壁に紛れた扉が、ドアノブの音を立ててゆっくりと開かれた。
日本(誰だ………???)
日帝「…………!」
その音に、2人は瞬時に気づいて振り向く。
向いた先に居た者は
大国である、”アメリカ”だった。
相当焦っていたのか、遠くからでも分かるほど汗ばんでいる。汗水が部屋の光を反射し、光っていて眩しい。荒い息をつきながらも、俯いている顔を上げて、彼は口を開いた。
アメ「日本!日帝chan!ここにいたのか、今すぐ帰………」
途端、彼の瞳に映ったのは、 服を着ずに無気力でへたり込んでいる日帝と、刃物を片手に握り、日帝の前に立つ日本の姿だった。
2人は誘拐されたと思い込んでいたアメリカは、目の前の状況に理解できず、混乱してしまう。
だが、アメリカは瞬時に切り替えて日帝の前に立った。
アメ「その刃物を下ろせ、日本」
日帝「米……帝…」
アメ(ど…どういう状況なんだ……!なぜ日本はあんな危険物を…)
日本はゆっくりとアメリカに顔を向け、こう言い放った。
日本「退いてください。」
アメ「……日本、お前どうしたんだよ、日帝chanと一緒に拐われていたんじゃ……」
日本「はぁ………拐われた?何を仰っているのです?」
アメ「…な、 なあ……」
日本「私の父さんに近づかないでください。この汚れが………」
日本はアメリカに対し、次々にトゲを刺すような言葉を繰り出した。
日本「勝手に首を突っ込んで来ないでください。大体アナタ、不法侵入なんですよ。出ていってくれな…」
アメ「そんなこと言っている場合では無いだろ!!」
黙って聞いていたアメリカは、ついに気持ちを爆発させて怒鳴った。
その怒号は部屋の中の隅々を響き渡り、耳を劈いて消えた。
急な叫びに日本も流石に驚いていたのであろう、身体が縦に跳ね、少しだけ後退りをしている。
日本「怒らないでくださいよ、鼓膜が死んでしまう…」
苦笑しながら片耳をおさえ、顔を歪めた。
口角を引き攣らせたまま、顔をあげてアメリカを睨みつける。
アメ「聞いていれば勝手に愚痴愚痴言って…心配した俺らの身にもなれよ!」
日本「本当にうるさいです…一度口を縫い合わせてあげましょうか?」
日帝「二人ともやめろ……」
日帝が座り込んだ状態で、弱々しく声を出す。
“父さん”の声に反応した日本は、目線を日帝に集中させた。日本が油断した隙に、アメリカは日本を突き飛ばす。
日本「ッ…………!」
日本はバランスを崩して、その場に尻をついた。
その内に、アメリカは自身の羽織っていた上着を日帝に着せ、姫抱きにして持ち上げた。
日本が顔を上げると、既にアメリカは日帝を守るように抱き上げていて、離さないようしっかり抱きしめていた。
日帝「っ…何を…ッ!」
アメ「しっ…今だけだ。」
急に抱かれて暴れ出そうとする日帝をなだめ、日本の方を向く。
こちらを見ている日本の表情は、まるで心臓を奪われたかのような、冷めた顔をして目を見開いていた。
日本「ぁ………とう…さ…」
彼の父を呼ぶ声は掠れていた。
心残り…とでも言おう、アメリカはずっと気になっていた事を日本に聞く。
アメ「日本、お前は……日本か?」
自身を見下ろすアメリカを、日本はゆっくりと見上げた。顔を皺ばませ、鬼のような面をしている。
日本「…………は?」
沈黙が空気を揺らす。日本は動揺が隠せずにその場に佇んだ。
アメ「お前…日本ではねえだろ。仕草も言動も…それに俺のこと何と呼んだ?」
日本「………、……」
アメ「”アナタ”……だったよな」
アメリカの圧に、日本は顔を歪めて背筋を凍らせる。溢れんばかりに目を丸くし、再びアメリカを睨んだ。
アメ「なあ、お前…日本じゃねえんだろ。今すぐ出てこい」
日帝「米帝…何を言っているんだ。眼前の者は日本であろう…?」
と、小さな声で呟いた。日帝は鈍感すぎる。いつもの日本と、今目の前にいる日本の区別がつかないらしい。
更にアメリカは日本らしき人物に問い詰める。
アメ「日本に化けてるのか?それとも…日本の身体を操ってるのか?」
日本「………るさぃ……」
アメ「…ハッキリ言え。聞こえない」
日本「うるさいんですよ!!」
アメ「………ッ…」
日帝「日本……」
日本「いいんですよ分からなくて…」
目を細くして無表情のまま近づいてくる。
逃げようにも、扉の場所は自分の背中の反対側だ。
辺りを見回している内にどんどん近づいてくる。
アメ「クソ………」
彼は足元に落としていた刃物を拾いあげ、そのままアメリカの目の前まで来る。
アメ「待て日…本。落ち着いてくれ」
日本「はは…落ち着いてですって?笑わせないでください………よ」
日本は、包丁を頭上に構え、アメリカの顔を目がけて振り下ろそうとする。
アメリカは、自分の死を悟った。
刃物と手が、ゆっくりと動いてるように見える。
刃先が孤を描いて自身の顔に向かって下ろされる。
日帝が俺の足首を掴んで必死に叫んでいる声が聞こえた。
もう終わりだと察し、目を伏せかけたその時。
日本「……………は…?」
刃は、俺のすぐ目の前で止まり、ただ空を切る音だけが耳に届いた。
自身がまだ生きている事に驚き、直ぐ様日本を探すために周りを見る。
ふと下を見ると、日本が頭を押さえて蹲っている。
日本「ぅあ゙…ぁ………やめろ……やめろやめろやめろ!!!」
発狂し、取り乱し始めた。その姿は、何かに取り憑かれた獣そっくりだった。
日本の周りに、ゲームでよく見たバグのようなものが生じている。
自身を傷つけようとしたとはいえ、心配になって日本に近寄る。
アメ「お、おい。どうし……」
日本「や…やめ……やめろ…!!ぅ……あ゙ぁあ…」
すると、日本の身体から、鮮やかな群青色の透明ななにかが這い出てきた。
日本の本体はバタリとその場に倒れ、気を失っている。
日本から出てきた群青色の魂のようなものが、叫び声をあげている。
魂「ぁあ゙あ゙あ゙あ゙…!!誰も彼も邪魔して…私の計画を終わらせる気ですか…!!!」
アメ「計画…?お前は誰なんだ……!!」
咄嗟に倒れた日本を抱き上げ、日帝の元まで後ずさる。
魂「邪魔なんですよ…アンタ。はぁ…私の計画を妨害するなんて…死に急ぎに来たんでしょうね…」
すると、魂から上半身が生え、腕から手へと、次々に身体が出来上がってくる。
魂「アナタたちは終わりです…殺されたくなければ日帝サンを渡しなさい」
アメ「何言ってるんだ!!さっきからずっとクレイジーな奴だなお前!」
アメリカも顔を歪ませて反抗する。
これ以上傷はつけられたくない。だからといって日帝を渡すわけにもいかない。
日帝「米帝……」
日帝がアメリカのズボンの裾を引っ張る。
アメ「なんだ、日帝chan。」
日帝の傍に屈んで、耳を貸してやる。
すると、小さくか細い声で言った。
日帝「お前は…日本を連れて逃げろ。」
アメ「は?」
日帝の思いもよらぬ決断に、混乱して視野が揺らぐ。そんな…日帝chanが……
アメ「駄目だ…3人で無事に帰ろう!!な?」
日帝を説得しようとするも、首を横に振るばかり。諦めの利かないアメリカは、ずっと日帝の手を握って説得し続ける。
アメ「な、なぁ…!!」
日帝「良いんだ。俺は…お前らが無事ならそれでいい。お前らが助かるのなら俺が犠牲になったほうが安いだろう」
アメリカの目から大粒の涙がこぼれ、日帝の頬に落ちた。喉が嗚咽をあげ、苦しそうに呼吸をしている。
日帝「大丈夫だ。心配はしなくて良い…戻れれば、必ず帰省する」
魂「遅い……もう良いです。来なさい日帝サン。」
魂が、手を伸ばして日帝身体を抱き上げた。
途端、わけも分からずアメリカと日本が縛られ、棚に括り付けられる。ついでに口もテープのようなもので塞がれ、まともに声を発せない。
アメ「ん…んん゙ん゙!!」
約束と違う。日帝が命を持って犠牲になると言ってくれたのに、俺らは縛られて括り付けられている。
日帝「は……おい、米帝らを帰してやれ」
日帝はその様子を見て、魂に訴える。
だが、耳を傾けようとしない。
魂「ふふ……ははは……、…日帝サン。」
日帝「ぐ……なんだ……」
魂「あなたのだぁ〜い好きな、あの子に会えますよ♡」
あの子。その言葉を聞いて瞬時に察した日帝は、顔が青ざめる。
日帝「まさか……………」
魂「ふふ……もうすぐ起きますよ、
おはようございます、こんにちは、こんばんは。
約一ヶ月ぶりの投稿になってしまい申し訳ございませぬ…( •̀ㅁ•́;)
語彙力の低下に困っております…大変😭
満足していただけたら大変喜ばしいです✨✨️
次回お楽しみに。💕
コメント
10件
天才すぎる
かるぴっちーの文才はやはり計り知れない…✨️触手ってやっぱり最高過ぎるぐ腐腐h((
楽しみにしてた! やっほぅぅぅぅぅぅぅぅう! まさかの登場!そしてまたもやインサート!いいですねぇいいですねぇ〜!