テラーノベル
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――暗い。
どこか、分からない。
『……ここ……』
詩夏は、ゆっくり目を開けた。
鼻をつく、焦げたような匂い。
湿った空気。
ひんやりした床。
『……地下……?』
立ち上がろうとすると、
足元で、がしゃりと音がした。
『……っ』
鎖。
古びた鉄の鎖が、床に散らばっている。
『……なんで、こんな』
胸が、ざわつく。
知らない場所のはずなのに、
懐かしい。
それが、何よりも気持ち悪かった。
『……誰か、いるの……?』
返事はない。
ただ、
奥の方から、かすかな赤い光が見えた。
詩夏は、引き寄せられるように歩き出す。
部屋の奥。
そこには、黒く焦げた跡があった。
床も、壁も。
『……火事……?』
近づいた瞬間。
『……っ』
頭が、割れるように痛んだ。
視界が、揺れる。
そして。
誰かの声が、聞こえた。
『もう、やめて……』
聞き覚えのある声。
震えている。
詩夏の喉が、ひくりと鳴る。
『……だれ』
次の瞬間。
『……っ!!』
床に、何かが転がっているのが見えた。
白い。
細い。
『……』
骨。
『……うそ』
呼吸が、浅くなる。
『……こんなの……』
その時。
背後で、足音がした。
――コツ、コツ。
『……誰!?』
振り返る。
そこに立っていたのは。
『…… ?』
制服姿のちな。
でも、どこか違う。
目が、笑っていない。
『……詩夏…?』
ちなが、静かに名前を呼ぶ。
『……なんで来たの』
『……え』
『ダメって言ったのに』
詩夏は、後ずさる。
『……ここはどこ…?』
ちなは、ゆっくり近づく。
『……』
詩夏の頭が、真っ白になる。
『……ねえ何とか言ってよ!お…』
ドンッ
ちなは、詩夏を金属の棒で殴った。
――そこで。
『……っ!!』
詩夏は、勢いよく目を覚ました。
『……はぁ、はぁ……』
自分の部屋。
朝の光。
夢。
……のはず。
でも。
『……』
胸の奥が、冷たい。
(……地下室)
(……骨)
(……誰だっけ、あの人)
心臓が、早鐘を打つ。
『……夢……だよね』
そう言い聞かせる。
でも。
洗面所に行こうと立ち上がった時、
足が、止まった。
『……』
なぜか。
鍵のかかった扉の位置が、
頭に浮かんだ。
知らないはずの、場所。
『……変なの』
学校。
『詩夏、大丈夫?』
琴音が声をかける。
『顔、青いよ』
『……ちょっと、寝不足』
詩夏はそう答えた。
ちなは、少し離れた席から、
詩夏をじっと見ていた。
(……見た)
(地下室)
(……もう、そこまで)
昼休み。
ちなは、何気ないふりで話しかける。
『ねえ詩夏』
『……夢とか、見る?』
詩夏の手が、止まる。
『……どうして』
『なんとなく』
ちなは笑う。
『最近、変な夢見る子多いな〜って』
詩夏は、少し迷ってから言った。
『……地下室の夢、見ました』
一瞬。
ちなの笑顔が、消えた。
『……へえ』
『どんな?』
『……暗くて』
『……火の跡があって』
『……骨、みたいなのがあって』
ちなは、息を止めた。
『……へえ』
『……気味悪いよね』
『……』
詩夏は、ちなを見つめた。
『ちなさん』
『……私、前に』
『地下室、あった家に住んでましたか?』
ちなは、一拍置いてから答える。
『……さあ?』
『覚えてないな〜』
その声は、いつも通り明るかった。
でも。
詩夏は、確信してしまった。
(……この人)
(何かを、隠してる)
放課後。
ちなは、ひとりで屋上にいた。
指を、強く握る。
遠くで、チャイムが鳴った。
ちなは、小さく笑う。
『……次は』
『どこまで、思い出すかな』
知らない地下室
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