テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
少し時を遡り、数日前。
「少し買い物に行って来ます」
クルカはそう言って買い物に出かけた。エウリはここ数日すまないに付きっきりなので、簡単に食べられるものを考えながら歩く。
(やはりパンとかかしら……?でも普通のパンじゃ味気ないし……あ、あとすまないさんが貧血とも言っていたわね……)
そんな事を考えていたからだろうか。
ドンッ
人にぶつかってしまった。
「す、すみません!」
顔を上げるとそこに居たのは蛇一族の族長・ヨルムンガンドだった。クルカはピシッと固まってしまった。
(……まずいまずいまずい!私ここで殺されるかもしれない……!)
ヨルムンガンドはしばらくクルカを見たあと
「お前はエウリのところの使いだな」
の言って来た。
「さ、左様でございます……」
ヨルムンガンドはふむと考え込む。クルカは一刻も早く立ち去りたくて、されども立ち去る事も出来ずカタカタと震えていた。
「丁度良い」
ヨルムンガンドはクルカの目を覆う。
「……?」
(……え……?私殺されないの……?)
その瞬間映像が頭の中に流れ込んで来る。
「……ゔっ……」
(……なに……これ……!)
ガサッ
持っていたバスケットを落としてもクルカは動けなかった。思い出したくもない記憶が記憶の底から引っ張り出される。青い髪が特徴的な一族____【すまない一族】が両親を痛め付けている。ボロボロの両親の姿が目に焼き付いて離れない。
(……ああ……思い出した……)
クルカの瞳が暗くなり、光が消えた。目付きも少し鋭くなったようだ。
「……すまない一族は……私が殺す……」
呆然とそう呟いた。クルカにそっと囁く。
「今一番近くに居るすまない一族は誰だ?」
「……Mr.すまない……」
「最初に奴を殺れ」
「承知いたしました。ヨルムンガンド様」
クルカはバスケットを拾い足早に商店の方へ向かった。
「……すまない一族に憎しみを持つ奴がどうやって殺すのか……見ものだな」
「えっと結局……エウリ様が簡単に食べれるものがいいわね」
手際よくさっさと買っていく。全て簡単に食べられるものの材料だ。
「よし、これくらいで良いわね」
クルカのバスケットの中には沢山の食材が入っているがその中に貧血に効果があるものは入っていない。
「さてと、帰りますか。お昼時も近いしお腹を空かせているわ」
クルカは軽い足取りでそそくさとエウリ邸へと帰って行った。
「ただいま戻りました」
そう言ったが返事はない。食材を手早く冷蔵庫などに仕舞ってからすまないに与えられた部屋に行く。
コンコンコン
「失礼します」
部屋の中ではエウリがすぅすぅと寝ていた。
(……無防備過ぎますよ……)
クルカの手には何かキラリと光る物が握られていた。
プツッ……ツゥー……
この時から、クルカの静かな、そして何より残忍な暗躍が始まったのであった。
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!