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「リリアンナ様……」
心配そうなナディエルの声に、リリアンナは小さく首を横に振った。
「心配かけてごめんね、ナディ。……私は……大丈夫よ」
そう答えながらも、頬は熱いままだった。
ナディエルは少しだけ困ったような顔をした後、そっと隣へ寄り添う。
「申し訳ありません。――皆、旦那様とリリアンナお嬢様がお幸せそうで、安心して浮き足立ってしまっているのです」
「え……?」
思わず顔を上げると、ナディエルが優しく微笑んだ。
「もちろん、私もです」
その言葉に、リリアンナは返事が出来なかった。
最初はリリアンナ同様、戸惑っていたらしい城の者たちも、今ではこの状況を〝当然のこととして〟受け入れ始めているらしい。
(私、どうしたらいいの……?)
リリアンナ自身、ランディリックは自分のことを〝養女〟として見ているとばかり思っていた。
なのに今では、ランディリックが城に滞在している夜、彼と眠ることが当たり前になってしまっている。
こんなふしだらな関係は良くない。
そう思われても不思議じゃないはずなのに。
城の誰も、それを責めない。
むしろ自然なことのように受け入れ、祝福してくれている。
その空気に触れるたび、頑なに閉ざしていた自分の心が、少しずつ揺らいでいくのを感じずにはいられない。
――私、このまま女主人として、ここにいてもいいのかも?
そんな考えが胸をよぎるたび、リリアンナは戸惑いを覚えた。
そんな日々を過ごすうちに、夜、自室へ戻っても、
(……ランディ、まだお仕事をしているのかしら)
無意識に彼のことを考えるようになっていた。
夏の間は当たり前だったはずの、ランディリックの不在。
――彼がヴァルム要塞へ行っている間の、独寝の夜が落ち着かなくなってしまったのは、ランディリックの腕の中で眠ることを甘受しすぎてしまった結果に違いない。
彼が一晩でも帰ってきてくれれば、妙に安心してしまう。
食卓で視線が合うだけで胸が騒ぐ。
同じ時間を共有できることが嬉しい。
食事を美味しいと思えることさえ、彼と共にいるからではないかと思ってしまう。
その感情の正体に、リリアンナはもう気付いていた。
(私、ランディのことが好きなんだ)
辛く苦しい場所から救い出してくれた、庇護者のような存在だと思っていた。
きっと、自分がランディリックのそばを離れられないのは、彼に父性を求めていたからだと決め付けていた。
でも――。
どう考えても、今リリアンナがランディリックに抱いているこの感情は、そんな幼い憧れや家族愛などではない。
もっとずっと身勝手で……恐らくは多くの男女が異性に対してのみ抱くであろう、甘く抑えきれない恋心の発露――。
そのことを理解してしまった瞬間、リリアンナはギュッと胸元を押さえた。
恋愛感情だと気付いてしまえば、もう自分を誤魔化せなかった。
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コメント
2件
わー、リリアンナがランディリックへの恋心に気がついた! これは大きな進展♥
みぅだよ🖤 リリアンナ、ついに自分の気持ちを認めたね……。ずっと「父性を求めてるだけ」って自分に言い聞かせてたけど、もう誤魔化せなくなっちゃったんだね。「独寝の夜が落ち着かなくなった」って表現、すごく切なくて好き。視線が合うだけで胸が騒ぐとか、同じ時間を共有できるだけで嬉しいとか、恋ってそういう些細なんだよね。ナディエルの「もちろん私もです」も優しくて、城全体が2人を自然に受け入れてる空気が伝わってきたよ。ここにいたい——そう思える場所があるって、いいね。