クリスマスのイルミネーションに彩られた街は、恋人たちでにぎわっていた。
咲は人波の中、待ち合わせ場所の駅前に立っていた。
(……心臓、うるさい。こんなの初めて)
赤いマフラーを首に巻き直し、両手をぎゅっと重ねる。
冷たい空気が頬を刺すのに、胸の奥は妙に熱かった。
ふと、人混みの向こうに背の高い影が現れる。
見慣れた姿――けれど、今日はどこか違って見えた。
「……妹ちゃん」
少し息を切らしながら駆け寄ってきた悠真が、目の前で立ち止まる。
いつもの笑顔なのに、どこかぎこちない。
「待たせた?」
「いえ……私も今来たところです」
そう答えた声は震えていた。けれど、目が合った瞬間に、互いの頬に自然と笑みが浮かんだ。