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「じゃあ、君のいう純価値っていうのは、どういうものなの?」
「いつでも変わらない価値だ」と旅人は言った。
きっと大学生は、時給の価値は見えていたけれど、そもそも何のために高時給でお金を集めるのかという、その先にある幸せという価値に、気づかなくなっていたに違いない。そのオリンピック選手も、おそらく同じような感じじゃないか、と青年は心の中で思った。
海峡の波の上に、光の粒が踊る。海峡の出口を見ると、マルマラ海にブイが浮いているのが見えた。
「みんな、あそこまで泳ごうとするだけの毎日でアップアップだよ」青年はブイを指した「その先なんて見えやしない」
「確かに、水平線の向こうは目には見えない。でもだからといって、何もないわけじゃないよ。さっきのサッカーボールだって、目には平らな面を転がっているようだった。でも実際の地球は丸い」と旅人は言った。
「そんなこと考える余裕もないんだよ」と青年は言った。
「希望があれば、もっと前へ進める」と旅人は言った。
「なら、きっとみんな向こう側に希望がないんだ。だから、見える近いものばっかりに焦点を置いてる」と青年は言った。
「そうすると、いつまでたっても浅瀬をうろうろすることになるだろうね」と旅人は言った。
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