急いでマンションに行った2人はインターホンを押しても出てこなく電話をした。スマホの着信音が、涼ちゃんの部屋の中からかすかに聞こえた。若井と元貴は顔を見合わせる。
「中にいる……!」
元貴は急いで管理人さんに事情を話し、
合鍵を借りてドアを開けた。
玄関の扉を開けると、
リビングの窓が開いていて、カーテンが大きく揺れている。
風が入り込み、紙が散らばっていた。
「涼ちゃん!!」
若井が真っ先に走る。
窓の先――
涼ちゃんはベランダの端のほう、
外をぼんやり見つめながら立っていた。
足場の上
元貴が叫ぶ。
「涼ちゃん!動くな!危ないって!」
若井が駆け寄ろうとしたが、
焦って足をもつれさせ、転んでしまう。
「っ……!」
元貴が振り返り怒鳴る。
「若井!!早くしろ!」
若井は痛む膝を押さえながら必死に立ち上がり、
涼ちゃんへ手を伸ばす。
涼ちゃんはゆっくり二人を振り返る。
その表情は――
涙をこらえて無理に笑おうとしているような、
そんな危うい静けさだった。
「……なんで来たの。」
声はかすれていて、
今にも崩れそうだった。
コメント
1件
一気にこんなに読んじゃっていいんですか?ありがとうございます✨