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stpl 紫赤 様
誤字脱字注意
日本語おかしい
玄関の鍵を開ける前から、分かっていた。
今日はきっと、あの顔で待っている。
同棲して半年。
生活リズムも価値観も、少しずつすり合わせてきたけど――
こえくんが“寂しくなるタイミング”だけは、驚くほど分かりやすい。
「ただいま」
ドアを開けると、キッチンから控えめに顔を出す。
「……おかえり」
その声が、少しだけ弱い。
ああ、今日はこれだな、と確信する。
「今日は早いね」
「こえくんが先に帰ってる日だからね」
事実を言っただけなのに、こえくんは目を伏せて照れる。
その反応一つで、仕事の疲れがどうでもよくなる。
こえくんは大学生で、二十歳は超えている。
対等な恋人だし、守るだけの存在じゃない。
――でも。
こういうふうに不安を溜め込んで、
それをどう出していいか分からなくなってる時は、
どうしても放っておけない。
「どうした?」
近づいて、顔を覗き込む。
「……ちょっと、寂しかった」
ほら、やっぱり。
「また?」
そう言いながら、腰に手を回す。
言葉と行動が違うのは、もう癖みたいなものだ。
「授業終わってから、ずっと一人で」
「うん」
「連絡しようか迷って」
「うん」
最後まで聞く前に、抱きしめた。
こういうとき、言葉はいらない。
「邪魔なわけないよ」
背中を撫でると、少し力が抜けるのが分かる。
甘やかしすぎだって、自覚はある。
でも――
「同棲してるんだから、寂しくなったら言っていい」
顎を持ち上げると、不安そうな目が俺を見る。
「寂しいって言われるの、俺は嬉しい」
嘘じゃない。
頼られるのが、好きなんだ。
キスをする。
軽く、ゆっくり。
彼はすぐ目を閉じて、逃げない。
信頼されてる証拠みたいで、胸が熱くなる。
ベッドに移動して、上着とネクタイを外す。
彼は少し緊張した顔をしてるけど、
それでもちゃんと俺を見る。
「……今日、甘えたい日?」
「……うん」
素直で、可愛い。
「どれくらい?」
「……限界まで」
思わず笑った。
限界まで甘やかされたい、なんて。
そんな顔で言われたら、断れるわけがない。
「了解」
抱き寄せると、安心したように胸に顔を埋めてくる。
この距離、この温度。
全部が、俺のものだと思ってしまう自分がいる。
「……離れないで」
「離れない」
「ずっと?」
「今日は、ずっと」
欲はある。
正直、かなり。
でも、焦らす必要も、急ぐ理由もない。
首元にキスを落として、反応を確かめながら触れる。
彼の身体は正直で、分かりやすい。
「……大人の余裕、ほんとずるい」
「余裕なんてないよ」
可愛すぎて、理性を保つのが精一杯だ。
「こえ君が可愛いから」
そう言うと、拗ねたみたいに視線を逸らす。
その仕草一つで、また欲が煽られる。
「ちゃんと、俺見て」
顔を上げさせると、潤んだ目が俺を映す。
「寂しいって言ってくれるのも」
「わがまま言うのも」
「こうやって甘えてくるのも」
全部、抱きしめながら思っていることだ。
「全部、俺のだから」
独占欲だって分かってる。
でも、こえくんはそれを嫌がらない。
その先は、時間が溶けるみたいだった。
触れて、確かめて、離れなくて。
大切にしたい気持ちと、欲とが、
ちゃんと同じ方向を向いていた。
腕の中で、こえくんが静かに息を整えている。
「……重くない、僕」
「全然」
即答だ。
「むしろ、可愛い」
本心だし、何度でも言う。
背中を撫でると、猫みたいに身を寄せてくる。
「大学生で、寂しがりで、ちょっとわがままで」
「俺の恋人」
その言葉を聞いた瞬間、
こえくんの身体が少しだけ震えた。
「……明日も、甘えていい?」
「明日も、明後日も」
一緒に住むって、こういうことだ。
寂しさも、不安も、欲も、
全部共有する。
こえくんの額にキスを落として、腕に力を込める。
守りたいし、甘やかしたいし、
手放す気なんて、最初からない。
今日も同じベッドで眠る。
こえくんが安心して眠れるなら、それでいい。
それが、俺が“大人”でいる理由だ。