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リビングには、やわらかい照明と、夕食の支度の音が響いていた。
ソファの上では、毛布に包まれたみことが小さな寝息を立てていた――が、ふと、その瞼がぴくりと動く。
「…んっ……すち……?」
小さな声でつぶやきながら、みことはゆっくりと目を開ける。
見慣れない天井、そして自分の横にいない大好きな人。
辺りを見回しても、すちの姿はどこにもない。
「……すち……いない……」
途端に、目の奥に熱いものがこみ上げてくる。
小さな手が毛布を握りしめ、唇が震える。
「……すち……どこ……」
ぽろぽろと涙が溢れ、みことは声を押し殺しながらすすり泣き始めた。
その様子に、キッチンにいたこさめとひまなつがすぐに気づく。
「みこちゃん? どうしたの?」
こさめが慌てて駆け寄り、ひまなつもしゃがみ込む。
「……すち、いないの……」
涙声で呟くみことに、こさめは優しく微笑みかけた。
「だいじょうぶだよ、すっちーはすぐ戻ってくるって。ちょっとだけ、お風呂に入ってるだけだから」
ひまなつも続けて、やわらかい声で言う。
「泣かずに待ってたら、すちに“えらいえらい”って褒めてもらえるかもな〜?」
その一言に、みことの涙が一瞬止まる。
まつげに残る涙の粒が、かすかに光る。
「……えらいえらい……?」
「そうそう!」
こさめがにっこり笑って頷く。
「泣かずに待てたら、“みこと、すごいね”って頭なでてもらえると思うよ」
みことはぐしぐしと目をこすり、まだ涙の跡が残る顔で小さく頷いた。
「……がまんする……」
そう言って、ひまなつの服の裾をぎゅっと握る。
その小さな手に力がこもっているのを感じ、ひまなつは思わず頬を緩めた。
「えらいなぁ、みこと。すごいよ」
「ほんとえらいえらい、がんばってるね」
二人が口を揃えて褒めると、みことは照れたように顔を伏せ、目を潤ませながらも小さく笑った。
「……すち、よろこぶ…?」
「もちろん。すっごく喜ぶよ!」
こさめが髪を優しく撫でると、みことは安心したように深呼吸をした。
まだ少しだけ不安げな表情を残しながらも、泣かずにじっと我慢して、すちの帰りを待つ小さな背中は、とても健気だった。
リビングの隅で、いるまとらんは静かにその光景を見守っていた。
ソファの上で、ひまなつとこさめに優しく抱きしめられながら、泣くのを我慢している小さなみこと。
その頑張る姿に、二人があたたかく見守っている。
「……なんだこれ……」
いるまが思わず頭を抱え、思わずため息をつく。
「なつとこさめ……可愛すぎる……」
らんも隣で同意し、軽く頭を振る。
「……なんで俺たちはこんな目の前で悶えることになるんだ……」
二人は、ソファの上の小さなみことと、それを優しく見守るひまなつとこさめの姿を見つめながら、静かに悶えていた。
「……いや、可愛すぎて、もうどうにかなりそう」
「ほんとにな……」
あまりの可愛さに頭を抱え、リビングのあたたかく幸せな雰囲気に心を溶かされる――。
静かに見守る二人の背後で、みことはまだ小さな手でひまなつの裾を握り、健気に我慢を続けていた。