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全てフィクションです
初投稿なので温かい目でご覧ください
激しい雨が降り続いていた。
翔太は窓の外を見やった。無数の雨粒の向こうに、深い夜が広がっている。この闇を、いつか朝日が照らし出すなんて信じられないほど。
「涼太……」
恋人の名前を呟く。寂しい響きが混ざっていた。
思ったことはすぐ口に出し、マイペースで自由奔放。やや豪快に見える彼も、そんな皮を被れなくなるくらい、疲れ果ててしまう時があるのだ。
まさに今日がそうだった。
また、終わりの見えない雨が、孤独をより強く感じさせていた。
不意に何もかも崩れてしまいそうで。一人ぼっちになってしまいそうで。いつも心の奥にしまい込んでいる不安が、胸を締め付ける。
涼太は仕事で遅くなるらしい。いくらなんでも遅すぎるんじゃないか──。ハッと顔をあげたが、思ったより時間は経っていなかった。
「涼太、涼太、りょうた……」
早く帰って、抱きしめて欲しい。一人じゃないよって言って欲しい。この憂鬱を溶かして欲しい。
いつのまにか翔太は泣いていた。
膝に額を押し付け、耳を塞いで、泣き続けた。
「ただいま……って、翔太?泣いてるの?」
頭上から、愛しい声が降ってきた。
「りょうたっ……」
翔太は、泣き顔を隠すように、涼太の胸に飛び込んだ。
涼太は驚いたように体を震わせたが、やがて翔太の背中を優しくさすり始めた。大切に、大切に、慈しむように。まるで、全部わかっているよ、とでも言うように。
二人は何も言わないし、何も聞かない。長い時間を共に過ごしてきた彼らに、それは不要だった。
心地よい静寂が二人を包み込む。
「涼太、ごめんな」
「謝らないで。大丈夫だから」
涼太は、翔太の頭にそっと手を置き、言った。
「俺がそばにいるから」
その言葉に、翔太は小さく頷いた。
涼太が柔らかく微笑んだ。
同じベッドに、二人抱きしめあって寝る。
翔太は恋人の頼もしい胸に顔をうずめた。それに愛おしさが込み上げてきて、涼太は胸の中の恋人をますます強く抱きしめた。
雨は幾分か弱くなっていた。
二人はそっと目を閉じる。お互いを、瞼の裏に思い浮かべながら。
誰も知らないひとつの夜は、ゆったりと更けていった。
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