テラーノベル
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遠くの建物が光に呑まれ、その輪郭が白く溶けていく。
大きな音がしたような気もしたし、何も聞こえなくなったような気もした。
世界が終わる瞬間は、想像していたものとは違っていた。
もっと恐ろしいものだと思っていた。
けれど、隣には昴がいる。
わたしの手を握って、同じ方向を見ていた。
「咲」
昴がわたしを呼んだ。
「なに?」
「わたしね、咲と出会えてよかった」
わたしは昴を見た。
昴は笑っていた。
いつものように、少しだけいたずらっぽく、けれど今にも泣きそうな顔で。
「施設で初めて会ったとき、咲は全然しゃべってくれなかったけど」
「うん」
「それでも、友達になりたかったんだ」
わたしは、握られた手に力を込めた。
「…知ってる」
「本当に?」
「うん。知ってるよ」
わたしは昴の手を握り返した。
あのころ、昴が何度もわたしを誘ってくれたこと。
泣きながら、それでもわたしを嫌いになりきれなかったこと。
わたしが初めて自分から声をかけたとき、嬉しそうに笑ってくれたこと。
そのすべてを、わたしは覚えている。
「わたしも、昴と会えてよかった」
言葉にすると、胸の奥が熱くなった。
「ずっと、一緒にいられてよかった」
昴はわたしの手を、もう一度強く握った。
光が、すぐそこまで迫っていた。
空も、街も、川も、すべてが白く染まり始めている。
もう逃げる場所はない。
けれど、逃げたいとは思わなかった。
「咲」
「なに?」
「大好きだよ」
その言葉を聞いたとき、わたしの中で何かがほどけた。
ずっと言えなかったこと。
言葉にしてしまえば、何かが変わってしまう気がして、心の奥にしまっていたこと。
本当は、ずっと前から知っていた。
わたしは昴が好きだった。
隣にいるのが当たり前になってからも、離れていた時間を埋めてからも、何度も一緒に帰った日々の中でも。
それがどんな名前のついた気持ちなのか、わたしは長い間、考えないようにしていた。
でも、今はもう、何も隠す必要がなかった。
「……わたしも、大好き」
声が震えた。
それでも、ちゃんと伝わったと思う。
昴は笑った。 わたしも笑った。
手を握り合ったまま、わたしたちは光を見つめた。
世界が消えていく。
わたしたちの歩いてきた道も、過ごしてきた時間も、いつか思い出すはずだった明日も、すべてが光の中へ溶けていく。
それでも、手の温かさだけは、最後まで確かだった。
わたしは目を閉じた。
昴の手を握ったまま。
光が降る。
コメント
1件
第8話、読み終えたよ…😭✨ 世界が終わる瞬間、昴と咲が手を握って「大好き」って伝え合うシーン、尊すぎてもう胸が苦しかった。 施設で出会ったときから続いてきたふたりの時間が、最後の光の中でちゃんと結ばれた感じがして、涙が止まらなかったよ。 ずっと隠してた気持ちを言葉にできたこと、それを受け止める笑顔…すべてが美しすぎる。 繭ネさん、このエピソードを描いてくれて本当にありがとう。大好きです🌸
#生成AI
柘榴とAI

127
#鬱展開
Mist-404
2,132
柘榴とAI

112
ゑぬ。
197