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鷹槻れん

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鷹槻れん

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#恋愛
水無月 京
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#オフィスラブ
草原草原

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そういえば、祖父は最近よく胸焼けがすると言って市販の胃薬を飲んでいたし、食欲も落ちていた。
少し痩せたような気がしたから大丈夫なのかと尋ねたら「若いころと同じ量を食べられないだけだ。年を取るとみんなこうなる」と平然と答えていたので、私も納得してしまったのだ。
祖父の言葉を鵜呑みにせず、もっと気にかけていればよかったと後悔の気持ちが一気に湧いた。
「実は以前に一度病院で診てもらったんだ。だから退治しなきゃいかん厄介なものが胃の中にあるのは知っとった。こうなったのはそれを放置したせいだな」
厄介なもの……そう聞いてすぐに頭に浮かんだ病名は、胃ガンだった。
だとしたら一刻も早く治療しないと命に係わるのに、どうして祖父は私や母に言わず、病院にも通わなかったのだろう。
私が十三歳のころに亡くした父の顔がふと頭に浮かんできた。父の命を奪った病気も、ガンだったから。
「お父さんが亡くなってからは、おじいちゃんが我が家の大黒柱なんだよ?」
「俺ももう年だ。いつまで生きられるかわからん」
「そんなこと言わないでよ」
父の代わりを務めようとしてなのか、祖父は実年齢よりも若く見えたし、同世代の男性と比べたら体力もあった。
だけどそれも、私と母のためにずっと無理をしていたのかと考えたら胸が苦しくてたまらなくなる。
「俺がいなくても冴実は立派に生きていけるだろう。けどな、仕事に没頭するのもいいが、人との縁や絆も大事にしてほしいと俺は思ってる。お前は不器用だから心配だ」
「縁や絆?」
「恋愛は相手の気持ちもあるからむずかしいよな。でも怖がるな。いい男なら近くにいるじゃないか」
祖父は病気を抱えていたから、私が将来結婚するかどうかを気にしていたのかもしれない。自分が生きているうちに孫が幸せになるのを見届けたい、と考えていたのだ。
そして、祖父が口にした“いい男”というのはきっと、神谷社長のことだろう。
「もしかして治療を拒む気? 今はガンも治る時代なんだからね! 手術が必要ならしてもらおうよ」
「……ガン?」
一瞬ポカンとした祖父だったが、そのあと急に肩を震わせて笑いだした。私はなにもおかしなことは言っていないのに。
「ガンじゃなくて胃潰瘍だ。ちなみに手術は要らん。完治するまで治療は続けるよ」
胃ガンではなかった……その言葉が耳に届いた途端に張り詰めていた緊張の糸が切れ、一気にホッとして祖父の身体に掛けられている布団の上に崩れるように顔を伏せた。
とめどなく安堵の涙があふれてきて、しゃくりあげるようにヒクヒクとしだいに呼吸が乱れ始める。
「なんでそんなに泣くんだ。命に別状はないのに」
「だって……ちゃんと治療したらおじいちゃんは元のように元気になるんだと思ったらうれしくて」
「お前が結婚するまでは生きていないとな」
祖父が苦笑いをしながら私の手をギュッと握った。大丈夫だと伝えたい気持ちが祖父の手の平から伝わってくる。
「私ね、とにかくおじいちゃんには長生きしてほしいの! ずっと元気でいてほしい」
まるで涙腺が壊れたかのように、気付いたら私の目からは再び大粒の涙がぽろぽろとこぼれていた。
ここに来てから泣いてばかりなのは、驚いたり絶望したり安堵したりと、感情が乱高下しているせいだ。
「おお、朝陽」
辰巳さんの声につられて顔を上げると、悲愴な面持ちをした社長がベッドの足元のところに立っていた。
「救急車で運ばれたと聞きましたけど……倫治さん、大丈夫ですか?」
「朝陽くんにまで心配をかけてすまないな。ありがとう。俺はピンピンしてるよ」
吐血した人が言う言葉ではないなと虚勢を張る祖父を見ながら溜め息を吐きだした。
「社長もわざわざ来てくださるなんて……あ! 朝陽さん、でした」
コメント
1件
うわっ、良かった…胃ガンじゃなくて胃潰瘍で本当にホッとした😭 祖父の「お前が結婚するまでは生きていないとな」のセリフ、じんわりきたわ。冴実さんの安堵の涙がもらい泣きしそうになるし、朝陽(神谷社長)が駆けつけるのもイケメンすぎる。次が気になる🔥