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鷹槻れん

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鷹槻れん

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#恋愛
水無月 京
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#オフィスラブ
草原草原

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「どこにいるの?!」
「ショッピングモールの中」
「今から言う病院へすぐに来て。おじいちゃんが碁会所で倒れて、救急車で運ばれたの!」
母の言葉を聞いて頭が一瞬で真っ白になり、手にしていたスマホをうっかり落としそうになった。
祖父とは今朝リビングで会ったけれど、そのときは普段通り元気だったのにいったいなにがあったのだろう。
「倒れたって、どうして?」
「急にみぞおちのあたりが差し込むって言って、そのあと吐血したらしいわ」
口から血を吐いたシーンと想像したら怖くなって、途端に全身がブルブルと震えてきた。祖父のことが心配でたまらない。
「お母さんは病院に着いたから、今から先生に病状を聞いてくる。冴実も早く来てね」
そう言うが早いか、母は病院の名前を告げて電話を切ってしまった。
私は聞いた病院名をスマホで検索し、ショッピングモールを出たところに停車していたタクシーに乗り込んだ。
あらためて確認してみると、母のスマホからは十分おきに着信と【電話に出て】というメッセージが三件ずつ入っていた。
電話に出られなかったことが悔やまれてならない。すぐに知らせを受けていたら、もっと早く病院へ駆けつけられたのに。
小刻みに震える左手を押さえるように、右手を重ねてギュッと力を込める。
吐血したと聞いてからずっと身体の震えが止まらない。祖父にもしものことがあったらどうしようと、最悪な考えまで浮かんできてしまった。
タクシーを降りた私は救急外来用の入口から病院内に入り、通りかかった看護師の女性にあわてながら祖父の居場所を尋ねた。
「落ち着いてくださいね。先ほど救急車で運ばれてきた方なら、今は点滴室にいらっしゃいますよ」
案内された部屋へ行くと、ベッドに横たわって点滴を受けている病衣を着た祖父の姿が見えた。
すぐそばで辰巳さんが丸椅子に座って心配そうな顔で見守ってくれている。
「おじいちゃん……」
じわりと涙目になりながら遠巻きに声をかけると、辰巳さんが私に気付いてやさしく手招きをした。
自分が座っていた場所を私に譲り、もうひとつあった丸椅子を自分のほうへ引き寄せて辰巳さんが私の隣に座り直す。
「点滴の途中で眠くなったみたいだよ」
枕元まで顔を近付けて祖父の様子を確認したら、辰巳さんの言うようにスースーと寝息を立てて眠っていた。
不安でいっぱいだった心の中に、ほんの少しだけ安心する気持ちが湧いてきて、感情が混乱したせいか大粒の涙がぽろぽろとあふれてくる。
「辰巳さん……それ……」
辰巳さんが着ていたベージュの長袖シャツの袖口に、赤い血が点々と付着しているのが見えた。
「ああ、これか。倫さんの身体を支えたときに付いたんだ。冴実ちゃんを驚かせちゃったな。すまないね」
私は泣きながらブンブンと首を横に振った。祖父が吐血するのを目の前で見たのだから、辰巳さんだって驚いたはずだ。
突然倒れた祖父のそばでずっと付き添ってくれた辰巳さんには感謝しかないし、服を汚してしまって申し訳ない。
しょんぼりしていると、辰巳さんが私の頭をよしよしと撫でるものだから余計に涙が止まらなくなった。
「点滴が済んだら病室へ移るらしい。しばらくは入院になる。冴実ちゃんのお母さんは医者から話を聞いたあと、入院の準備のためにいったん家に戻ると言ってたよ」
どうやら母とは入れ違いになったようだ。
迅速に母が動けているのも辰巳さんがいてくれるおかげだと思うと、本当にありがたくて頭が下がる。
「なにをグズグズ泣いてるんだ? たっちゃんを困らせるな」
「おじいちゃん!」
目を覚ました祖父が私を見るなり苦笑いを浮かべてそう言った。
「ねぇ、大丈夫なの? どこが悪いの?」
「……胃だ」
コメント
1件
冴実ちゃんの焦りと不安がひしひし伝わってきて、胸が締め付けられました。電話に出られなかった後悔、震える手…すごく共感できます。辰巳さんの存在が本当に大きくて、袖の血に気づいた場面では、誰よりも驚いたはずなのに優しくしてくれる姿にじんわりきました。おじいちゃんの「胃だ」の一言が気になります…無事でいてほしいです🥀