テラーノベル
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「なぁ、鳴宮、お前……何でいきなり俺のこと、下の名前で呼んできた?」
って……。
その声に涙目になりながら柳川を見上げたら、凄く暗い目をして私を見下ろしていた。
ねぇ、柳川、どうしちゃったの?
何でそんなに怖い顔してるの?
寛道って呼ぶのが……そんなにいけないことだったの?
あの子以外にはそう呼ばれたくなかった……?
私を見下ろす柳川の表情が冷たくて、私はどう答えるのが正解か分からないままゆらゆらと瞳を揺らす。
でも、今の柳川相手に、下手な嘘は通用しないって、それだけは分かった――。
「今日大好きな女の子を前に一生懸命頑張ったのは……柳川……って言うより〝柳川寛道〟っていう男の子だって思ったの……。だから――寛道って呼ばなきゃ意味がないと思ったの」
自分でもはっきりとは分からない曖昧な気持ち。
こんな下手くそな説明で、伝わるかな。
すごく不安だったけれど、それ以上どうやってこの感情を言い表したらいいのか、私には分からないの。
つくづく自分の表現力のなさを痛感させられて嫌になる。
子供の頃から変形菌のことばかりで、他はそこそこでいいやっておざなりにしてきたツケが回ってきたのかな。
ない語彙力を駆使して必死にアレコレ言ってみたけれど、柳川はうつむいたまま何も言ってくれない。
だから私はどうしたらいいかますます分からなくなって、更に言葉を探したの。
そうして、もうある程度本心を曝け出すしか道がないって思い至った。
そのことが後で自分の首を絞めることになるなんて思いもせずに。
「じ、実は私もね、その……大学へ入学してからずっと……片想いしている相手がいるの。……でも私は意気地なしで卑怯者だから……柳川みたいに正々堂々とその人にぶつかれないでいるの。……今度こそって何度も何度も思うくせに、気が付いたら曖昧に濁した言葉しか伝えられなくて……。でも……そんな誤魔化しだらけの言葉に対してでさえ……どうしようもく相手からの反応が怖いって思うから。――だからね、ちゃんとぶつかって……相手からの返事を受け止めた柳川のこと……純粋に凄いな、偉いなって思ったの」
ねぇ柳川。
私の言葉、ちゃんと届いてる?
お願いだから……私の方を見て?
さっきから私、ひとりで喋り続けてるみたいですごくすごく寂しいよ。
そんなことを思いながら、一生懸命柳川の顔を仰ぎ見るけれど、今の柳川の表情は髪の毛に隠れていて。
下から見上げてもよく見えないの。
唯一そんな柳川の反応が知れるのは……時折私の腰に回された腕に微かに力がこもること。
ね、……きっと聞こえてはいるんだよね?
そう信じて話、続けても……いい?
「――ちゃんと自分の気持ちを伝えて……結果は残念だったかも知れないけど……。今日柳川は全力で相手にぶつかって……それでめちゃくちゃ辛い気持ちに耐えてるんだなって……そう思ったら……。ごめん。私、無意識に身体が動いちゃってた……。私にとって柳川はすっごく大事なひ……、――友人だからっ。……だからね、純粋に元気付けたかっただけなの」
月詠 涼
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鷹槻れん

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#極道
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危うく「大事な人」って言いかけて、「大事な友人」って言い直したけれど……変に思われたりしてないかな。
言葉を発するたび、息継ぎをするたび、柳川がまとった洗濯石鹸と、そこに微かに混ざる彼自身の香りを胸一杯に吸い込んでしまって……。
大好きな人の匂いだって意識しちゃうから、私、今すっごくクラクラしてる。
このふわふわとした感じ、きっとお酒のせいばかりじゃないよね。
私、こんなに柳川のことが大好きなのに……。
大事な人と称することも、「貴方が好きなの」と告白することも出来ないままに、「真っ直ぐな柳川を尊敬しているの」と言ったのと同じ口で、本心をひた隠す言葉を紡ぐ。
「それ以上の深い意味はないよ」
って。
本当、何やってるんだろう。
それでも私、柳川に例え〝女性として〟好きになってもらえらないとしても、〝私という存在自体が〟嫌われてしまうのだけは絶対に嫌なの。
それが回避できるなら何でもいいって……そんなことばかり考えてた。
「急に呼び方変えて怒らせたんだとしたら……配慮が足りなくてごめんね。でも……決して軽い気持ちでそうしたんじゃない。……それだけは……お願い、信じて?」
ここまで言っても許してもらえなかったら、私……もうどうしたらいいか分からないよ。
柳川、お願いだからこっちを見て? 一言でいい。「分かった」って言って?
***
「――鳴宮の言いたいことは分かった」
ややしてポツン、と。
柳川がそう言ってくれた瞬間、私はホッとして全身の力が一気に抜けた。
「――って、オイ! 鳴宮!?」
柳川が崩折れる私を抱き止めて、必死に声を掛けてくれたけれど意識が混濁して――。
しっかりしなきゃって思うのに、目が開けられないままゆっくりと……。
……溶暗――…………。
コメント
2件
名前呼びが鬼門だったの?(涙)
あああもうこの回ずっと心臓ぎゅーぎゅーだった!!😭💦 鳴宮が「寛道」って呼んだ理由、一生懸命説明してるところが切なくて…“大事な人”って言いかけて“友人”に変えたの、完全にバレてるってば!!ってツッコミ入れたくなったよ…。 柳川の暗い目も怖かったけど、最後のフェードアウトで「え、待って続きは!?」ってなった…次話が待ちきれない…!✨