テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
尽くしたい相手がいて、初めてヒーローになれるものなのだと、俺は思っていた。
その相手を助けるためなら、
その相手を喜ばせるためなら、
その相手を幸せにするためなら、
何だってするのだ…………何だって。
「…………かなり独善的な考えだよね、それ」
イヴァンが言った。
「それってつまり、その相手に尽くしている自分に酔いしれているわけじゃない。つまりナルシシズムだよ」
「っ、そんなつもりは……誰かのために尽くすことは、良いことじゃあないのかい?」
「周りを省みていないんだよ。そもそも自ら何か行動を起こすことと、それで何かが犠牲になることは必ずセットなんだからね。場合によってはそれこそ、尽くしたい相手が傷付くことさえあるんだよ」
「でも、彼は……菊は、俺のやったことを赦してくれたんだぞ」
「赦した代わりに……君のやることなすことの犠牲になったんじゃないの?菊くんは」
痛烈に心に突き刺さっていく、彼の言葉。あまりにも「その通り」だ。俺はすっかり悄気てしまった。
「なぁイヴァン、君にとって……『ヒーロー』って、 何なんだい?」
「…………欲望の権化。それ以外無いかな」
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!