学パロ
オメガバ
ほんのちょっとの年齢操作
容姿は天竺軸
6000文字以上
高校の入学式、桜は綺麗に校門に咲いており、誰もが校門を通ると一度目を通す木。今日入学する者たちはしっかりと制服を着用して清楚正しく登校していた。一人を除いて。桜よりも目立った綺麗な顔立ちのした人物。シルクのような色でシルクのように綺麗な髪。ブレザーのボタンは一つも閉めずに、ポケットに手を突っ込みながら楽しさや嬉しさなど一切感じ取れない顔で登校していた者。
その者はクラス表を見て、何の反応もせずに書かれたクラスに足早で向かった。このクラスにはある共通点がある…いや、この学校にはある制度が存在する。
この世には男女の性別以外に第二の性が存在している。大きく分けて三つ。大体の者はβという、一般的な性別。悪く言ってしまうと何の特徴もない性別だ。そして後の残り二つ。支配したい欲を持ってしまうα。支配されたいという欲を持ってしまうΩ。主にこの二つが第二の性の主役と言っても良いだろう。
そしてこの学校にはβとαのみ入学が可能な高校。そもそも法律ではΩとαの共学は禁止されており、その二つの共学校は存在しない。理由は一つ、問題になることが多いからだ。Ωは一定期間が経つとヒートという発情期のようなものがくる。それはβにとっては何も変わらないことだが、αは違う。匂いも過敏に気づいてしまい、理性を働かせなくなってしまう。最悪の場合、理性が保てずに相手を孕ませてしまうことも少なからずある。その為共学校はないのだ。
シルク髪の男はβのようだ。βのみしかいないクラスに入り、自分の席を確認してそこに座る。周りの人達は友達を作ろうと他人に話しかける者、話しかける勇気がなく席にただ座ってスマホやら小説やらを見てる者。シルク髪の男はどちらでもなかった。窓側の席だったため、外を眺めていた。友達を作ろうと思わず、ただ窓の向こうに写っている青い空に満開の桜を冷たい目で見ていた。
担任らしきものが教室に入ると次々と周りの人達は自分の席に座って行った。担任の自己紹介、入学式の話、今後の予定…色々な事を話している中、男は一つも真面目に聞かずに今もまだずっと外を眺めていた。
入学式も終わり、また自分達の教室に戻る。男は長々とした話に疲れたのか机で寝る準備をしていた。あまり寝心地が良いとは言えない固い腕を枕代わりにして瞼を閉じる。すると今からLHRなのか、担任が皆に自己紹介をしてもらおうとしていた。次々に番号順から自己紹介をし始める。男の番になると担任は「おーい」と呼びながら男を起こした。男は綺麗な顔を起き上がらせて、嫌々教卓の前に行く。めんどくさそうな態度を露わにして、男は人々の前で初めて口を開いた。
「三途春千夜…。」
男…いや春千夜の自己紹介は僅か二秒で終わった。しかし、その場にいた春千夜に対する皆の印象は大きい。綺麗な顔立ちのした者から、発せられた低い男の声。誰もが驚いていた。
全員の自己紹介が終わると昼休みになった。ある人は校内探検に行き、ある人は先程作った友達と雑談をする。春千夜は席から立ち上がり、階段を上がって行った。先にあった扉を開くと綺麗な青空が広がっていた。どうやら屋上に来たらしい。風も温度もちょうど良く、今すぐにでも寝れるほど。春千夜は少し周りを見ると、どこからか声がした。
「誰お前ー」
上から声がした為、春千夜は上を見る。そこには顔だけひょっこりと出して、此方の様子を伺っている金髪に水色メッシュの男がいた。ネクタイの色から見るに春千夜の先輩だろう。春千夜は面倒くさい者に絡まれたと思い少々溜息を吐く。
「…今日入学してきた者…です。」
「ふ〜ん…名前は?」
「……三途春千夜。」
異様な雰囲気で言葉を交わす二人。まるで何かを探るかのように男は春千夜に質問をしていた。男は隣に誰か寝ているのか「ちょっと待ってて」と言って春千夜の近くに行く為、梯子から降りてくる。身長は同じ筈なのに、オーラというものなのか、近寄りたくない雰囲気を出していた。春千夜に近づくとピタッと立ち止まり、春千夜のシルク髪を数量手に持ってサラサラと触り始めた。何をしたいのか分からない春千夜は少し戸惑いながらも「何ですか?」と相手に質問する。
「いや…女か男かわかんねぇからさ。
でもその声だと男だよなぁー…。」
男は残念そうに上記を述べた。頭を掻いて、大きく溜息を吐く。春千夜はそんな態度に少し苛ついたのか、男を睨んで「なんですか」とあからさまに嫌な態度をとった。
「女だったら抱いたのになー
男を抱く趣味ないんだよ…」
「は?」
どうやら男は春千夜が男だったため、先程の態度をとっていたらしい。そんな馬鹿げた理由で失望された春千夜は思わず低い声で反応してしまった。それに対して男は少し目を丸くした後、ふっと笑い始めた。
「お前真面目そうなのに案外短器なんだな。
ちなみにお前、第二の性は?」
「…β」
「まあ、そんな見た目だな。
因みに俺はα様。」
口角を片方上げて、まるで自慢かのように男は言ってきた。そんな態度に何も反応せずにその場を去ろうとする春千夜。すると男は春千夜の道を妨げるかのように腕を広げた。春千夜にとっては意味が理解できない行動に値する。
「なんすか…」
「ん〜?
なーんかさ、お前の顔ワンチャン兄貴の好みなんだよねー」
「おーい、兄貴ー!
兄貴好みの顔きたー!」
男は自分が先程いた場所に向かって大きな声で誰かを呼んだ。暫くすると唸り声と共に黒髪と金髪が交互に染められている三つ編みの男が起き上がった。顔を見ると男と良く似ており、「兄貴」と言っていたため兄弟関係なのであることがわかる。
「兄貴ーコイツ兄貴の好きな顔面でしょー?」
「あ”ー?
……へー、ガチじゃん」
不機嫌そうな顔から興味津々の顔に変わった。梯子などを使わずに「ヨイショ」と言いながら軽々と春千夜の元に飛んでくる。一体どのような運動神経をしているのか、人間ではないだろうと思いながら春千夜は黙って見ていた。マジマジと春千夜を見る三つ編みの男。
「んー…俺、灰谷蘭。
君はー?」
「…三途春千夜。」
「ありゃ、まさかの男?
まあ、良いけど。」
この男は蘭と言うらしい。蘭は先程の男は違い、男と聞いても幻滅しなかった。そんな反応に驚いたのか少々引いたような顔で蘭を見つめる男。
「えー、兄貴って男いけんの?」
「無理だけど…
コイツの場合、顔が女だからいける気がする。」
春千夜本人の前で堂々と失礼な事を述べる兄弟二人。遂に堪忍袋の尾が切れたのか、春千夜は舌打ちをして二人の事を睨んだ。
「黙って聞いてりゃ随分と失礼な事言うなぁ?
α様だからって失礼な事言ってんじゃねぇよ! 」
言ってやったと少々満足げに鼻を鳴らす。キョトンと目を丸くした二人は見つめ合った後、唐突に笑い始めた。それに対して春千夜は「マジか」と引き攣った顔で二人を見る。暫くすると、やっと笑いの終わりに近づいてきたのか、息を少し整えて二人は春千夜を見つめてきた。
「お前、顔に見合わずおもしれーやつー」
「ほんとそれ!
あ、俺灰谷竜胆!
ぜってぇ覚えろよ、新入生くん」
いきなりの失礼な事と、いきなりの自己紹介で春千夜の頭は少々混乱していた。やはりαの考えている事はわからないとつくづく思う春千夜。頭を抱えて、何かに疲れたように大きな溜息を吐いた。
すると予鈴が鳴り、昼休みが終わる事がわかった。流石に授業を初日にサボるほど、春千夜は不良ではないし、馬鹿でもない。春千夜は二人の隙を見て、屋上から出ていった。出来ればこれ以上会いたくもないし、話したくもないと心の中で強く誓った。あんなに見下され、弄ばれて嫌な気分になるに違いないだろう。少なくとも良い気分にはならない。春千夜は苛立ちを心に無理やり詰め込みながら黙々と授業を耳から入れて耳から出すぐらいに一言も聞かずに席に座っていた。
6時間目は保健体育だった。一年で最初の保健体育と言ったら、この世の第二の性についてから始まるのが基本だろう。βの事、Ωの事、αの事。義務教育で習ったものをもう一度聞かされた。そのくらい第二の性は危なく、そして確実に学ばないといけないものだと分かる。
春千夜は第二の性が嫌いだ。理由は本人のみしか知らない。だが、話を聞いてる態度はあからさまに嫌な態度。眉間に皺を寄せ、貧乏ゆすりが止まらない。これほどまでに最初から不良のように反抗的な者はいたのだろうか。いや、もしかしたら第二の性について話さなければこんな事にならずに済んだのかもしれない。
あれから一週間が経っただろうか。桜も徐々に散り始め、道ゆく道には桜の花びらがちらほらと落ちている。踏まれたものや今先程散ったばかりとわかるもの。春千夜は遅刻確定の時刻でのんびりと登校していた。いや、仕方のない事なのかもしれない。何故なら、春千夜は途中で薬局に寄っていたから。何を買ったのかはレジ袋の中を見ないと私達は分からない。しかし、薬局に寄ったのであれば大凡薬を買ったに違いないだろう。二時間目が始まった頃くらいに春千夜は教室に堂々と入った。そんな堂々たる登場に流石の先生も少々躊躇ってしまう。まるで当たり前かのような春千夜の立ち振る舞いに困惑していた。流石に注意をしようとすると、春千夜は何か察知をしたのか先生であっても容赦なく翠色の瞳で睨みつける。先生はあからさまに怖気付いてしまい、うんともすんとも言えなくなってしまった。
皆がお待ちかねの昼休みに入ると春千夜はトイレに少々の荷物を持って直ぐ様向かった。まるで何かを耐えて、早く何かの用を済ませたいかのように。トイレに誰もいないことを確認すると、春千夜は先程薬局で買ってきたレジ袋を漁り、一つの箱を取り出した。それはやはり何かのお薬らしく、箱から二粒取り出す。また同じレジ袋から200mlペットボトルも取り出し、蓋を急いで開ける。そして錠剤を口に含んで、水を適量飲み、上を向いて飲み込んだ。喉に通るのを確認すると春千夜はホッと一息する。
「お前…それ。」
横から声がした。声のする方を見ると、そこにはいつしかのαの人物がいた。確か名前は…
「りんど…?」
名前を呼ぶと、竜胆は春千夜をトイレの個室へと無理やり連れて行き、扉の鍵を閉める。狭い個室で二人きり。何が起きたのかさっぱり分からず、状況が把握できない春千夜は目を丸くして焦っていた。それもそのはず。いきなり個室に連れ込まれたら誰でも最初は驚くであろう。竜胆は春千夜の手首を痕が付いてしまうのではと思ってしまうほどの強さで握っていた。痛みが徐々に伝わったのか、顔を顰めて少々唸り声を出す春千夜。それでも握る力は緩める気配は一向になく、ただただ春千夜は痛みに耐えていた。
「な、なんすか…!」
「これ、この錠剤さ
Ωの抑制剤でしょ?」
ドクンっと、一つ大きく鼓動が動いた。春千夜は徐々に肌から汗が出てきて、それは止まる気配がない。
春千夜はβのはずだ。何故ならば、その学校のβクラスにいるから。なのに、何故Ωがここにいるのか、それは本人の口から聞かないと一向にわからないこと。何故βのフリをしていたのか、何故この学校に通っているのか。全て春千夜、もしくはその友人か家族関係の者しか知らない。いや、もしかしたら春千夜自身しか知らない事なのかもしれない。
その場は沈黙が暫く続いた。今直ぐにでも理由を聞きたい竜胆と、今直ぐにでもこの場を立ち去りたい春千夜。どちらが先に出るのか、見ものである。
「……」
「……」
「風邪薬間違えて買った…風邪薬だと思ってたんだよ。」
先に行動に出たのは意外にも春千夜だった。春千夜が言うに風邪薬を買ってると思ってたら間違えて抑制剤を買っていたらしい。理由は怪しくもあるが、これがもし本当であればそうしか言いようがないだろう。ただし、その表情で言わなければの話ではあるが。
「本当かな?
俺には立派な嘘に見えるけど。」
「……」
「もし、βなら…噛んでも良いよね。」
「ちょっ、おい‼︎」
竜胆が春千夜の首元を触り、そこに顔を近づけると先程よりも焦ったような表情で声を荒げた。春千夜は耳元でクチャっと口を開ける粘着質な音を聞いて、酷く怖がった。精一杯に抵抗し、遂には竜胆を思い切りに蹴った。隙が出来、春千夜は鍵を直ぐに開けて、トイレから立ち去る。この行動は嘘紛れもない。つまり、「βですか?」という架空の質問を否定した証だろう。
必死に春千夜は走っていると、急ぎすぎたせいか、曲がり角で誰かとぶつかってしまった。これも見たことある顔。なんなら、先程見た顔に非常に似ていた。つまり、兄弟を意味する、そして春千夜にとって二番に会いたくない人物だ。
「あ、この前の…」
灰谷蘭。身長のせいではあるが、春千夜を見下ろすように目を見て話していた。そして、今さっきまで女と遊んでいた証のようなキツイ香水の匂い。マスク越しでも鼻が痛くなるものだ。顔を顰めていると、後ろから肩に手を置かれた。
「逃げんなよ。」
「ひっ…」
「え、どったん?
なんか竜胆、顔怖いよ?」
逃げようとするも時すでに遅し。直ぐに春千夜よりもガタイの良い竜胆に捕まり、抵抗ができなくなってしまった。蘭はどんな状況で何故こうなっているのか分からなかったが、面白い事には間違いないと思い徐々に口角を上げた。
「ねぇ、兄ちゃんも混ぜてよ 」
「…それは無理
いくら兄貴の願いでもこの事は言えない」
「へぇ…竜胆が俺に反抗なんて珍しい。」
少々場がピリつき始め、春千夜は今にでも帰りたいと思ってしまう。竜胆は奪われたくないと言う意思の表れなのか、春千夜の腰に手を当てて、自身の方に抱き寄せる。それに対し、蘭はどういう意図なのかは知らないが、その行動に苛ついたのか口は笑っていたが、顔は笑っていなかった。
「…まあ、大体の事はわかったよ。
竜胆がそんなに春千夜だっけ?…そいつに執着してるのはあれだろ?
そいつがオ…」
「言うな‼︎」
春千夜は今から蘭の口から発せられる言葉を周りにいる者たちにバレたくなく声を荒げてまで言葉を遮った。流石の二人もお互い、実の兄弟の方ではなく春千夜の方を見てしまう。春千夜の顔はこれまでにないくらい何かに怯えていて、今にも泣き出しそうになっていた。それを見て、竜胆は腰に手を当てていた力を弱めた。そして、春千夜は必死にその場を立ち去る。遠くに、誰にも見つからない場所に。とにかく走った。息が荒くなるのは走っているからなのか、それとも先ほどの出来事のせいなのか。できれば前者の方が春千夜にとって精神との都合が良かった。頼むから平和な学校生活を送らせてくれ。強く春千夜はそう願うが叶う事可能性は1%にも満たないだろう。
三途春千夜 [Ω]
βと偽って学校に入学してきた新入生。何故βと偽っていたかはまだ謎。抑制剤でなんとかヒートとフェロモンを抑えている。灰谷に目をつけられてて可哀想だけど少し自業自得な男。
灰谷蘭 [α]
高校三年生で春千夜の先輩。顔面と身長のおかげでいつも周りには女がいる。春千夜の顔面は好みだが、恋愛感情は今のところなし。ヤリ捨てと全然やるザ・クズ男。
灰谷竜胆 [α]
高校三年生で春千夜の先輩。顔面と運動神経で此方も女にモテている。春千夜の顔面は好みでもなんでもないが、少し気になってはいる。恋愛感情は今のところなし。Ωの世話とかちょっとめんどくさくない?系男子。
コメント
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ひゃっほぉぉぉぉぉぉぉい😇😇😇😇😇😇😇😇😇もう全部が大好きなんだなこれが……😘😘😘😘😘😘😘❤️🔥❤️🔥❤️🔥❤️🔥❤️🔥❤️🔥❤️🔥ここから灰谷ブラザーズがどう春ちゃんに仕掛けるのかが楽しみでございますわ😏💞