コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
(不破side)
俺は、自分が「アルファ」というバース性で良かったと思ったことなど一度もない。
好きでもないやつから好かれ、襲われ。
そんなこと、日常茶飯事だった。
一番最初に襲われたのは、小学生の頃だったか。
恐らくオメガであったであろう、女性の担任に襲われた。
その記憶は幼かった俺には恐怖でしかなく、俺の頭の中に酷いトラウマとして植え付けられた。
だからこそ、
(ええなー!俺も、アルファに生まれたかった〜)
(うわお前、アルファとか人生勝ち組じゃん!!)
そんなことを言う奴らに、”ずるい”と思った。
俺だって、望んでこんなバース性になった訳じゃない。
できることなら、平凡なベータが良かった。
そうしたら、俺の人生はもっと違っていたのに、と。
「いいな」「羨ましい」
こんな言葉、もう聞き飽きた。
"羨ましい”?
俺からしたらお前らの方がよっぽど羨ましい。
皆んなは、当たり前のように自分を対等に見てくれる人がいる。贔屓したりせずに、まるで普通の友達のように。
だからこそ、俺のバース性なんて気にせず、周りと同じように接してくれた明那が好きなんだ。
一度、明那に聞いたことがある。 そういうのは気にならないのかと。
その時も、明那は───。
「バース性?そんなので友達決めるの嫌やん!それに、ふわっちは俺がどんなバース性でも、友達でいてくれてるんやろ?」
そう言って、ただただ無邪気にそう笑った。
明那はいつも、俺が欲しい言葉をくれる。なんの意図もない、その無垢な言葉に何度救われたか。
明那、あきな。
俺は、明那が思ってる以上に明那が好きなんやで?
だから、だからさぁ───────。
「ハーッ♡ふ、♡?ふわっち♡♡?」
こんなこと、あるはずない。
こんな都合のいいこと。
あれ、なんで明那は泣いてるん?
なんで顔が赤いん?なんで息がそんなに荒いん?
この状態のオメガを、どこかで見かけたことがある。
でも、それだと、それだと明那は───。
『おめ、が…、?』
「……ッ、!グスッ」
明那の大きな瞳から大粒の涙が溢れる。
「ふわっ、ふわっ、ちぃ…ねぇ、おれ、おれなぁ、どうればええの、?…おめが、なっちゃったッ、グスぅう〜、確かにベータだったはずなのに……ッッ」
え?
「オメガになっちゃった」、?
誰が?
なに、これ、こんな、こんな事ってある?
こんな、こんな俺にしか得のない話。
じゃあやっぱりこのいい匂いも明那からってこと?
『明那、どしたん…?オメガになっちゃったって、そんなこと』
「あった、あったんだよっッッ!おれだけ、俺以外のみんなは、普通なのにっ、ぅ、こわい、おれ、じむしょにもいけなくてっ、だれにも、相談できなくてっ」
いいの、こんな話。
笑いそうになる自分をなんとか抑える。俺が、俺が明那を俺のものにしていいの?明那を独り占めしてええの?
嬉しくて、あまりの歓喜に頰が紅潮する。
ねえ、それはさあ、いいってことになるじゃん!!
「ぅ、ぐ、うぅ〜〜ッッ!、」
ほら、明那泣いてんじゃん。早く慰めないと。
あぁ、でも………。
可愛い、かわいいね、あきな。
俺の腕に収まって泣いちゃってさ、俺が今どんな思いかも知らんのやろ?
明那は俺とあまり変わらない身長なのに、いつにも増して一回り小さく感じる。
明那って、こんなに華奢なんだ。こんなに弱々しいんだ。
じゃ、俺が悪いやつから守ってあげないと。
『明那、ねえ明那。俺な、明那のこと好き。大好き』
「…グズッ、…え?」
『なあ、明那も俺のこと好き?』
「……すき、やけど、それが何?」
きっと明那の好きは俺の好きと違う。けど、もういいよな?俺は充分待った。
俺は明那の頬を両手で押さえ、その可愛い唇に自分の唇を重ねた。
「ぅ、ぐすっ、……んっ!?」
俺のことを親友だと思ってる明那からしたら意味の分からない状況。
明那は未だ離れない唇に困惑しているようだった。
「ぅ”ん〜!ん、ンん、ぅ」
呆気なくファーストキスを奪われた明那。
俺が顔を離すと明那の顔は真っ赤に染まった。
明那の瞳から未だ出ている涙をペロリと舐める。
そうすると明那はびくっ、と体を震わせ信じられないものを見る目で俺を見つめた。
「ぁえ、…ふ、ふあっち?なんで舐め……」
『んふ、あきにゃ、かわええなぁ……』
よく分かっていない状態で、顔を真っ赤にしながら聞いてくる。
あー、かわいい。
『なぁ、明那がこれからもライバーをやっていける方法、一つだけあるで』