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「えっ!!?」

「最近、風見さんがBOM社の営業さんと、飲み屋に入ってくのを見たことがあって」

「……」

「ライバル社同士であんまり会食なんてしないから、不思議に思ってたんだけど」

「……スパイってこと?」

そんなかんじかな、と篤人はドサっとベッドに後ろ手をついた。

「でも、機密情報はパスワードでロックされてるでしょ?」

「そう。見られるのは、社長と各部署の部長のみ」

「……その中に?」

「そう思ったんだけどもしかしてと思って、わざと美濃さんに、以前の商品データを参考にしたいんだけど部長がなかなか見せてくれないって話したんだ」

全くの嘘だけど。と篤人は続ける。私はごくんと唾を飲み込んだ。

「社長からパスワード聞いてるから、いつでも私が出しますよ、だって」

燎子は社長のお気に入り。さまざまな調べ物や、雑務をする上でパスワードを知ったのだろうか。だとしても漏洩はかなりまずい。

「えっ……じゃ、じゃあ」

「2人で共謀してるんじゃないかと思ってる」

「うそ、でしょ」

「最近、営業先でも聞かれることが増えておかしいと思ってたんだ」

営業先で、うちより安価で似たスペックのBOM社製品を検討していると言われることが多くなり、不思議に思っていたと篤人が話す。

「で、でもそんなことしたら……」

「クビじゃすまないだろうね。損害賠償請求されてもおかしくない」

あまりにリスクの高い行為に、本当にそんなことするのだろうかと疑問がわく。

そうはいっても似た商品が、短い期間に次々と売り出されているのは事実だ。

そのうちのひとつは商品開発に時間がかかったもの。やっとのことで発売にこぎつけた商品で、構造まですべて同じとなれば設計書からなにから全て向こうにわたっていることになる。

「営業部の部長には今朝報告しておいた。午後には機密情報のパスワードを変えたと本部から連絡あったみたい」

「……うん」

「犯人探し以前に漏洩をとにかく止めないと」

「……」

「うまくいけば、そのモニター参加の会議で全部ケリつけられるかもしれない」

会議は、社長も同席する。すべてのキャストがそろい踏みだ。

「モニターさんたちが帰ったら、話を出してみようと思う」

根回しだけはしておくつもりと篤人は言う。

「でも、証拠は?」

「美濃さんとの会話はボイスレコーダーで録音しておいた。あとはBOM社の方に風見さんと裏取引していたことを確かめられればなんとかなる」

「それだけで、証拠になんてなるの?」

あとはこれかな。と篤人はスマホを取り出して、写真を見せてくれた。

そこには、週刊誌さながらのアングルで、伊吹とスーツ姿の男性がお店に入っていく姿が写っていた。

「隠し撮り。けっこううまいでしょ」

「……すごっ」

このスーツの男性が、どうやらBOM社の営業さんらしい。篤人は大きな展示会で名刺交換をしたことがあって、顔を知っていたそうだ。「大丈夫。証拠を出さなくてもきっとあの2人は自滅してくれるよ。俺に任せて」

にこにこと笑う篤人の顔はなんだかちょっと怖いような気がする。

「復讐、終わらせよう?」

「うん……」

「美濃さんが、花音に執着する理由も知りたいって言ってたよね」

以前篤人にそう話したのを思い出して、こくんと頷く。

「……知りたい。なんでここまでするのか」

「本当にいいの?」

「うん、いい」

それで私が傷つくことになったとしても、その理由を知りたいと思う。そこまでしないと、きっと燎子はまた私に復讐の刃を向けるだろう。

「会議のことは、俺に任せて。花音はいつも通り参加してくれればいいから」

「わかった」

「美濃さんは、花音を陥れるつもりでくるはず。だいいち、モニターがきちんと集まるなんて思ってない」

燎子はまだ会議の日程を、篤人の妹さんやその友達に連絡していないのだという。あと2週間しかないのにそんなことはあり得ない。もちろん篤人が連絡してくれたので、変更なくモニターさんも参加しての会議は開かれる。

「よく聞いたら、友達じゃなくて大学時代のちょっとした知り合い程度なんだって。美濃さんにはだまっておいてくれって頼んであるから大丈夫」

「……いよいよ、だね」

「契約はきちんと履行するから」

「ねぇ……篤人、契約満了のあとはどうするの?」

私は、じっと篤人の瞳を見つめてそう話した。もう復讐なんてこの際どうでもいい、燎子が私にこれから何を仕掛けてこようともう何も思わない。

「花音はどうしたい?」

「……私は」

篤人がそばにいてくれればそれでいい。その気持ちを瞳の奥に孕ませて、じっとお互いを見つめ合った。

「私は、契約が終わってもここにいたい」

「それ、ほんと?」

私は小さく頷いて、篤人の手をぎゅっと握った。「花音。全部終わったらちゃんと話そう」

「契約更新について?」

「いや、そうじゃなくて」

ぎゅっと抱き寄せられて、彼の匂いでいっぱいになる。

蜜音の花が開くとき~復讐のためにイケメン後輩と夜のサブスク契約結びました!?~

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