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華麗なあなたと契約結婚

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華麗なあなたと契約結婚

3 - #01-03.ところどころ、愛撫が降る可能性があります

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2024年11月02日

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広坂の告白を受けた彼女は戸惑った。――いま、なんと?

広坂は真剣だ。ゆっくり歩み寄ると彼女の頬に手を添える。……いよいよ、されるのか。驚きと興奮に満ちた彼女の胸のなかはただ、真実を受け止めている。この男にならなにをされても構わないと。構わないと――思っていたのに。

「残念。ガム食べてるもんね」広坂はいたずらに笑った。それでも、彼女の頬を挟み込むと、ちゅ、と彼女の鼻の頭に口づけて、「あんまり、最初っから飛ばすと、気持ち抑え込むのが大変だから、こんくらいにしておくよ。――ね」広坂はコンビニに目を向け、「歯ブラシとか化粧品とか買っていく……? ぼくんちなんもないからさぁ……」

「あ、じゃあ、是非」パンティも買いたいと思っていた。あとは――生理用品。流石に毛糸のパンツは売っていなかったが仕方あるまい。広坂には、外で待っていてください、と言い、彼と合流し、彼のマンションに向かう。駅を挟んで反対側にあるらしい。北口は商店街が発展しており、ドラッグストアや美容室、英語教室などわんさか店が入っており、通り過ぎるだけで、楽しい。アーケード内は本来、自転車を降りなければならないらしいが、ぴゅーっと走り抜ける自転車の多いこと。自転車社会なんだな、と彼女は思った。

「ここ、すごくいいですね」駅に辿り着いたところで彼女は言った。ここから更に、十分ほど歩いたところに広坂の自宅がある。「お店もいっぱいで、クリーニング屋さんも歯医者さんも内科もあって。ここに住んでたら、困ることはなさそうですね」

「駅前のスーパーなんかお勧めだよ」と広坂。「野菜が新鮮ですごく美味しくてね。ここは、激安スーパーも多いんだけど、それでムサコとかから自転車で買いに来るひともいるくらいだ……でも駅前のがぼくは一番好きかな。改札を出てすぐだし、Suicaで支払いも出来るから楽だ」

「へーそうなんですか。いまってSuica使える店多いですよね」

「因みに、ムサコのスタバでもSuicaは使える。駅ナカとか駅の近くだと、使えるスタバは多いみたいだね」


広坂の住む、十階建ての、百世帯以上が暮らすマンションは、モノトーンの外観でぴっかぴかで、言われなければ新築と思われるほどだ。それでも、そろそろ大規模修繕工事が始まると広坂は言う。

「管理組合からの通知が来てるんだけど、来年あたり、バルコニーに手が入るみたいだね。これでも、経年劣化、してるんだよ。反対側とか、日が当たるから、ドアのいろとかタイルとか……手直ししてるよ」

エントランスは、キーをかざすだけで通り抜け、真っ先に目に入るは緑豊かな庭だ。アパート住まいの彼女には信じられない光景だった。名も知らぬ花が豊かに咲き誇っており、命の尊さを、訴えかけてくる。グレーを基調とした高級感漂う外壁及びフロアとのコントラストが――美しい。

「どうぞ。お姫様」

室内に通されると更に彼女は驚いた。――広い! 綺麗! コンロが三口も! 一緒に生活するのだからと、広坂は、部屋の全部を見せてくれた。3LDK。ひとりで住むには広すぎる。事実、広坂はほぼリビングと接する部屋しか、使ってないと言う。

――お風呂めっちゃ広いですね!

――え。これで築十一年!? 信じらんない! めーっちゃ、きれいじゃないですか!

「備え付きの食洗機があるから、これ、二日に一回は使っているかな……ひとりだと、あまり食器なんか使わないから……」食洗機の操作方法を説明する広坂。――そうか、分譲だとそんな便利なものがあるんだ……アパートとの違いに、いろいろと驚愕する彼女である。それから、風呂は、追い炊き機能がついたタイプ。別々に帰宅したときに、便利だろうと、広坂は話した。

一通り部屋を見せた広坂がこう言った。

「きみの部屋は、どこがいい?」

「――え。部屋なんか、貰えるんですか? でも、わたし……どうしましょう。水光熱とか、生活費、どうすればいいですかね。家賃、……じゃないや、ローン代とかひっくるめて、半額、わたしが払うかたちでも……」

「それだとめんどいから、例えば、食費だけきみに負担して貰うってのはどう? ひとまずそれでやってみて、変えたい点があれば変えて行こう」

ダイニングに通され、彼女のためにお茶を淹れる広坂。わたしがします、と言っても広坂は譲らなかった。「いろいろとあったんだから、ゆっくりしよう……話したいこともあるし」

「その前に、ちょっとトイレとか歯磨きとか……いいですか」焼肉の後は口のなかがちょっと。彼女の提案に広坂は微笑みで応じた。「勿論。ここはきみの家だ。したいことをしたいようにしてくれていいんだよ」

鏡のなかの自分と向き合う。二十代の頃と、なにが変わったろう、と彼女は思う。黙っているだけでは二十代に見られるかもしれないが、笑ったときに笑い皺が入るようになった。……やれやれ、年齢には勝てないなあと。

「お邪魔します」見れば、広坂も入ってきた。「ぼくもちょっと、お茶を飲む前に、お口すっきりしたい……」

小さく彼女は笑った。腰高の三面鏡の前で、並んで歯磨きをする構図に。結婚もまだ。交際もまだだというのに。いつの間にかこのひとと一緒にいることで紛れもない、『安定』を手に入れているということに。衝撃の事実を突きつけられて四時間しか経っていない。なのに彼女は、失恋の涙にむせぶどころか、この男と一緒にいることにここちよさを……感じている。

「さて。これで大丈夫」口をゆすいでタオルで口を拭く広坂。「これで、いつでもキスできる。もう安心だ」

言ってくるりと広坂は背を向け、キッチンに向かおうとするのだが――その広い背中に、後ろから抱きついた。当たり前だが、彼氏とは違う、男の匂いがする。なんだか懐かしく思える香りが。

細身に見える広坂だが、こうして背後から抱きつくと、そのからだの厚みに驚かされる。初めて触れる広坂の肉体は、あまりにもたくましく、彼女に、男を感じさせた。

「……夏妃」震える、自分の前方に回された彼女の手に自分の手を重ね、広坂は、「……愛している。ずっとずっと、……好きだったんだ」

広坂の声音は、嘘を言うときのそれではない。顔が見えないのをもどかしくも感じながら、彼女は広坂の背中に頬を預けた。――熱い。あたたかい……。広坂の情熱を、雰囲気と声音で感じる彼女に、

「きみは、……ぼくが、きみのことをよく知らないと思っているだろう、夏妃。でも、違うんだ。ぼくはきみの仕事ぶりを見てきた。仕事ぶりである程度、そのひとの性格というものは、掴めるものさ。

きみは、どんな仕事を頼まれても嫌な顔ひとつしなかった。

ぼくは、きみのことを、尊敬している。コピーひとつとっても、書類の合わせ位置。カラーなのか両面なのか。ホチキス留めなのか。向きは。PDFでスキャンする必要はあるのか……気を遣うことが山ほどある。仕事に、優劣なんか、ないのさ。地味に見える仕事であってもものすごく重要だ。たったひとつのミスが、クライアントを失うとか、とんでもない失敗に繋がることもある……だいたい、そういうミスをやらかす連中は、危機感が薄いんだ。自分でやらかしといて、言い訳ばかり。だってあのとき言ってくれなかったじゃないですか――自己弁護から入る。仕事の本質を、理解していないんだね。きみは、理解しているのだろうと、ぼくは確信している。

きみは、ひとつひとつの仕事を丁寧に迅速に処理してくれた。コピー取りかよ、と露骨に嫌な顔をする新人も、過去いたのだが、きみは、まるで違った。きみにならなにを頼んでも優秀にこなしてくれる。あんなに庶務を任された新人は、ぼくの見た限りでは、きみが初めてだった。

電話をかけてくる営業も、きみが相手だと反応が顕著だった。きみが社名を名乗るだけで魅了される男の多いこと。いっそ、営業部に来てくれないかと思ったくらいだが、でもきみの選んだ道だから、口出しするわけにはいかず……それにね、夏妃。正直に言おう。

きみが、あまりに魅力的で、……他の男の目に触れさせたくないとさえ思った。

でもね。きみには彼氏がいたから、ぼくは、……抑え続けた。抑え込んでも抑え込んでも、きみという花が咲き誇り、ぼくのこころを、乱すんだ……。

契約結婚なんて言ったのは、夏妃。きみのこころが整理出来てからと思ったからだ。きみは、情の深い人間だ。山崎のことをすぐ忘れろだなんて言っても、無茶なことは分かっている……それに、ぼくはこんな人間だから、夏妃の気持ちがどう動くかなんて分からない……もし、きみに、他に好きな男が出来たら、喜んできみのことを手放したいと……そう、思っているんだよ」

「……本気ですか。広坂課長。本気で、わたしのことを、手放そうと、そう……考えているんですか」

広坂がからだの向きを変えた。初めて見る、野性的な男がそこには、存在した。

「もう一度聞く。――夏妃。

キスしても、構わないか」

広坂の、美しい唇を求めた。直後、彼女は、あふれんばかりの情愛に、見舞われていた。


姫抱きでベッドへと運ばれた。格好のいい男は、なにをしても格好いいのだと――思った。

歯磨きをしたのは正解だと思った。ひょっとしたら自分のなかには、こうした淫らな希望が潜んでいたのかもしれない。見目形の麗しい広坂に誘われ、愛しこまれる展開を。

「あの、ちょっと……」やけに大きなベッドのうえで、広坂に首筋を舐められる彼女はあえいだ。「わたし、言っておきますとその、……女の子の日で。最後まで、出来ません……」

ごめんなさい、と彼女は詫びたのだが、「そうなのか」と広坂は目の高さを彼女に合わせ、「ごめん。まったく気づかなかったよ。重いほう? 気持ちよくされると――辛い?」

「ううん。でも声とか、いっぱい、出ちゃう……」

「いいんだよそんなの」笑って広坂は彼女の髪を撫でた。「ここ。うえから多少物音はするけれど、隣は全然だ。静かだろう? だから安心しな。きみのえっちな声をいっぱい聞かされたとて、むらむらする男は、この世でぼくひとりだけだ――夏妃」

このひとのキスの仕方が好きだ、と彼女は思う。元彼氏のただ闇雲に舌を絡ませるだけの一方的なものとは違う。キスの仕方で人間性は伝わるものだ。広坂の誠実さに、彼女は感銘を受けていた。弱い、感じやすいところがあれば大胆に攻め。酸素を欲すれば十分に与えたうえで、……耳をちゅぷりちゅぷりと貪りながら、「……感じてる夏妃の顔、大好きだよ……可愛い」とささやきかけてくれる。豊満な彼女のバストを衣類ごしに揉みしだきながら。

「課長、……感じてる?」彼女が下方に手を伸ばすと「勿論さ」と広坂は言う。すると彼女はますます興味が湧いたのだが、だーめ、と肩を押さえられる。

「ずっと惚れ込んだ女に、やっと触れられるんだ……。積年の想いを伝える、わがままな男に成り下がっても、構わないかい?」

否と答える女がどこにいようか。

唇を絡ませ、脳髄がとろけそうになるのを感じる。なまあたたかくやさしい広坂の舌は、ここちよく彼女を誘ってくれた。視界に、閃光が弾ける。気持ちよさに、失神しそうになる……。

「んん」と彼女は所々で声をあげた。やさしく丸みを撫でまわす広坂の手つきが、ここちよい。女であることの幸せを――感じる。覆いかぶさられ、そっと抱き合う。言葉はない。どきんどきんと、重なる胸の高鳴りが、あふれんばかりの広坂の興奮を、伝え来る。足を絡ませれば、広坂の性器が勃起していることが分かった。そのことが、彼女には、嬉しかった。

「癒される……」と広坂。「幸せだなあ、本当に。……夏妃は? 重くない?」

「重いけど、その重みが、幸せなんです……」

「嬉しいことを言ってくれるねえ」広坂の彼女を撫でる手つきはいつもやさしい。それだけで、自分が宝物のようになった気がしていた。「ねえ、……してみたいことがあるんだけど、してみても構わないかい?」

「いいよ」

すると広坂は彼女のタイトスカートに手を滑らせ、……その先。すべらかな足の曲線を手でなぞり、足先へと手を伸ばす。パンティストッキングに包まれた足先を持ち上げるとなんと――舐めた。

「ちょっ課長っ……」参った。毎日洗っているとはいえ、一日中履いていたのだ。臭くないはずがない。ところが、彼女は困惑する一方で、奇妙な快楽を感じていた。

ナマ足が大流行の一方で、パンストの愛好家は多い。愛用者も。日本では、フォーマルな場ではストッキングを履くのが当たり前という風潮があり、女性であれば、就職を機に、目覚める女性は多い。

彼女たちが勤めるのは、パンティストッキングや靴下の製造と販売を行う会社だ。男たちは当然パンスト好きが多い。この言動を見る限り広坂も――そうであったということだ。

広坂は唇で彼女の足首を愛撫し、手でも、膝から――そのうえにかけてを撫であげる。それだけでぞくぞくと彼女の背筋に快感が走る。

「ああ、ああ、あああん……」か細い声を彼女はあげる。足が性感帯だなんて、いまのいままで知らなかった。彼氏とのセックスは、大概、挿入してそれで終わり――だったから。「だめだめ。それ以上されたら、なんか、わたし――」

がくん、と彼女は崩れた。目から涙が湧く。これは、さきほどまでの涙とは、まるで種類が違うものだ。このとき彼女は確信した。もう――この男から、離れられない、と。


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