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「ジジ!一緒に帰ろ!」
授業が終わり帰りの支度をしていたところ、モモに声をかけられる。モモから一緒に帰ろうと誘うなんて珍しいな。いやとても嬉しいんだけど。いつもはオカルンと一緒なのに。
「うん、大丈夫だけど…オカルンは?もしかして喧嘩でもした!?」
案の定だったようだ。モモは目を逸らし、苦笑しながら
「うん、まあ喧嘩っていうか。ちょっとね」
と答えた。
そこで俺は、申し訳ないが少しの期待を抱いてしまった。オカルンと喧嘩中…つまり、俺に乗り換えるチャンスがあるってこと…?
オカルンは俺の友達であり、モモの大切な友達。そしておそらくオカルンはモモが好きだ。多分モモもオカルンが好き。本来、友達の恋なら応援すべきだと思う。でも、それが俺には出来ない。
なんてったって、俺もモモのことが好きだからだ。昔から、ずっとずーっと。だからこそ、オカルンには譲れない。申し訳ないけど。
でも俺はふざけないとまともにモモと話せないし。それに、俺は過去にモモに酷いことをしてしまった。そんな俺と比べ、オカルンは良い奴だ。うん、男の俺から見ても。悔しいけど。そして2人は両思いで、俺のモモへの気持ちは一方的に過ぎない。こんな恋愛、諦めた方がいいのかもしれない、その方が楽になれるだろう。けれど俺はそんな簡単に敗れる男じゃない。いつかモモと…。
ふと、ツンツン、と肩をつつかれ身体がびくりと跳ねる。
「ジジ?どうしたの?眉間に皺寄せちゃって。早く帰ろーよ!」
「あっ、ううん。なんでも〜…じゃ、帰ろっか」
帰り道、「寒いから」と理由をつけ、モモの手をぎゅっと握る。突然のことに驚きながらもしっかりと握り返してくれた事に、どれだけ嬉しかったかモモは知らないだろう。
余韻に浸っていたのもつかの間、モモはゆっくりと口を開け
「…ジジ、どうしたらオカルンと仲直りできるかな」
そう俺に問いかけた。俺は少し間を置いて
「んー…まあ大丈夫だよ、モモ達なら。絶対仲直り出来るって」
「そう〜?うーん…」
仲直りなんてしなくていいじゃん。このまま俺の所においでよ。
なんてことは口が裂けても言えなくて。
ふつふつと嫉妬心が湧き上がり、俺はモモの手を両手で包みモモの瞳をじっと見つめる。
「…モモはどうなの?オカルンのこと、好きなの?」
ああ、聞いてしまった。聞くべきではなかったかも。
途端にモモの顔は真っ赤になり手を降り払う。
「はぁぁぁ!?そそそんなわけないだろがい!あんな…!」
「…っ、じ、じゃあさ、俺と…」
そう言いかけた時、ドドドドと音を立てながらものすごいスピードで近づいてくるものを目にした。
「綾瀬さぁぁぁん!!」
「「オカルン!?」」
そう、その正体。それはオカルンだった。オカルンはぜぇぜぇと息を切らしながらこちらに近づいてくる。
「はぁ、はぁ、あ、綾瀬さん…探したんですよ…!なんでジジがいるんですか?綾瀬さん!」
オカルンはモモを俺から奪うように引き寄せ、肩を掴む。
「べ、別に良くね?オカルンに関係ねーじゃん!てか!もう話さないって言ったじゃん!どっか行け!」
抵抗する割にはモモの顔は赤らんでいる。それに嫌がる素振りも見せない。
「関係なくありません!それと、今日のこと、謝らせてください…このままだなんて自分、耐えられないです…」
モモは目を逸らし、恥ずかしそうに前髪をいじる。
「……っ、あーもー…う、ウチも悪かった…ごめん」
「は、はい、自分こそ…すみませんでした…」
2人で顔を合わせ、しばらく見つめ合いおかしそうに笑う。
俺はそっとその場を去った。和解出来たのは良かったこと、だと思うが…なんだかなあ…。
でも油断するなよ、オカルン。俺はまだ諦めない。いつか絶対、必ずモモを振り向かせて見せるから。心の中でそう決心した。