コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
どうも〜
今回初めてノベルで書いていきたいと思います。
特に話すこともないのでどぞー!
空彩(そあ)
真羽(まう)
「ねぇみて!」
真っ青な快晴の中、幼なじみの真羽(まう)と俺ははいつものように遊びに出掛ける。
蝉の鳴き声が響き渡る。
そんな蝉の鳴き声もかき消すくらいのスピードで俺と真羽は公園へ真っ直ぐ向かう。
「ねぇみて!」
「そうかな?」
毎日同じような言葉を言っている。
俺は空が好きだ。
どこまでも広がる未知の世界。
全てを繋ぐ大きな線。
四季で変わる色。
好きなところを語り始めるとキリがない。
俺がこんなに空のことを語っているのに真羽は見向きもしない。
まぁ、自分の好きなことを人に押し付けるのもどうかと思うけど。
そんなことを幼少期の俺は考えもしなかった。
ただひたすらに好きなこと、得意なこと、
見て欲しいもの、やってほしいこと、なんでも真羽に話していた。
そのおかげで真羽は俺の事をなんでも知っている。
だから、俺が嘘をつくとすぐにバレる。
真羽のことはこんな風に言っているけど、
小さい頃は俺はずっと真羽の後ろに引っ付いてたんだっけな。
俺、結構人見知りするタイプで
初めて懐いたのが真羽だったんだと。
ずっと真羽の後ろに隠れて、
でも真羽は他の人と話してたからしょっちゅう喧嘩してたんだ。
「なんで真羽はみんなとはなせるの!」
「うーん、わかんない!」
「真羽ばっかりずるい!」
「空彩(そあ)だってはなせばいいじゃん!」
「はなせないもん!」
「なんで!」
「真羽のばーか!」
「ばかっていったほうがばかだもん!」
「ちがうもん!」
こんな喧嘩ばっかり。
全く、可愛い喧嘩だよな。
でもさ、当時の俺はめっちゃ悔しくて
毎日ぬいぐるみに話しかけてたんだよ。
「ねぇねぇ、お名前なんていうの?」
でも、やっぱりぬいぐるみだから返事なんてかえってこないから、練習にもならなかったんだけどね。
きっとぬいぐるみに返事が出来てもいざ人に話しかけるってなったら緊張で声が出なくなるだろうな。
実際、今がそうなんだから。
真羽と居るとすごく楽しくて
時間を忘れちゃうくらいだったんだ。
というか時間を忘れたままだったかな。
そのまま小学生になって
一つ大きな出来事があったんだ。
「真羽!大丈夫かよ!」
「うん、大丈夫だよ。余裕余裕。」
「そんな訳ねーじゃん!」
真羽の心臓病が発覚したんだ。
体育の授業中に突然倒れてさ
「誰か!救急車!」
真羽の息がどんどん上がっていって早くなっていって、俺は何も出来なかった。
辛そうな真羽を見ているだけだった。
一瞬、俺の心臓が止まったかと思ったんだ。
驚きすぎて。
あんな真羽、見たことなかった。
確かに、真羽は元々病弱な方だった。
でも、ここまで酷いことは今までに一度もなかった。
幸い、すぐに近くの病院に搬送されたけど、あのまま俺が何もしなかったせいで命を落としていたらと思うと、寒気がする。
「もう、遊びに行けないの?」
「そうかも。」
「俺、もっと真羽と遊びたいよ。」
「私も。空彩と遊びたい。」
「どうしてもだめなの?」
「ごめんね。」
真羽は申し訳なさそうに俺に謝った。
違う。
俺は謝って欲しいんじゃなかったんだ。
そんな真羽はみたくなかった。
でも、どうしても見なきゃいけなかった。
もう、あんな真羽二度と見たくない。
二度と、見たくない。
絶対に。
でも、そんな中で明るいニュースが入った。
「退院!?」
「そう!運動はしちゃいけないけど、少しならいいって!」
「やった!」
「また遊ぼうね!」
真羽にそう言われた。
もちろん、真羽の退院はすごく嬉しかった。
でも、「また遊ぼうね」なんて言われて、
俺はなんて答えたらいいんだ。
運動はしちゃいけないから遊ぶことなんて出来ない。
俺は、もう二度とあの真羽を見たくなかった。
「だめだよ…もう少し安静にしてなきゃ」
「でも…」
「お医者さんに許可貰わないと。」
「はーい、」
悲しい思いをさせてしまった気がした。
「ごめん」と謝りたかった。
だけど、ここで謝ったら一緒に遊ぶことを許可している気がして、言わなかった。
いや、言えなかった。
言いたい気持ちが喉に詰まっている感覚があった。
2023/8/14
緑が綺麗で空が青く光り輝く日。
真羽が退院した。
でも、退院したところで特にすることもなかった。
俺は、少しでも真羽に早く元気になって欲しいから毎日空の写真を撮って真羽に見せた。
でも、やっぱり真羽は空になんか興味はなくて、
「ふーん」
と言われるだけ。
いや、分かってたんだ。
でも、自分にはこれしか出来なかった。
これ以外に出来ることがないと思ったんだ。
いや。
きっと他にもあったんだ。
真羽を元気にする方法が。
でも、自分は自分の好きなことをしたら相手が楽しんでくれると勝手に思い込んでいたんだ。
そんなこと、あるはずないのに。
一人一人で好きなことって違うし、嫌いなことだって違う。
でも、結局俺は、自分のことしか考えないような人だったのかもしれない。
「ねぇ。お願い。今日だけ。」
「でも…」
「今日だけだから!一緒に遊びに行こう?」
真羽からのお願いだった。
本当はすぐにでも断ろうと思った。
でも、少しだけ考えた。
このまま真羽からのお願いを断ったら、真羽に嫌われるかもしれない。
あれ、言ってなかったっけ?
俺はずっと真羽に片思い中。
小さい頃からずっとね。
でも、このひとつの事がきっかけでこの片思いすら壊れるかもしれない。
そう思ってしまったんだ。
「…今日だけね」
「ほんと!?やったー!」
「あんまり騒ぐな!お母さんにバレるだろ」
「ごめんごめん笑」
そう言って俺と真羽は久しぶりに公園に遊びに行った。
「空彩!今日はかげおくりが出来そうだよ!」
「かげおくり?なにそれ」
「知らないの?」
「知らない」
「かげおくりっていうのはね、こうやって影を見ながら10数えるの!」
「うん」
「そしたらそのまま空を向く!」
「簡単じゃん!」
「よし!じゃあやってみよ!」
そう言って俺と真羽は交互に10数え始めた。
「いーち」
「にーい」
「さーん」
「しーい」
「ごーお」
「ろーく」
「しーち」
「はーち」
「きゅーう」
「じゅう!」
ぱっと上を向いた。
そこには白い影が映っていた。
「うわぁー!すげー!」
「でしょ!」
「真羽!影と一緒に魂ごと送っちゃだめだぞー!」
「何言ってんの!送るわけないじゃん!」
そう言って俺と真羽は笑い合った。
でも、そんな冗談も本当になるんだな。
「よーし帰ろー!」
「帰るかー!」
「いやー!楽しかったー!」
「あ!ごめん!俺喉乾いたからジュース買うわ!」
「あ!じゃあここで待ってるね!」
「分かった!すぐ戻ってくるからな!」
「えっとー真羽の分も買っていこうかなー?」
ガシャン!!!!
「!?なんの音!」
嫌な予感がした。
俺はクルッと後ろを振り返った。
俺の目線の先には、
真羽と車が衝突した跡があった。
俺は頭が回らなくなった。
思考が停止して、開いた口が閉じなくなった。
それでも俺は本能なのか分からない。
でも、真羽の方へと全力で走っていった。
「真羽!おい!起きろ!」
「…ぅ、」
「俺の手握ってて!離しちゃダメ!」
「空彩…、」
「なに!」
「……き、」
「なに?なんて言った?」
「だい…すきです、だか…ら、私と…」
その言葉わ、言いかけた瞬間。
真羽は俺の手を離した。
この会話が真羽との最期となった。
「真羽!起きろ!」
「真羽!真羽!もうすぐ救急車くるから!ねぇってば!起きて!真羽!真羽!!!」
何度真羽のことを呼んでも、真羽は返事をしなかった。
目を閉じたまま、少し笑っていた。
それから、俺の日々は特には変わらなかった。
いつも通り学校に行って、勉強をして、
遊んで、勉強をして、それから帰ってくる。
特に遊ぶ予定もなく、とにかく勉強。
もうすぐ受験があるんだ。
高校は、頭の良い所に行きたいだとか
良いところで良い成績を取るだとか
高すぎる目標に向かって頑張っていた。
楽しかった。
ずっと。毎日ね。
でも、何か足りなかったんだ。
よく小説で見るよ。
大切な人が居なくなったら何か足りないって。
前はよく分からなかったけど、
今ならよく分かる。
本当に大切な人っていうのは自分の人生の一部だったんだね。
「何か」じゃなくて「人生の一部」が
なのかもしれない。
自分の人生が掛けたような感覚のまま生きていたなんて真羽に言ったらどんな反応するんだろうな。
きっと、笑って「何言ってんの」って言われちゃうんだろうな。
そんなことを考えたまま高校受験。
第一志望には落ちた。
あんなに勉強頑張ったはずなのになあ。
なんて思いながら第二志望を受けた。
余裕で合格だった。
一と二では全くの別物なんだな。
きっと俺にとっての一番は真羽だったのかもしれない。
この「足りない」っていう気持ちがあるっていうことは、
今も昔もずっとずっと真羽への気持ちは変わらないのかもしれない。
それから5年が経ち、大学で医者になるため、勉強をした。
思っていたよりも難しくて毎日必死で勉強していた。
え?なぜ俺が医者を目指すかって?
だってさ、いちばん大切な人が一瞬にして居なくなるなんて、嫌じゃん?
だからさ、一人でも多くの人を救えるようにって思ったんだ。
救う人は患者だけじゃない。
その患者を大切に思う人も救いたいって思ったんだ。
そして、もっと月日が経って、今度は俺も真羽に会いに行くから。
その時は、あの日言いかけたあの言葉を俺から送らせてよ。
真羽、大好きです。付き合ってください。
ってね。