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安堵もつかの間、フェリックスたちは急いでエマとゲンを探し始めた。
そのころ、救急隊や警察、そして消防隊が続々と現場に到着し、混乱が増していった。
突如、奥から声が聞こえた。
「ゲンがいるぞ!」ロイズが叫んだ。皆の視線がその方向に集まると、
ゲンがエマを抱えて姿を現した。ゲンは肩で息をしながらも、
にやりと笑って言った。「ロイズ…建物さら壊す気かよ…」
ロイズは申し訳なさそうに頭をかいた。「すまない、これしか思いつかなかった」
その瞬間、救急隊員たちが駆け寄り、ゲンとエマを救急車に運び込んだ。
カオリもエマに寄り添い、一緒に救急車に乗り込んでいった。
ロイズは周囲を見回しながら言った。「それにしても動物たちはどこへ?」
フェリックスは少し考え込んだ後、
「おそらく、昨日の夜に安全な場所に移していたのでしょう。
エマはもしかすると、自ら命を絶とうと計画していたのかもしれません。」
ロイズは眉をひそめ、「ゲンにあんな冷たい態度をとったのは、そのためか」とつぶやいた。
フェリックスは救急車が去っていくのを見送りつつ、「そうかもしれませんね」と答えた。
その後、ゲンは順調に回復したものの、エマは全身に大やけどを負い、
意識が戻らない状態だった。フェリックスとワトリーは
病院にいるゲンとエマを見舞いに訪れていた
病室のベッドで横たわるゲンは、二人の姿を見つけて微笑んだ。「よう、フェリックス、ワトリー。」
ワトリーはすぐに駆け寄り、「ゲンさん、よかった!もう平気なのだ」と嬉しそうに尋ねた。
ゲンは優しくワトリーの頭を撫で、「もう平気さ。心配かけちまったな」と答えた。
フェリックスも近づき、「無事でよかったです」と安堵の表情を浮かべた。
しかし、ゲンは少し目を伏せ、「でも、エマはまだ…」と声を落とした。
ワトリーとフェリックスは、エマの様子を見に行くことにした。
病室に入ると、エマは包帯で全身を包まれており、静かに横たわっていた。
その姿を見て、ワトリーは手を握りしめ、優しく語りかけた。
「心配しないで。きっと元気になるから、一緒にがんばるのだ」
しかし、エマからの返事はなかった。彼女の静かな呼吸だけが病室に響いていた。
ただ、彼女のまぶたがかすかに動き、手がわずかに温かさを感じた。
この小さな反応が、エマがまだ闘っている証だと思わせた。
フェリックスはワトリーの肩に手を乗せ、静かに言った。
「きっと大丈夫です。私たちが信じてあげましょう」
ワトリーも涙をこらえながらうなずいた。
病院の窓から差し込む朝の光が、少しずつエマの顔を照らしていた。
その光は、彼らの希望と祈りを象徴するかのように、静かに輝いていた。
病院を出ると、フェリックスとワトリーは重たい足取りでサーカスの劇場へ向かった。
本来ならここでサーカスが行われ、子供たちが笑顔で歓声を上げながら見ているはずだった。
ピエロが風船を配り、動物たちが演技を披露する光景が思い浮かべられる。
しかし今は警察のテープが張られ、奥の小屋は焼け焦げて一部が崩れ落ちていた。
焦げ付いた木の残骸や煙の匂いが鼻をつき、地面には煤が積もっていた。
現場にはジョセフとポテトがいた。ジョセフがフェリックスに気づき、
「よう、フェリックス、何か用件か?」と声をかけた。
フェリックスは、深刻な表情で答えた。「ジョセフ、一緒に来てくれないか。」
ジョセフは、少し驚いた様子で、「まだ何かあるのか?」と尋ねた。
フェリックスは、悲しげな表情を浮かべながら、「確かめたいんだ」と言った。
それを察知したジョセフは、「いいだろう」と承諾した。
彼らはある部屋に着くと、フェリックスがノックをした。コンコン。
中から返事が聞こえ、ドアを開けると、ロイズが荷物をまとめていた。
フェリックスは尋ねた。「ロイズ、どこかに行くのですか?」
ロイズは荷物を鞄に詰めながら、「ああ、もうここのサーカス団は解散寸前だろう。
他のところに移籍する予定さ。僕ならどこのサーカス団でも雇ってもらえるからね」と言った。
ワトリーは必死に訴えた。「せめてゲンさんが帰ってくるまで待ってほしいのだ。ゲンさんはまだ諦めてないのだ。」
ロイズは少し困った表情を浮かべ、「ごめん、ワトリー。僕、すぐに行かなきゃ」と答えた。
フェリックスは、ロイズの前に立ちはだかり、鋭い目で問いかけた。「それは誰の提案ですか?」
ロイズは一瞬目をそらし、「な、何言ってるんだ。これはボクの意思だ
団長もあれから姿を見せないし、もうここにはいられないだろう」と動揺した様子で答えた。