テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
「きょ、京児の兄貴ぃ……。ヤメときましょう、兄貴ぃ……。俺、思い出したんです。こいつ、悪魔ですよ。絶対に人間じゃないんです」
山嵐助三郎、六駆に殺されかけた事実を完全に思い出した。
あの時は山嵐の手によって、下手をすると莉子とクララが命を落としかねなかったため、六駆のお仕置きもガチだった。
山嵐の先ほどの攻撃も魂に刻まれた生存本能のようなものであり、「何かしないと殺される!」という焦りからのものだった。
そう考えると「まあ、それだったら仕方ないな」と思えてしまうのは何故か。
「アーハハ! 助三郎、ミーの実力を忘れたのかい? ミーは日須美ダンジョンの最深攻略パーティーのリーダーだよ? つまり、このダンジョンにはミーより強い探索員はいないのさ! さあ、立ち上がって、我が雄姿を見たまえ!!」
山嵐と梶谷が兄弟愛を確認し合っているのを見て、六駆は莉子に聞いた。
「あのさ、今って隙だらけじゃない? もう一発思い切りビンタしてもいい?」
「えー。やっちゃえとは言ったけど、せめてマナーは守ろうよぉ」
マナーとは何だろう。
莉子の短い一言は、マナーを守らない者に対してマナーを順守する必要があるのか、礼儀作法の有識者へと一石を投じるものだった。
「アーハハ! 隙だらけだよ、ユー! 『エレクトリックフロスト』!!」
繰り返すが、マナーとは何だろう。
だけど、梶谷京児の放った不意打ちは小悪党のマナーに則っている気がしてならない。
「おおー! 雷と氷の複合スキル! しかもなかなかの練度! 地面に電撃を走らせて、その後に追撃の霜で相手の足を止めるって寸法か! よく考えられてる!! Aランクってすごいんだなぁ!!」
属性複合スキル自体は、さほど難しいものではない。
クララもよく雷と麻痺属性を複合した『パラライズサンダルアロー』を使用する。
もちろん、属性同士を混ぜ合わせるには相応のセンスが求められるため、出来ない者は10年かけても出来ない高等技術であると前置きはされるが。
梶谷のスキルは同時に放った電撃と氷。それらが「相手の足を止める」という目的を共有しているところが素晴らしいと六駆は感じた。
やみくもに威力ばかりをスキルに求めているうちは二流。
そこに意味を持たせられると、一流の入口が見えて来る。
「ふぅぅぅんっ!!」
「アーハハ! アーハはぁ!?」
「あああ……」
と、ここまで梶谷の実力を褒めておいてアレだが、六駆おじさんに敵うはずないのだ。
六駆は右足で地面をドンとやった。
すると、梶谷の先制攻撃はシュンと消えていく。
「す、少しはやるようだな、ユー! これならどうだ!! 『ウインドキラーシンティラ』!! そらそらそらそらそらぁ!! 5発だ! これなら避けられまい!?」
「あーあー! これがウインドキラー! 確かに『太刀風』に似てる! やっとこの目で見られたよ! ねえ、莉子! 君の言ってたヤツ、これだよね!?」
実に昔の話だが、諸君は覚えているだろうか。
初めて『太刀風』を見た莉子に「『ライトカッター』ってこんな感じ?」と聞いた六駆。
莉子は「それは『ウインドキラー』クラスだよぉ!」と反論した。
ウインドキラーは風属性の中で威力だけならば上位に属する、鋭利な鎌鼬を巻き起こすスキル。
そこにやはり電撃を付与してあり、これは仮に『ウインドキラー』が効かない相手でも、触れる事で麻痺状態にする事ができる、高位の複合スキルだった。
「ふんっ。はっ。せいっ。ほっ。よいしょー」
「ワッツ!? えっ、素手で!? い、いや、それで良いんだ! 馬鹿め!! これで当分の間、全身が痺れて言う事を聞くまい!! ユーをこれからたっぷりといたぶってやるぞ!!」
「うわー。ホントだ。なんかピリピリする。冬の静電気みたいで嫌だなぁ」
「うん? ユー。一応確認するけど、人間か?」
「だから言ったじゃないですか、兄貴ぃ!! もうヤメてください!! あいつ、本気になっちゃいますって!!」
探索員同士のいざこざでスキルの使用は禁止。
その縛りをしっかり守ってなお、六駆のヤバさは全てを凌駕する。
◆◇◆◇◆◇◆◇
諸君らには先にお知らせしておこうかと思う。
これから、梶谷京児はやってはならない事をして、六駆の逆鱗に触れます。
旗色が悪くなったら卑劣な手段に打って出る。
それは、代表的な死亡フラグのひとつである。
「くそぉ! 化け物が! なら、こうしたらどうだ!? 『フレアジャベリン』!!」
梶谷は六駆に攻撃が効かないと判断した上で、決闘におけるマナーを破る。
マナーとは何だと問うてきたが、これこそが最低限のマナー。
勢いよく投げられた梶谷の繰り出す炎の槍は、真っ直ぐに芽衣に向かう。
「みみっ!?」
まさか自分に魔手が迫ってくるとは考えていなかった彼女は、驚き、戸惑い、呆然と立ち尽くす。
莉子とクララから少し離れていたのも良くなかった。
「『瞬動・二重』!!!」
「みみみみっ! 逆神師匠!!」
炎の槍をマントで受け止めた六駆。
彼にスキルを使わせたのは頭脳プレーと褒めるべきなのかもしれないが、その代償はあまりにも大きい。
「芽衣。大丈夫? ごめんね、怖かったね」
「みみっ! 芽衣は平気です! それより、師匠の背中が!」
「ああ、平気、平気。このマント、なんか丈夫に出来てるから!」
六駆の体は煌気で覆われており、梶谷のスキル程度ではマントの莉子の文字を焦がす事すら叶わない。
その事実を理解していない梶谷。
Aランクの品格が落ちるから、これ以上の醜態を晒さないで欲しい。
「アーハハ! 無様に味方のお荷物守ってやんの! ユー! カッコ悪いなぁ!!」
「……兄貴ぃ」
六駆おじさんのキレるパータンは数あれど、仲間が危険にさらされるヤツが最もヤバいのは周知の事実。
「……小僧。覚悟は良いな? 言っとくけど、僕も手加減しないよ?」
「ヘイヘイ、ユー! まだ何もしていないのに、何を言ってるんだい? アーハハ!!」
「『瞬動・三重』。よし、お前にはちょっとだけ本気を出してやろう。死なないように、全力で防御しろよ? ふぅぅぅぅんっ!! もう一発! ふぅぅぅぅぅぅんっ!!」
「アーハハ、は? いつの間に移動をしちゃぺっ!? がにゃっす!?」
あいさつ代わりの往復ビンタ。
逆神流の『二重』と『三重』は、文字通りスキルの威力を2倍、3倍にする。
特に『三重』は威力があまりにも大きいため、六駆も余程の事がない限り使わない。
「『光の連撃拳・三重』。ふんふんふんふんふんふんふんふんっ!!」
「ワッツ!? な、なにこ、これは、なに!? あ、あ、みゃすけて!? あべべべべっ」
「やれやれ。まあ、精々反省するんだな。その攻撃は、当分終わらないから」
『光の連撃拳』は文字通り、有体に言えば高速の連続パンチである。
その速度を極限まで煌気によって高めた結果、六駆が攻撃を終えてもなお、連撃は相手の体に降り注ぐ。
通常のモンスターならば簡単に肉片となって飛び散るところだが、どうにか顔の形を変えながらも生きている梶谷京児は、さすがAランクと言っても良いと思われた。
六駆の仲間に手を出すと、こうなる。
山嵐組も含めて、彼らは2度とチーム莉子に関わらないだろう。
#ダンジョン
#学園