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「潔くん」
「あ、氷織!2日ぶり!」
「うん、元気そうで良かったわ。今日も魔法の練習する?」
「うん!いつもありがとう、氷織」
「ええよ、潔くんに教えるの楽しいから」
先日のひょんな出逢いから、俺等は何度か例の孤児院の裏庭でこっそりと密会を繰り返していた。
氷織は、俺に色々なことを教えてくれた。この世界の魔法の種類や属性、使い方など。孤児院にいるだけでは知り得ないことを沢山知った。
俺と変わらない10歳の筈なのに、氷織はしっかり者で凄い。いつもはんなり落ち着いた話し方で、難しい言葉もよく知っている。
10歳というと日本では小学4年生だ。その時の俺なんて、こんなにしっかりしてなかったぞ。
「(小さい頃からずっとサッカーのことしか考えてなくて勉強もあんま得意じゃなかったなぁ…)」
「…、ーーくん?」
「(そういえばこっちでもサッカーてあるんかな)」
「潔くん?」
「へ?」
いつの間にかぼーっと考え事に耽っていたみたいだ。心配そうにこちらを覗く淡いスカイブルーに慌てて返す。
「あ、ご、ごめん!ぼーっとしてた!」
「どしたん?何か悩み事?」
「あー、いや悩みっていうか…その、氷織って凄いしっかりしてるじゃん?偉いなぁって思ってて」
「…」
「あ!ごめんなんか上からって感じで嫌な奴かも。ごめん…!」
「や、全然かまへんよ。…ふふ、なんか潔くんから褒められるのは照れるなぁ。うれしい」
「そ、そう?良かった〜」
目をまん丸くしてこちらを見た氷織に、失言だったかもと一瞬ドキリとしたが柔らかく笑う氷織に安心する。
「せや、僕今度ここに正式にお邪魔することになったんや。来週からよろしゅうな」
「正式にお邪魔…?」
「そ、なんとなくもう知ってると思うけど…僕貴族の一人息子なんやけど。」
「うん」
「なんでも、家に代々伝わるノブレス・オブリージュとかいう高貴な者の務めを果たす精神、ていうのを育む為に孤児院を訪れる必要があるらしいねん。」
「へー、そんなのがあるんだなぁ」
ノブレスオブリージュ…どこかで聞いたことある響きだ。力のある強い人は、立場の弱い人達も守ろうみたいな意味だった気がする。
とにかく、その務めのおかげで氷織と会える時間が増えるのは素直に嬉しい。
「じゃあ氷織と沢山遊べるな!今までここでほんの1時間話してばいばいだったけど、来週は1日話せるかも。楽しみ!」
「うん、僕も楽しみや」
嬉しい知らせにはしゃぎながら(最近は、精神年齢が実年齢に引っ張られてる気がする)、俺等は今日も楽しく魔法を磨いた。
まだバンバンと魔法を放てるほどの魔力はないので、ちょっとずつ魔力増量トレーニングをしたり、実践でちょっとした明かりを作れる光魔法を使ってみたり。
対して氷織は、凄い量の魔力を持っているようで水魔法で水の塊を勢いよく飛ばして見せてくれたりして、俺はそれを凄い凄い!と興奮しながら見た。
そんな事をしていれば別れの時間はあっという間にきた。
「じゃあ、次に会えるのは来週だな」
「うん。せや、孤児院に手土産も持っていきたいと思ってるんやけど、潔くん何か欲しいもんある?」
「え、ええ?!お、俺が決めちゃっていいの、それ?」
「ええよ。僕のお小遣いで買うし、僕が潔くんの欲しいもの持っていきたいと思ってるから。何でも言って」
にこりと微笑みながら何でもない事のようにそう言う氷織に、凄い嬉しくはあるけど少し気後れしてしまう。
「お、おう。ありがとう。でも、俺手持ち何もないし、ちゃんとしたお返しもできないから…」
「そんなん気にせんでええのに。あ、僕からのもの、いらんかった…?ごめん、重すぎやったかも…」
しゅん…と音がするかのように触覚を垂らし、俯く氷織にあわあわと返す。
「いや!いやいやいや、すっごいうれしい!嬉しいんだけど…なんていうか、孤児院あての手土産が俺の好みによって決まるのも申し訳ないというか…」
「何言ってるん。僕、潔くんがおらんかったら孤児院に手土産持っていくって発想なかったで。」
「へ」
「孤児院あてなのは、僕が自由に買い物する為の理由付け。あくまでも、友達の為にプレゼントしたいのが僕のしたい事やから」
「そ、そうなのか……」
まさかの告白にむずむずとする。次第に、氷織からの素直な好意ににまにまとしてくる。
「…へへ、…そうなんだ…!へへ…」
「な、なに?どうしたん潔くん…?」
「いや、氷織って俺のこと結構好きでいてくれたんだなーって」
「すっ、、まぁ…せやね。僕、潔くんのこと、今まで会った人の中で一番好きかも」
「あはは!すげー嬉しい…!俺も、氷織のこと好きだ!
孤児院の中じゃ年の近い子とかいないし、俺最年長だから…。ちゃんとしないとってずっと思っててさ……だから、こんな風に話せる友達が出来て嬉しいし、一番仲良い友達だと思ってる…!」
「ありがとう、潔くん。そう言ってもらえてめっちゃ嬉しいわ」
にへらと笑い合いながら互いの気持ちを伝え合って、優しい空間が出来上がる。
「で、どうする?」
「あ、そっか。うーん、そうだなぁ……あ、お菓子!俺、甘い物好きで…!甘いものが欲しいです!!」
「甘いもの…分かった。今度沢山持ってくるわ」
「ありがとう氷織…!あ、でもそんな無理して沢山じゃなくても大丈夫だから…!」
「無理してないから心配せんで。僕、これでも結構お金持ってるから。
それに、沢山用意せんと他の子達に優先して潔くんあんま食べれんくなるよ?」
ええの?という風に聞いてくる氷織に、潔はうぐ…と黙り、甘い物の誘惑には勝てなかったのかしげしげと頭を下げ、氷織の言葉に甘える。
「よろしくお願いします!」
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どうもお久しぶりです。もうすぐ1年が経とうとしてるのが信じられません()
実はサイレント加筆していたりで、こっそり更新はしていたんですが、新しい話書くのはすっごい久々になってしまいました。
ここまで書いてきていくつも出てくる矛盾や、地の文が潔視点になったり三人称になったりとぐちゃぐちゃで頭抱えたんですが、もう何も考えないことにします()
次回こそ新キャラ出せたら出したい