6月なので梅雨のお話。
微夜描写あり。
色々捏造。
「あっちゃんおかえり、ご飯できてるよ〜」
「ただいm…は?」
ガチャリとドアを開けると、さも当たり前かのように我が家のキッチンに立っている男。
彼の手元からグツグツと音が聞こえるそれは、なにやらいい香りがしている。
カレーか、そういや最近食べてないな…。
「不法侵入した挙げ句、なにしてるんです?」
警察呼びますよ、と脅してみたが、気にしていないのかケロッとした様子で答える。
「今日はカレーだよ〜、いい匂いするでしょ。お風呂湧いてるから、先そっち行きなよ。こっちはまだもう少し掛かりそうだから。」
しかも質問に合っていない答えを寄越した。
今日の晩御飯なに〜とか聞いてねぇだろ耳ついてんのかコイツ。
内心馬鹿にしながらも、わかりましたと言ってバスタオルとパジャマを両手に風呂場へと向かう。
なんか…新婚みてえ、だな…って、何考えてんだ、俺…。
もう何かを考えるのはやめよう…今はお風呂に夢中になろう…。
◇◆◇◆◇
ちゃぷん、ゆらり。
湯船に、小さな波が立つ。
ゆらゆら、ゆらゆら。
数十秒間、ゆらゆらと揺れていた波は収まり、それをぼーっと見つめていた。
「…、結婚、とか……してぇん、かな、」
無意識に口からこぼれた言の葉は、あっちゃーん!カレーできたよ♡よそってあるから早く出てきて〜!という大きな声にかき消されてしまった。
「すぐ上がります」
本当はもう少しゆっくりしていたかったが、カレーが冷めるのはよろしくない。
どうせなら熱々が食べたいから、風呂から出て、サササッと服を着て、遠くもないのに、意味もなく彼の待つリビングへと足を急がせた。
「ご飯はハート形だよ♡」
「きっちぃ、」
「なんて〜???」
「いえ何も。」
いただきます、と彼と声を揃え、カレーを乗せたスプーンを口へ運ぶ。
「うま、」
「そうでしょそうでしょ〜!」
ルーは市販のもののはずだが、自分で作るよりも数倍美味しく感じた。
◇◆◇◆◇
あれから黙々と食べ続け、腹八分目に来たところで食べるのをやめた。
いや、別に太るとか気にしたわけじゃないですけど????明日の朝の分を残しただけですからね???
ウンウンと謎に自分で納得しながら、布団にゴロンと寝転がりスマホをぼんやり眺めながら、彼を盗み見る。
すると、ガラッと窓を開けた彼がえーっ!と声を出した。
「雨じゃん…!来たときは降ってなかったのにぃ!」
「災難ですね、さっさと帰れ」
「ひどいよぅ、えーんあっちゃん泊めて〜!」
「お好きにどうぞ」
「優しい好き〜!」
びく、と彼の声に身体が反応する。
クッソ、心臓に悪いな…。
おい誰だ初心でキモいとか言ったやつ(いません)
数千年生きてはいるが、恋愛などしてこなかったのだから仕方がない…と思う、多分。
「ねぇねぇあっちゃん、身体貸してよ」
「…気分じゃないんですけど」
「いいじゃん、ちょっとだけ!」
「…はあ、好きにしてください」
上にまたがってくる彼に、期待しなかったわけではないけれど。
バクバクと煩く鳴っている音は、ザーザーと降りしきる雨にかき消された。
6月といえば梅雨とジューンブライドですね。
なので本当に少しなのですが結婚などの単語を混ぜてみました。
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