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「みっさんはヘリを諦めても良いんじゃないですか?」


「そんな事言わんとって、ちゃうねん今回は急に目の前に現れた木が悪い。」


「でも今日だけで何回目ですか?残念ながら人には努力ではどうにもならない、得手不得手というものがありますよ。」


「ぐっさんはヘリ上手いもんなぁ、コツとか無いん?」


「コツと言われても…感覚でしかないです。」


5回も6回も呼ばれると流石にいたたまれなくなり自ら値下げした請求書を渡す。そろそろ寝ると伝えるとなら今日の練習は終わりだとアジトまで送って解散した。


「もしもし空架です。私は仕事終えました、そちらは?」


「あー…ごめんまだもうちょいかかりそう、終わったらまた電話するね。」


「分かりました、待ってます。」


事件が落ち着いてくるこの時間帯ならいつもはすぐに会えるのに珍しいな、と思いながら適当にバイクで街を走る。




「ぺいんさん?」


「ん、なに?」


「疲れてます?」


「いやそんな事無いよ、大丈夫。」


「体調は……平気そうか。」


会ってみるとテンションが低く口数も少ない、どこか上の空なぺいん。診察したがどこも悪くはなかった。


「大丈夫だってば、勝手にやめてよ。」


「ぇっあ、すいません…」


「あっ違う!ごめんね心配してくれてるんだよね。俺は大丈夫だから、何ともないから。ほんとごめん。」


「じゃあ何があったんですか?明らかにいつもと様子が違います。」


「えー…なんにも、ないよ?」


「その返答で私が信じるとでも?」


あった、ない、おかしい、おかしくないの押し問答の末ぺいんが折れた。


「分かった、じゃあ話すよ…ぐち逸ってさぁ868の人達と仲良いよね。」


「868の人達ですか、まぁ私が街に来た当初お世話になったからそこからの縁で。」


「あのさ…音鳴ミックスとはどういう関係なの?」


「どういう?他の868の方々と変わりませんよ。」


「嘘つかないで、絶対なんかあるでしょ。」


「どうしてそう思うんですか?」


「……だってぐっさん、みっさんってあだ名で呼び合ってたじゃん。仲良さそうに話してたし。」


「どこで見てたんですか?それは向こうが最初にそう呼び始めて私は合わせただけだし、今日は何回も通知で呼ばれたから顔を合わせる回数が多かったってだけです。」


「そうだとしても、なんか…なんかさぁ…」


本気でそう思ってる訳では無いのにこのモヤモヤした気持ちをどうしたら良いのか分からず、本心とは逆に冷たく、強く当たってしまう。


「ぐち逸俺のこと好き?」


「どうしたんですか急に……好き、ですよ///」


「俺も好き、1番好き。でも他の人は俺達のこと知らないじゃん、知られちゃいけないじゃん。傍から見たら俺より仲良い他の人に取られちゃうんじゃないかって…」


「そんな事…もしかして嫉妬してます?」


「嫉妬?……なのかな、これ。ぐち逸のこと信用してないとかでは無いよ、でももしかしたら、ぐち逸が別の人の所に行っちゃうんじゃないかって思っちゃって。不安で…」


ぺいんの心の内を知ったぐち逸は真剣に打ち明けてくれた手前悪いとは分かっていながら、思わず顔が綻んでしまう。


「なんでそんなニヤニヤしてんのさ、くだらないかもしんないけどそう思っちゃうんだもん…」


「ああいえ違うんです、ごめんなさい。嬉しくて。」


「嬉しいの?…嫌だとか重いとか、面倒臭いなコイツとか思わないの?」


「はいその…なんて言うか、ぺいんさんがそれ程強く私を想っていてくれて嬉しいです。誰にも取られたくないって思う程に。」


「そんな風に言ってくれるんだ、優しいねぐち逸は。なのに俺はこんなんでごめん。」


「謝らないでください、ぺいんさんだってこんなに優しい。私は絶対他の人の所になんて行かない、ぺいんさんが離れない限り。…因みに言うとこれは秘密なんですが、音鳴さんには恋人がいますよ。」


言いながら肩を落としているぺいんを更に慰めようと初めてぐち逸のほうから手を繋いだ。


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