テラーノベル
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目が覚めると、私はベッドに寝かされていて、すぐ横に柳川が神妙な顔で付き添ってくれていた。
「……やな、が、わ……?」
まだしっかり覚醒していない頭で、ぼんやりと柳川の名前を呼んだら、何故か即座に「悪かった!」って謝られて。
「な、んで……柳川が謝るの?」
言いながらゆるゆるとベッドに身体を起こしたら、ズキズキと頭が痛んで思わず眉をひそめる。
今日は悪い酔い方をしてしまった。
好きな人を元気付けなきゃいけないようなこんな大事な局面で、本当情けない。
そう、そうなの。
無茶な飲み方をして柳川に迷惑をかけてしまったのも。
大失恋をしたばかりの柳川の気持ちも汲めずに無神経なことをして怒らせてしまったのも、みんなみんな私。
どう考えても私の失態ばかりなのに。何で柳川が謝るんだろう?
ベッドサイド、床に頭を擦り付けんばかりの勢いで頭を下げてくる柳川をキョトンと見つめたら、
「いくら感情の抑えが利かなかったからって――俺、お前に酷いことをしたっ!」
って一向に頭を上げてくれないの。
「柳川……とりあえず顔を上げてよ。私、貴方のつむじと話してるみたいで落ち着かないよ」
言って、ベッドから降りて床に正座する柳川のそばにひざをついたら、何故か慌てたように後ずさるの。
「柳、川……?」
「鳴宮っ、片想いしてる相手が居るんだろっ? なのに俺……お前にあんな無理矢理……」
言って、柳川が自分の唇に手の甲を押し当てたのを見て、私、やっと理解した。
それと同時にあの濃厚なキスを思い出して、ぶわりと顔に熱が昇る。
「あ、あ、あ、あれはっ、……わ、私も悪かった、しっ。だから……っ」
――大丈夫、気にしないで?
そう続けたかったのに。
「忘れて……くれるのか?」
どこかホッとしたようにそう問いかけられて、私は胸の奥がチクン、と痛んだ。
柳川の気持ちを解したい一心で告げた、「片想いの相手がいる」という話。
その対象が柳川だと気取られてはいけないと思って曖昧にぼかした結果がコレ。
私がやることはいつだって空回りで、いつだって最悪の事態ばかり招いてしまう。
あの告白のせいで、大好きな柳川に距離を取られてしまうだなんて……。
こんな事なら言わなきゃ良かった。
月詠 涼
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鷹槻れん

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#極道
鷹槻れん

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「……うん、そだね。アレは事故みたいなものだと思って……お互い……」
忘れよう、とは明言できなった。
だって、例え怒りに任せた当てつけのようなキスだったとしても……あれは私にとっては紛れもなくファーストキスで。
それも、大好きな人にされたものっていう大切な思い出なんだもの。
忘れられっこないよ。
っていうより……ごめんね、柳川。
私、絶対に忘れたくない。
***
昨夜あの後、柳川はタクシーを呼んで帰宅して行った。
彼が部屋を出てすぐ時計を見たら0時を回っていて。
結局私、柳川を待たせたまま1時間以上眠っていたんだと気が付いて申し訳なくてたまらなかったの。
次に彼に会えたらすぐにでも謝らなきゃ!って思ったけれど、なかなかその機会に恵まれないままに放課後。
日中はずっと楓が傍にいたし、柳川の方も友人達と一緒で。
そんな状態で「昨夜は寝ちゃってごめんね」なんて意味深なことを言えるほど、私、図太くない。
昨日はたまたま柳川が、みんなを避けるみたいに研究棟の隅にある変形菌の培養室にいてくれたから他のゼミ生に邪魔されずに彼を連れ出すことが出来たけれど、今日は違う。
いつもみんなが各々の研究に勤しんでいる『天然医薬資源学研究室』に入ろうとドアの前に立ったら、中から話し声が聞こえてきた。
うちのゼミには今現在2年生2人、3年生3人、4年生2人、院生3人の計10人が在籍していて、女の子は私だけ。
同級生は柳川だけで、あとはみんな先輩たちなので、男の子達がワイワイ話していると、何となく扉を開けるのが躊躇われる。
楓は別のゼミ――東洋医薬学――を専攻しているのだけれど、そっちは20人足らずのメンバーで、男性より女性の方が若干多いみたい。
小さい頃から変形菌一筋で、今いるゼミ以外の選択肢なんて考えられなかった私だけれど――というかむしろそれ目当てでここへ入学したくらい――、今みたいに何となく扉を潜りにくい場面に遭遇すると、楓と同じゼミにすればよかったかも、と思わないこともない。
よく考えてみたら私、いつも研究棟に来る時には大抵柳川と一緒に行動していたんだった。
無意識に彼に頼っていたんだと、たまにひとりで研究室に来ることを余儀なくさせられると痛感してしまう。
研究室のドアの前で深呼吸をして、いざ扉を開けようとノブを握ったら、中から
「なぁ、鳴宮さんとか誘ってみるの、良いと思わね?」
「あー、それ絶対じゃろ。うちのゼミ唯一の紅一点じゃし。それに俺さ――」
という声が聞こえてきて、〝え? 私……?〟とノブを握ったまま動けなくなる。
話の内容から察するに悪口ではなさそうだけど。
ドキドキして思わず扉から離れるように数歩後退りして。
それに俺さ、の後に続く言葉を聞きそびれてしまった。
ドア越しで顔が見えないから誰、とかそういうのはハッキリとは分からなかったけれど、話していた2人のどちらにも柳川がいなかったことだけは、声からして確かだった。
私がいない所で自分の名前が出ていたと言うのは落ち着かなくて……。
でも、だからと言って「何の話ですか?」みたいに気安く声を掛けながら出ていくのは、何だかとってもハードルが高い気がするの。
でも、いつまでもここでグジグジしているわけにはいかない。
コメント
2件
自分の話題! これは気まずいね。
第8話読みました〜!😭💕 もうね、朝から胸がギュッギュッてなったよ〜!! 柳川くんが「悪かった!」って頭下げるシーン、あれ反則でしょ!?こっちまで顔から火が出るかと思ったよ🔥 しかも「忘れるのか?」って聞かれて「忘れたくない」って心の中で叫ぶ主人公ちゃん…その気持ち、マジでわかるっ…大好きな人のキス、忘れられるわけないよね😢 ラストの研究室前でドア開けられないとこも、共感しすぎて辛い〜!!周りの会話に自分の名前が出てきてドキドキしちゃう感じ、めっちゃリアル!続きが気になりすぎて授業中も考えちゃいそうだよ🌸