「まだ信じない?オレのこと」
「信じるも何も、早瀬くんのこと全然どんな人か知らないし、何も始まってもいない」
だよね。
あなたはきっとどんなヤツかわからないような男信じるはずないよね。
いや、まだこのオレでさえ信じようとはしてない。
「・・・そう」
思わず静かにそう呟く。
なら、どうすればいい?
彼女にオレを信じさせるにはどうすれば?
彼女を諦める選択だけはオレにはないから。
だから、どうやって彼女に心を開いてもらうか。
オレは彼女の為に、何が出来る・・・?
「なら・・・、まずオレを知ることから始めればいい。それなら抵抗ないでしょ?」
まだ信じられないなら、少しずつオレを知ってくれればいい。
抵抗がないところから始めればいい。
オレがどれだけあなたに真剣なのか、これから伝えていくだけだから。
「・・・え?」
すると、彼女は意外そうな反応を見せる。
きっと彼女のことだから、それでオレが引き下がるとでも思っていたのだろう。
諦めるはずないじゃん。
「これからオレのこと知っていって? オレがどういう男か」
オレを知ればわかるよ。
「なん・・で?」
どれだけあなたに突き放されたところで、オレはそんなのなんてことない。
「ん?これからオレを知ってくれたら。きっと、その理由がわかるはずだから」
だって、きっとそのあなたの言葉はどれも本当の言葉じゃないと思うから。
だから、あなたもきっとオレを知ってくれたら、オレの本当の気持ちもわかるはず。
まだ全部はあなたに話せないけど、でもオレのあなたへの気持ちは絶対本物だから。
「どう?」
まだ素直に頷かない彼女に優しく問い掛ける。
無理せずオレとの距離をあなたなりに計ってくれればいい。
「わかった・・・」
すると、彼女がようやく受け入れてくれた。
「マジで!ホントに!?よかった~!」
あまりの嬉しさに素直に大喜びしてしまう。
いや、だってまずはそこだけは受け入れてもらわないと、スタート地点さえも立てやしない。
「なら。これからオレから離れようとしないで」
だけど、彼女がまだ全部心を開いたワケではない。
またいつ彼女が心変わりするかわからない。
だから、オレはもう少し彼女の気持ちを確認する。
「仕事仲間だから・・・それはわかってる」
「仕事仲間・・・ね」
まぁそうだよな。
彼女は基本仕事で考えるか。
そんな意味で言ったワケじゃないのに。
「何・・・?」
「いや・・・。これから大変そうだなって」
やっぱり彼女にはきっとちゃんと言わなきゃわからないんだろうけど。
だからオレを信じられないし自信もないんだろうけど。
「ふふっ。私と仕事するのめんどくさくなった?」
すると、オレが言った言葉を違う意味で捉えた彼女。
まさか。
そんなはずないでしょ。
「じゃ、なくて。これからオレのこと知ってもらうのが」
「・・・え?」
まずはそこからか。
この人にはなかなかオレの気持ちは伝わらなそうだ。
「どういう意味?」
「・・・きっとこれからオレを知っていけばわかるよ。オレのすべての言葉が」
そう。
時間がどれだけかかってもいいから、少しずつオレを知っていって。
そうすればわかるはず。
もどかしく思っているこのオレの気持ちも。
だけど、そんな少し天然なところも可愛く思ってるところも。
オレがあなたへ向けるすべての気持ちが、すべての言葉が。
いつかきっとあなたに届くと信じているから。
「・・・何それ・・・」
だから今はまだそのままでいいよ。
ゆっくりあなたから歩み寄って来てくれればいい。
オレを知ってそれから同じように歩幅を合わせてくれればいい。
それまでは、あなたを待ってるから。
「じゃあ、オレ行くわ」
そろそろ会社へ戻らないと。
ついこのまま長居しそうになった。
「え?もう帰るの?」
すると嬉しい彼女の反応。
「あぁ、うん。望月さんに会いたくて来ただけだから」
「・・・え?」
「ここに来れば会えるかなと思って。仕事の途中で抜けて来た」
よかった。やっぱりここに寄って。
「え、会社までまた今から戻るの?」
「あぁ。今日中に片付けたい仕事あるし」
「なんで、そんなめんどくさいこと」
「面倒じゃないよ。今日中に話したかったから。どうしても」
あなたへすることはオレにとってどれ一つ面倒なことなんてない。
「ここにいなかったらどうすんのよ・・・」
ホントそしたらガッカリはしてたけど。
「どうしただろうね~。思い当たるとこ探し回ったとか?」
でも、よく考えたら修さんに電話したら彼女いるかわかったのか。
「私のこと何にも知らないくせに」
「・・そうだね。でも。ここにいる気がしたから」
今日はそういうことも思い浮かばなくて、なんかここに来たら彼女に会えそうな気がしたから。
「それ・・だけ伝えに来たの?」
「そっ。だから会いたいから来たって言ってんじゃん」
ただあなたに会いたかったから。
ただそれだけ。
「な・・に、それ」
「じゃあね。また」
「あぁ、うん」
今はここまでで満足。
彼女に嫌われない距離を保つことが大事。
だけど今日のオレの言葉で彼女にどこまで伝わったのか。
少しでもこのオレの気持ちに気付いてくれてればいいけど。
一つ一つのオレの言葉すべてに、ちゃんと意味があるということを・・・。
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