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「無くても聞いていただきます!実は警察の情報によると、あの斉藤洋子さん、浮気していたらしいんですよ。」
「ほぉ、オバハンはお盛んなんですねぇ。
あ、あの子可愛い…」
「先生!
真面目に聞いてくださいっ!
それでですね。
つまり、浮気がバレて、慰謝料を請求すると言われて逆上して殺したんじゃないか、というのが警察側の予想です。」
「なるほど〜?
逆上して、ねぇ?」
「何か今言った事に問題でもありますか…?」
「いえ、別に。
だけど、あのおばさん、どうせ旦那の保険金は欲しいでしょうから、僕ならばもっと上手い殺し方をしますけどね。
例えば、自殺に見せかける…とか?」
先生は綺麗な指先で、お冷の水滴を突きながらそう言った。
「それはそうかもしれませんが…
逆上したら、そんなこと考えてられないのでは…?」
「そうでしょうか?
指紋くらいは拭き取る、と、そう思いませんか?
指紋が残っていた、なんて、昼ドラの殺人事件でも見てれば、しない失敗でしょう?」
先生は言う。
確かに…
それもそうね…
まるで、自分が犯人だと言っているような…?
「確かにそうですが…
指紋が付いていたと言うことは、触った事には間違いないんじゃないでしょうか…?」
「うーん、まぁ、ね。
綾乃ちゃん?」
「はい?」
「さっきから事件の話ばかりですが…
僕ってそんなに魅力無いですか…?」
先生は私の唇に手を伸ばして、そう言った。
「きゃっ!
何触って!?」
「唇が寂しそうだったもので…」
「寂しくありません!
エロい考え捨てて下さい!」
「それは、オトコを辞めろと言っているのと同じですよ?
ふふ。
可愛いですねぇ。」
「先生!!!
真面目に私の話聞いてます!?」
「はぁ…
しかし、あのオバハンの性欲問題にはまるで興味が無いもので…
まぁ、では行きますか。」
「えっ、どこに…?」
「足が生えて逃げ回らないうちに事件現場に行くんですよ。笑」
先生は私を揶揄うようにそう言った。
「揶揄ってます…?」
「いえ、可愛いなぁ、と思っています♡」
やっぱり揶揄われてる…
とにかく先生のベンツの四駆に乗って事件現場に向かった。
「田園調布の一軒家、ですか。
高いんでしょうね。」
斉藤洋子さんの家に到着し、先生がそうぼやいた。
とはいえ、売れっ子弁護士の先生も、かなりの豪邸に住んでいる。
「そうですね。」
私はインターホンを鳴らしながらそう答えた。
『はい、どちら様でしょうか?』
「斉藤洋子さんの弁護人の、宇賀神玲と、その連れですが。」
先生が弁護士バッチをカメラに向けながらそう言った。