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出会ったことがない二人を出会わせたかっただけのお話
「ホットドックいかがっすか〜」
レギオンに響き渡る、少し気怠げな声。
ホットドックと言いながらも、アメリカンドッグの服を着ていることはもはや誰もツッコまない。
ホットドックとスムージーを作りながら声を掛け、人が寄ってきたらなるべく多くの商品を売りつける。
それが、何もすることがない鯵屋にとっての暇つぶしであった。
人通りも少なくなってきたので、そろそろ閉めるか場所移動しようかと思っていた時、一人の男が近付いてきた。
少しでも多く稼ごうとする鯵屋は、その機会を逃さない。
「お兄さんホットドックいかがっすか?」
「ん?あぁ、売ってくれる?」
「もちろん!どんくらい要ります?」
「じゃあ……ホットドックとスムージー、10・10で」
見覚えのない男の慣れた注文に、鯵屋は少し興味を持つ。
「見かけない顔ですけど、注文慣れしてますね」
「……この街から離れて、ちょっと隣街に行ってたんだよ」
「へぇ、そうなんですか」
問いに答える男の声に警戒心が混じっていることに、鯵屋は気付いていた。
この街の住民が見知らぬ住民と会話するのは、珍しくない光景だ。
だが、その会話に対して警戒心を持っている人間は珍しい。
さらに鯵屋の興味がそそられる。
「俺が街に来たの、最近ではないんですけど、お兄さんが隣街行ったのってだいぶ前ですか?」
「そうだねぇ、2年前とかじゃないかな」
完成したホットドックを手渡すと、その場で食べ始める。
警戒してはいるものの、会話を続ける気はあるようだ。
「この味は変わってないんだね」
「顎が外れるくらい硬いバンズが特徴らしいです。俺も先輩?からの受け売りなんですけど」
「ふーん……」
ホットドックはものの数分で男の胃袋へと入っていってしまった。
満足そうにスムージーをすする姿を、鯵屋はぼんやりと眺める。
「そういや君の先輩とやらはさ、ロボロボしててたまに人間になる奴?」
その質問に鯵屋は少し眉をひそめる。
「……ロボットさんの知り合いですか?」
「そーそー、知り合い。あ、別に怪しいもんじゃないよ?君と面識が無いってだけで」
へらりと笑った男は、おもむろに懐へ手を入れ、一通の封筒を取り出した。
「これ、君の先輩に渡しといてくれる?」
─────────
「ロボットさーん」
聞き慣れた声と呼び方に、ケインは後ろを振り返る。
そこには、ホットドックパーカを着た鯵屋が近づいてきていた。
「どうしましたか?」
「これ、ロボットさんにって」
差し出されたのは、白い封筒。
端に、桜の花びらとうさぎが型どられたスタンプが押されている。
裏に書かれていた差出人は、『Rader Yojiro』。
「……どこでこれを?」
「ホットドック売ってたら、お客さんから渡されました」
「あの人が渡したにしては、随分可愛らしいのが押してありますね」
スタンプの跡を指でなぞる。
似合わないスタンプだ。
その場で中身を確認すると、近況に変わりないことが分かる。
長期間便りを寄越さなかったにしては、あまりにも短く締め括られていた。
短い手紙を読み終わると、鯵屋は内容が気になるようで顔を覗き込んでくる。
「なんて書いてあったんです?」
「ここで話すより、皆さんに見せてから話しましょうか」
「あの人に、お返しでも書きましょう」
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