pn
夕方17時頃。
家を出た瞬間に夜の匂いが体にまとわりついて胸がざわつく。
この街にはまだ慣れてない。
そもそも慣れたくもない。
けど今はこれで食ってくって決めたからやらなければいけない。
歩く足だけは止まらない。止めてはいけない。
店の光が遠くからでも浮いて見える。
カランと軽くオシャレな扉を開けた瞬間空気が変わる。
甘いアルコール。
つくられた笑顔。
仕事の顔。
俺もそれをつくる側に入っちゃったんだなって思って小さく息を吐いた。
こんなとこで働くなんて思いもしなかったな。
…
控え室で先輩たちが軽く声かけてくれる。
それに軽い作り笑いと会釈と返事をして出勤のために身だしなみを整える。
でも目線はあの人を探している。
今日はまだ来てないみたいだなって思って安心しようとしたその瞬間_
_背後から少し低めの声が落ちてくる。
rd「おつかれ~もう来てたんだ」
rd「仕事熱心でえらいね~新人くん」
ふっと肩が跳ねたのが自分でも分かる。
なんでこんな一声で緊張すんだよ。
そう思いながら思いながら振り返るとそこにいるのはこの店のナンバーワンホストのらっだぁさん。
落ち着いてるのに柔らかい目。
それでも特別優しそうなわけではない。
奥深くに潜んでいる何かが所々から溢れている。
きっとナンバーワンって肩書きのせいだけじゃない。
彼の視線ひとつで空気が動くのを感じる。
pn「おつかれさまです。今日もよろしくお願いします」
rd「そんな固くしなくていいよ~俺ら一緒に働いてんだから」
自然と出てくる敬語に対してふっと軽く笑ってそう言った。
彼に物を言われるたびに鼓動が変になる。
夜の街には慣れられたとしてもこれには慣れる気配がない。
…
営業が始まる。
俺はぎこちない笑顔でお客さん相手に口を動かす。
笑われたりいじられたり。
新人だから仕方ない。
でも … 、
ふっと見ると少し離れた席でらっだぁさんがこっちを見ている。
それもただ見るだけではない。
見守っている .. みたいな。
俺が目を合わせると柔らかく笑うから、そのせいで 胸の奥で何かが崩れそうになっている気がした。
そんな気持ちを誤魔化すみたいに声を張って、 テンション上げ、 言葉選ぶ。
それでも視界のどこかにあの人がいるだけで呼吸が浅くなる気がしている。
…
夜が深くなってくにつれて店内も落ち着く。
電車がなくなる頃には最初の喧騒が嘘みたいに静かになっていた。
お客さんもぽつぽつと帰っていき、客はいなくなっている。
俺は片付けを手伝うみたいな空気で客席にあるグラスを運んだりテーブルを拭いている。
そのとき。
らっだぁさんがふっと近づいてきて、 視線の高さを合わせるみたいにおれの顔を覗き込んでくる。
rd「疲れた?」
pn「いや 大丈夫です…まだ新人だし」
いつもの笑顔をつくる。
この人には隙を見せたくない。
だから余裕があるように見せる。心はこんなに騒がしいのだけれど。
らっだぁさんはふっと喉を鳴らして笑う。
なんだか… 嫌な予感というか。
ドキッとする方の予感のようなものを脊髄から感じた。
rd「ぺいんとって余裕あるね」
rd「まぁ .. そんなフリしても俺にはお見通しだよ?」
胸を掴まれたみたいに呼吸が止まった。
もう訳が分からない。なんでこの人には全てがバレてしまうのか。
視線をそらすしかできなかった。
pn「……隙を見抜かれたくない … からッ、」
声が細くなる。
言った瞬間に後悔する。
しまった、やってしまった。
伝え方おかしい。どうせこの人の事だから
rd「好きを見抜かれたくない..ってこと?」
ほらやっぱり。
分かっていたはずなのに心臓が跳ねる。
視界が一瞬白くなる。
やめて、やめてほしい。
そんな簡単に核心突くようなことしないで。
pn「…ちが…う そういう意味じゃなくて…」
まともに言い返せない。
動揺を隠せなくて舌が回らない。
もう余裕のフリなんか出来てない。
rd
店内の音がほとんど消え、 残ってるのは氷が溶けるかすかな音とぺいんとの 呼吸だけ。
その呼吸が 俺に気づいてちょっと早くなるのが堪らなく愛おしい。
彼の元へゆっくりと歩み寄る。
逃げられない速度。
追い詰めると分かってても近づきたい速度。
そこでぺいんとが片付けの手を止めて後ろを 振り返る。
怯えてる。 けどその瞳は俺を離せていなかった。
ほんとかわいいなぁ … 。
rd「ねぇ」
その一声だけでぺいんとの肩が震える。
こんなに反応するようになったの?
今日だけでどんだけ俺に落ちてんだよ、って 胸の奥で笑いそうになってしまう。
近づくとぺいんと が後ずさるものだから一向に距離が縮まらない。
それでもソファに軽く彼の脚が当たって、その瞬間に あって顔をした。
この瞬間。
ここを逃すわけない。
腰を軽く押して ソファに座らせる。
ぺいんとはびっくりして息呑んで、そのまま 喉がつまって声が出てない。
膝を一歩落とす。
ぺいんとの足の間に。
わざとゆっくりと沈んでいく。
壁に手をついて。
視界を塞ぐ、 逃げ道を塞ぐ。
ここからは逃げられないと言うように。
rd「どこ行くつもり?」
そう呟くと、ぺいんとののまつげが揺れる。
涙の膜がうっすらできて、 唇がかすかに開いて口をぱくぱくしていた。
それすらも俺を誘ってるみたいで、理性を保つために も俺は笑うしかなかった。
触れてないけれど彼が 息を詰めてるのが分かる。
この距離だけで彼はもう限界らしい。
rd「そんな顔しないで」
rd「もしかして誘ってる?」
pn「さ…そって…ない…//」
声が細い。 喉がひっかかって 言い切れない。
その様子が今日いちばんかわいい。
耳に触れるか触れないかの距離まで顔を近づける。
その境界、 ぺいんとの 呼吸が落ちていく。
んふ、さっきまであーんなに余裕ぶっこいて生意気言ってたくせに、さっきまでの威勢はどうしたんだろうね♡
ナンバーワンの先輩に詰められて、逃げ道ぜーんぶ塞がれたら顔真っ赤にして涙目になっちゃって。
rd「余裕のふりなんてもうできないね♡」
pn
こんな距離。
ほんとにむり … 頭が回らない。
呼吸の仕方が分からなくなる。
らっだぁさんの手がすぐ横の壁について、 その影に包まれ、ここからは 逃げられないのだと 本能が先に理解する。
座らされたソファ、 脚の間に入ってる彼の膝、 見下ろされてる位置。
全てが暑くて溶けてしまいそう。
目合わせられないのに。
合わせろって吸い寄せられるみたいで、 何してんの俺って心の中で叫んでいるけれど 身体がぜん彼に向いてく。逆らえない。
rd「なんでそんなに震えてんの?」
pn「……知らない…もぅ… ッ /// ぐすヾ」
知らなくなんかない、本当は 分かっている。
全部この人のせい。 全部らっだぁさんにされてること。
心臓の音が今までにないくらいうるさすぎて きっと彼にも聞こえている。
頬が熱くて、 涙が落ちそう。
彼の細く白い指が俺の顎の近くまでそっと伸びる。
触れる前に逃げたくなるのに。
逃げたら掴まれるって分かって逃げ出せない。
rd「んふ .. 抵抗すればいいのに 笑ヾ」
rd「隙、見せたくなかったんだっけ?」
その言葉で胸がぎゅっと痛む。
刺されたみたいに。
その言葉があまりにも図星すぎていた。
pn「…だから…言いたくなかったの…//」
rd「好きを見抜かれたくないって?笑ヾ」
心臓が跳ねて、 息が止まって、 喉から熱いのがこみ上げてくる。
やめてって言いたいのに。
声が出ない。
目が潤んで 視界がぼやける。
もう逃げられない。
らっだぁさんが顔を傾けて、俺の 耳にゆっくり落とす。
rd「こっそり抜け出してさ…」
rd「俺といいことしよう..?♡」
甘ったるい声と俺の首やら体を撫で回す手。
そしてこの人特有の独特な香水の香り。
その全てで火花が弾けたように脳が真っ白になって 身体がびくりと跳ねる。
ダメだって頭では思っているけれど 反応だけが先に落ちていくを
pn「……や…らぁ ッ……む、り……// 」
声がかすれてる。
泣きそうになってる自分が分かる。
rd「むりじゃないよ」
低い声が喉に落ちて 背筋がぞくっとする。
少しでも気を抜いたら俺の頭を撫でる彼の手、彼の全てに落とされてしまいそう。
rd「ここまで追い詰められて、俺の顔まともに見れてないのに … 笑ヾ」
rd「そこで嫌々言うの無理あるでしょ笑ヾ」
言葉がねっとりと絡んでくる。
逃げ場がない、もうなにも 考えられない。
彼の指先が頬に触れそうで 触れない距離をうろうろする。
その焦れったさだけで泣きそうになってしまうを
rd「あはヾ ぺいんともう落ちてんじゃん♡」
pn「……っ…や…め……//」
そうは言いながら彼の服の袖を弱く 掴んでしまっている。
拒否でも反抗でもなく、ただ彼に 縋るみたいに。
そんな自分に気づいてミリ単位にも残っていない 余裕なんてものは全部溶けた。
rd
pn「らぁ ッ ….. 」
ぺいんとの指が俺の服を掴んだ瞬間、 終わったな、なんて思う。
彼はもう完全に俺に落ちてる。
涙目で 息乱して、 震えて 俺の名前呼んで。
rd「逃げないのえらいね」
おれがそう囁くとぺいんとの方が 小さく震えて、目からは 涙が一粒落ちる。
それを見るだけで胸が熱くなるのを感じた。
rd「そのまま全部俺に預けてよ」
ぺいんとが拒否の形をしながら 拒否になってないのも よく分かってる。
rd「ねぇ、ぺいんと?」
耳元でただただ低く甘く彼に囁く。
とどめを刺すように、もうその目に他の人を映させないように。
rd「もう俺から逃げられないね♡」
その瞬間。
彼の身体からふっと力が抜けた。
その拍子に堕ちた音がして、 目がとろんとし、 完全に俺に溶けていく。
その顔が どうしようもなく 愛しくて、 支配したくて、 抱きしめたくなる。
pn「うん … ♡」
紋白蝶のように華奢で白い彼の透き通った首筋を噛んだり吸ったり、俺のものだという印を付ける。
rd「離さないよ」
リクエストありがとうございました
引き続きリクエストお待ちしております
𝙉𝙚𝙭𝙩 ︎ ⇝ ♡1000 💬1
コメント
2件

速すぎる!!そしてめちゃくちゃ解釈一致すぎる! リクエストに答えてくれて本当にありがとございます!
神です!好きです! pnさんのウブな反応とか 可愛すぎるし色気のあるストーリーで 今までにない独特な雰囲気が 本当に大好き! 神作品をありがとうございます