テラーノベル
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「また負けたな、水科。」
教室の静寂を破ったのは、乾いた声だった。
学年1位、東雲 芙羽(とううんふうわ)。
冷たい目をした彼は、答案用紙を手に立ち上がった。
「数学も英語も、俺の方が上。もう何度目だっけ?」
言われた水科 真白(みずかましろ)は、何も言い返さなかった。
ただ、静かに机の上の答案を見つめていた。
93点。
いつもなら満足していた数字。
でも、東雲の98点の前では、意味がないように思えた。
進学校・私立天麗学園。
ここではすべての教科において順位がつく。
テストの結果は廊下に貼り出され、上位十名は全校生徒に名を知られる。
比べられることが当たり前。
努力も、悔しさも、すべて「点数」という尺度に飲み込まれる。
放課後。誰もいない図書室の片隅で、真白はぼんやりと窓の外を眺めていた。
「私、何か間違ってるのかな…」
そのときだった。
「君、水科真白さんでしょ?」
声をかけてきたのは見知らぬ男子生徒だった。
学年も違うらしく、名札の色が異なる。
「…誰?」
「僕、調査部の片瀬珠知斗。非公式だけど、学内の不正を調べてる」
「不正?」
「次の定期テストの順位、もう決まってるって知ってた?」
真白は一瞬、意味が分からなかった。
「どういうこと?」
「東雲芙羽。彼の点数、操作されてる可能性がある。…君のテスト、見せてくれない?」
真白の背筋に、ぞわりと寒気が走った。
まさか。そんなはず、ない。
けれど、ふと答案を思い出した。
いつもより点数が低い気がして、答えも合っていたのにバツがついていたところがあった。
――あれは、ミスじゃなかったのかもしれない。
そして、片瀬が小さく囁いた。
「“テストは人と比べるもの”。そう思わされてる限り、真実は見えないよ」
次第に浮かび上がる、優等生の仮面に隠された学園の闇。
真白はまだ知らない。
これはただの“点数”の話ではなく、誰かが意図的に仕掛けた“罠”の入り口なのだということを――。
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