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こちらはirxsのnmmn作品(青桃)となります
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ご本人様方とは一切関係ありません
桃視点→青視点
たまにはタッグを組む外科医と小児科医の話なんかもいいですよね…!
※この話は諸事情によりすぐに非公開にするかもしれません
「ないこ先生、画像結果出ました」
研修医の宮川くんがそう声をかけてきたから、診察室内を歩き回っていた俺は俊敏な動きで電子カルテの前に戻った。
キャスターつきの椅子に半ば乱暴に座り、マウスをかちりと操作する。
さっきからそわそわしながら待ち続けていた画像検査の結果が、ようやく出たらしい。
「……」
パソコンの画面いっぱいに表示される画像。
もう一度クリックすれば、動画のように画面が動き出す。
どんな些細な動きも逃さないように、瞬きすら忘れ画面に見入った。
隣で宮川くんも俺と同じ険しい顔をしていることだろう。
画像を見据えながら、自分のピンク色の前髪をくしゃりと握る。
椅子の背もたれに、どんと乱暴に自分の背中を預けた。
「再発…」
「…ですね」
ふーーーーっと長い息を吐きながらの俺の呟きに、宮川くんが悔しそうな低い声で同調した。
椅子に更に深くもたれかかり、うなだれるようにして身を預けるとぎしりと嫌な音が立つ。
「…こればっかりはしょうがないね。手術の方針で準備しよう」
「はい」
「患者さんご家族、今どこにいる?」
「このフロアのどこかにはいらっしゃるみたいです」
「そ。なら15分後に診察室に呼んで」
俺の指示に、宮川くんは「はい」ともう一度簡潔な返事を寄越した。
それを耳にしながら、俺はもう一度画面を見やる。
恨めしそうな視線になってしまったのは致し方ないだろう。
この画像検査の結果は、たった5歳の女の子のものだ。
昨年この幼さで癌が見つかり、前の病院では手術もしている。
今回は再発の疑いで、より大きな病院をとうちに紹介になった。
今結果が出たばかりのうちでの検査でも、はっきりと再発が見てとれる。
恐らくまた手術をするのがベストだろう。
小さな体に負担はかかるが、病巣をそのままにしておくわけにもいかない。
子どもも幼いが、両親もまだ若い。
確か20代後半だったはず。
愛情いっぱいに育てている子がこんな重い病にかかるなんて、親の想いを推察するだけで胸が痛い。
「自分が変わってあげられたらいいのに」初診時にそうぽつりと漏らしていた母親の言葉は、今でも俺の耳にこびりついて離れない。
「……」
かちりと、今度は宮川くんがもう一度マウスを鳴らした。
画像の別の部分も念入りにチェックしようとしているのだろう。
俺もちらりとそれを眺めていたけれど、とある部位で両の目を大きく見開いた。
「待った!」
思わず大きな声を上げたせいで、宮川くんが一度肩を強張らせる。
びくりと跳ね上がりそうになりながら、俺の方を振り返った。
「今の…!」
奪うように宮川くんの手からマウスをひったくる。
画像を戻し、さっきまでよりも身を乗り出して画面に食らいついた。
「…これ、転移じゃ…」
「え?」
ほんの小さな違和感。
断言するには心許ない。
明らかな異常とは言い切れず、俺はまた瞳が乾きそうなほど見開いた目でそれを凝視した。
部位は肺。
小さな子供だ。
検査中に動いてしまったら結果の精度は落ちる。
しかもその検査で「息を止めてね」なんて言われたって、子供ならうまく止められずにむしろ吸ってしまうことだってあるだろう。
だから断言はできない。
…けれど、確かに無視できない「何か」がそこにありそうなのもまた事実で…。
肺転移がないなら手術一択だけど、あるなら抗がん剤治療を優先したい。
だけどどちらにしようかと考えてちんたらしている間にも病気は進行するだろうし、手術だってやると決めてからすぐできるものでもない。
他にも順番待ちをしている患者はいるし、今から手続きをしても1か月後くらいにはなってしまう。
「とりあえず検査を追加して、転移かどうかはっきりさせよう。その間に抗がん剤と手術、どっちにも転べるように準備しておいて…」
これからの段取りを口にすると、宮川くんはまた「はい」と同調した。
そうだ、抗がん剤だ。
内科……いや、この場合は小児科か。
そっちに相談もしなくてはいけない。
白衣のポケットからPHSを取り出す。
端末内の電話帳から検索するよりも、もうすっかり覚えている番号を直接入力した方が早い。
そうして呼び出し音を鳴らすと、コールたった2回で応じた。
『はい、いふ先生のお電話です。代理で出てます』
…いむの声だ。
今外来で診察中のまろの代わりに、看護師のあいつが出ているんだろう。
相手は俺だと分かってはいるけれど、仕事中だし周りの目もあるしで、対外的な対応をしてくる。
「いふ先生に診察をお願いしたい患者さんがいるんですけど」
そう前置きして患者の名前を伝え、現状を説明した。
これから追加で検査を入れたいこと、今日の午後にはまろに薬物療法の適応を含めて判断するために診察してほしいこと。
そこまで口早に告げたとき、いむが小さく息をついた。申し訳なさそうに声が少しだけ低くなる。
『いふ先生、今日は午後から出張なので…。どうしても今日の診察ご希望でしたら、代わりの先生になると思います』
「……」
まじか。いや、そうだ。
確かに日帰り(むしろ半日)の出張の話は聞いていた。
なんてタイミングが悪い…。
まろにどうしても診て欲しかったけれど、仕方ないか。
今は一日でも一分でも惜しい。
別の先生の代診で構わない、と告げて通話を終わらせる。
PHSを机に雑に投げると、宮川くんも「…いふ先生だめなんですか…」と少し残念そうに言った。
「んー」と曖昧な返事をしながら、もう一度画像を眺める。
何度見ても結論は変わらない。
今はもっと精査と、念のために手術準備も進めておくべきだ。
「りうらに電話するか…」
手術するなら麻酔科の診察も入れなくてはいけない。
…あぁ違う、その前に追加検査のオーダーだ。
変な焦りを覚えているせいか、いつもより動き方に自分でも効率の悪さを感じてしまう。
そうこうしているうちに、投げ置いていたPHSがピリリと聞き慣れた電子音を鳴らした。
さっきいむと話してから15分くらい経った頃だろうか。小さな画面に表示された名前に目を瞠る。
そして飛びつくように耳に当て、通話ボタンを押した。
「はい」
『画像見た』
画像を見た?外来診察中なのに?
恐らくいむから報告を受け、急ぐべき案件だとは伝わったんだろう。
一人の患者の診察を終えた隙間のようなタイミングで報告してくれたいむにも、すぐに確認してくれたまろにも胸の内で感謝する。
『ないこが入れた追加検査、一旦全部キャンセルして』
「…は?」
『必要なやつだけこっちで入れるわ』
「いや、でも肺転移かどうかまずちゃんと精査を…」
『転移で間違いないよ』
俺の言葉を遮るように声を被せてきたまろに、思わず絶句する。
ごくんと息を飲んでから半拍の呼吸を置いた。
まるで深呼吸でもするみたいに。
「子供だし、検査中じっとしてられないこともあるだろ」
『あるよ。でもこれは転移で間違いない』
「お前今ちょっと画像見ただけじゃん。あの電話から15分くらいしか経ってないんですけど!?」
『明らかに転移やから。今すぐ外科で診察して家族に説明したら、こっちに回して。俺午後は外に出るから、午前中に何とか診れるようにする。一日でも早く入院して抗がん剤始められるように、手続きせんと』
「……っ」
代わりの医師じゃなくてまろが診てくれるなら、俺にとってもそれに越したことはない。
渋々といった風に「分かったよ」と言い置いて、通話を切った。
すぐにカルテに向き直り、言われるまま検査オーダーの取り消しをする。
隣で見ていた宮川くんが感心したように息を漏らした。
「…まじですか、あれを即『転移』って判断されるんですね」
「……ね」
「まぁ…こっちは小さい子の肺なんて見慣れてないですしねぇ…。餅は餅屋、ってやつですね」
小児のことは確かに小児科が一番だろう。
この分野において俺がまろに敵わないことは嫌というほど分かっている。
だけど、俺も宮川くんも最後まで迷って判断できずにいたことをこうも数分で片付けられると、悔しさを通り越して情けなくなってくる。
「…じゃあとりあえず、家族に説明しようか」
言って俺は、再びカルテを操作した。
画面を診察できるモードに移行させてから、机上のマイクをオンにする。
「花村さん、3番の診察室どうぞ」と、小さな患者のためにもできるだけ暗い声にならないように告げた。
「…何しとるん、ないこ」
その日、日帰り出張から夜遅くに戻るとないこはまだ起きていた。
デスクの電気を煌々と点け、何やら分厚い本を捲っている。
「俺の本やん。どしたん?」
ひょいと後ろから覗きこむと、小児の画像検査の見方なんかがずらりと写真つきで並んでいるページが目に飛び込んでくる。
それを視界に留めた瞬間、「べんきょーしてんだよ。見て分かんだろ」と少しだけ不機嫌そうな声が返ってきた。
ただしその不機嫌の矛先は、俺じゃなくて自分なんだろう。
「えー、なに、今日の昼間のこと気にしとるん?あんなん分からんでもおかしないよ」
「一般人には分かんなくてもおかしくないものを、いふ先生は即判断できたってことですかー。あーさすがですねーーー尊敬するわまじで」
そこまで一息に言って、ないこは唇を尖らせた。
別に本気で拗ねているわけでも悪態をつきたいわけでもないだろう。
ふんと鼻を鳴らしたかと思うと、すぐに本に向き直る。
だけど少しの間を空けた後、再び吐息を漏らす音が聞こえた。
「……やっぱ専門家には敵わねーんだな、って思ったわ」
ぺらりとページを捲る音がする。
それと一緒にないこがそんな呟きを零した。
「そらそうやろ。逆に言うたら俺らやって、抗がん剤の後に手術ってなったら外科を頼らなあかんわけやし」
「……」
「それがチームってもんやん?」
そんな言葉をもたらすと、ないこは「ん」と同意するしかなくなったようだった。
唇は尖らせたまま小さく頷くものだから、思わず苦笑してしまう。
後ろからその細い首に腕を回して、ぎゅっと抱き寄せた。
「…絶対助けような、俺らで」
「……ん」
短い返事。
だけどしっかりと芯を残していて、あの幼い患者のために全力を尽くす意志が伝わってくる。
愛しさをこめて、ぐしゃぐしゃとないこの髪を撫でまわす。
露わになったその耳に、小さく音を立ててキスを降らせた。
コメント
4件
医者パロありがとうございます…😭😭💕 非公開になったとしても記憶にはバッチリ残しております…!👍🏻 ̖́- 患者さんに真剣に向き合う青桃さんが見ていて元気づけられます😖🎶 包容力のある青さんがかっこよすぎて…帰宅したばかりで疲れ果てていましたがあおば様の作品から癒しを頂きましたっ!!> <ෆ
今回もほんとに良かったです✨️✨️ 通知来て爆速で見に来ました 一瞬の違和感でも見逃さずしっかりと検査の準備までする桃さんと、 出張中でも患者さんに何かあればすぐにチェックする青さん……医者パロでしか得られないもので、ほんとに好きです💕💕 専門家には敵わない、けど、敵うように勉強する桃さんの努力家な一面もいいですし、それを応援するような青さんのキスや頭を撫でる行動💖ごちそうさまでした🙂↕️🙂↕️ また次回も楽しみにしています!