな音が響き渡った。
「アリシール!迎えに来たぜ!」
壁に空いた穴からアルレイドが入って来た。
「やっぱりアルレイドだったんだね。ダイナマイトとか壁に響いてうるさいのなんの。」
思ったより冷たいアリシールだ。
「いいじゃねーか!別に!」
アルレイドは叫んだ。
「アルレイド!私のお姉さん向こうだから!ちょっと来て!」
建物内から来たヨーラも叫んだ。
「あれ誰!?仮面!?」
「アリシール!後で説明する!その前にちょっと手伝ってくれないか?」
アルレイドはアリシールの手を引いて走った。
「誰!?」
少女は物音がした方に向かって言った。
「姉さん?…私!ヨーラだよ!」
「ヨーラ…?本当にヨーラ…?」
少女とヨーラは嬉しそうに泣いていた。
「良かったな。ヨーラ。」
アルレイドは二人を見て言った。
「良かったな。 じゃないよアルレイド!手伝って!!」
アリシールは振り下ろされた鈍器を避けながら言った。
「しゃーねーな…、お前ら!覚悟しろ!」
そう言って、アルレイドは大勢の残党に向かって行った。
あの姉妹が外に出るまでの間、二人は足止めを任されたのだ。
「助けてくれてありがとうございました。」
ヨーラの姉、リディアは、二人に頭を下げた。
「どうって事無いぜ!良かったなヨーラ!」
「うん!今までありがとう!アルレイドも良かったね!」
ヨーラはニッコリと笑った。
「セルディアとガレットは逃がしちゃったけどね。」
アリシールが言った。
「あいつらはぜっっったいに見つけてコテンパンにしてやる!」
アルレイドが叫ぶように言った。
「あのさ、アルレイド!私も仲間に入れて!」
ヨーラが言った。
「お姉さん助けて、せっかくまた一緒に暮らせるのに、いいの?」
アリシールは目を丸くして言った。
「いい!」
ヨーラは真剣な眼差しで言ったが、その後心配そうにリディアの方を見た。
「いいよ。私はコドカヌで待ってるから。」
リディアは少し寂しそうに笑って言った。
────────あとがき的な何か────────
読んでくださりありがとうございました。
これを公開していたのは約1年前なので語彙力や画力が現在よりもありませんが、 再編なしで一言一句当時のまま投稿し直させていただきました。
不完全な作品として終わってしまったので、ストーリー構成などを一新してリメイク作を書こうと思っています。
今後も夕闇をよろしくお願いいたします。
(当時描いたイラストです)↑
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