テラーノベル
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戦争賛美 及び 政治的意図はございません。
⚠︎旧国注意
事件のあと、日本は変わった。
表情はいつも通りに見えるけれど─
誰かの視線にふと身をこわばらせたり、
男性の声が近くで響くとびくりと肩を揺らしたり。
とくに、大柄な男や無遠慮な距離感に対しては明らかに怯えていた。
「…男の人がちょっと…こわいんです…」
ぽつりと、日本が告げたその一言に家中が凍りついた。
陸・空・海たちはただ静かにうなずいた。
「…俺たちの声や姿で、怖がらせてしまうのか」
そう思うと距離を詰めることすら、ためらわれる。
けれど、それでも─
日本のそばにいたい。守りたい。癒したい。
だから彼らは焦らず、無理をせず、ゆっくりと寄り添い始めた。
陸は距離を取った。
「…俺はすぐに怒鳴るし、怖い顔してるからな。しばらく声だけでそばにいる。
日本が大丈夫だと思えたときだけ、振り向いてくれればいい」
いつもの頼れる背中が、あえて背を向けて日本の安全を見守ってくれる。
「…ありがとうございます、お兄様」
海は言葉で支えた。
「怖くてもいい。俺が“男”じゃなく、“兄”として隣にいると信じてくれるだけでいいんだ」
優しい声と落ち着いた話し方で、日本の緊張を少しずつほどいていく。
空はいつも通りの笑顔を少し抑えて。
「僕の声まだ怖い? …でもね、僕は日本を傷つけるなんて絶対にしない」
遠くからぬいぐるみをそっと手渡してくれる。
そして、にゃぽんが日本の手を取って言った。
「怖くなってしまうことは恥ずかしいことじゃないの。大切なのは、“怖い”ってちゃんと伝えてくれた日本の強さよ」
日本は小さく頷く。
数日後
「…お兄様」
日本がそっと、陸の服の裾を握った。
その手はまだ少し震えていたけれど、 陸は黙ってその手を包み込んだ。
「…ただいま」
「おかえり、日本」
ほんの少しだけ、恐怖心を飲み込んで。
…そのあたたかい手に甘えたくなった。
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