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第八十二話 冬の街
十二月の半ば。
街はすっかり冬の景色になっていた。
駅前には大きなクリスマスツリーが飾られ、
夜になるとイルミネーションが街を照らしている。
湊は大学の授業を終え、
そのまま写真プロジェクトの
打ち合わせへ向かっていた。
今回の企画では、
地域に暮らす人たちの日常を撮影する。
ただ綺麗な景色を撮るのではない。
その人がどんな場所で暮らし、
どんな時間を過ごしているのか。
そこにある「日常」を残す。
それが今回、湊に与えられたテーマだった。
「難しいな……」
湊は資料を眺めながら呟いた。
今までのように、
自分が好きだと思った瞬間を撮るだけではない。
誰かの大切な時間を、
自分のカメラで残す。
責任も感じていた。
打ち合わせが終わったあと、
湊は一人で街を歩いた。
カメラを持って、
いつもよりゆっくり周りを見る。
商店街の店先。
家へ帰る人。
小さな公園で遊ぶ子どもたち。
仕事を終えて店を閉める人。
どれも特別な出来事ではない。
でも、その一つ一つが、
誰かにとってはいつもの一日だ。
湊はシャッターを切った。
一枚。
また一枚。
すると、
以前よりも写真を撮ることが
慎重になっている自分に気づいた。
「何を残したいんだろう」
写真を撮る前に、
そう考えるようになっていた。
その夜。
紬から電話がかかってきた。
「もしもし?」
「今帰ってきたところ?」
「うん。湊は?」
「俺も今、写真の撮影終わった」
「寒かったでしょ」
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羊と亀のお遊戯会
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羊と亀のお遊戯会
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#四角関係
柿の木七味
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「めっちゃ寒い」
二人で笑う。
「そういえば、今日すごいイルミネーション見たよ」
紬が言った。
「写真ある?」
「あるよ」
送られてきた写真には、
たくさんの光が並んでいた。
「綺麗だな」
「でしょ?」
湊も今日撮った写真を送る。
「こっちは普通の商店街」
「普通って言わないの」
「え?」
「私は好きだよ、こういう写真」
紬は送られてきた写真をじっくり見ていた。
「なんか、そこにいる人たちの生活が見える感じがする」
その言葉を聞いて、
湊は少し黙った。
「……それ」
「ん?」
「今回の企画で、俺が撮りたいと思ってるものかもしれない」
「じゃあ、もう見つかってるじゃん」
「そうなのかな」
「うん」
紬の声は、
いつもと変わらなかった。
でも、その何気ない言葉が、
湊の背中を押してくれた。
電話を終えたあと。
湊は今日撮った写真をもう一度見返した。
イルミネーションのような、
誰が見ても綺麗だと思う景色。
それとは反対に、
何気ない商店街の風景。
どちらも写真。
だけど自分が残したいのは、
後者なのかもしれない。
その場所で暮らす人の声。
いつもの景色。
何気ない一日。
そこにある、
目には見えない物語。
湊は新しいアルバムを開いた。
「夢の途中」のページに、
今日の写真を一枚追加する。
タイトルは、
「冬の街」
その下に、小さく書いた。
「誰かにとっての『いつも』を残す。」
湊はカメラを机の上に置いた。
まだまだ知らないことばかりだ。
でも、
少しずつ自分が撮りたい写真が分かってきた。
夢は遠くにあるものだと思っていた。
けれど今は、
一枚ずつ写真を撮るたびに、
少しずつ近づいている気がする。
📷 Photo.082「冬の街」
撮影日:12月15日
特別な場所じゃなくても、
そこには誰かの大切な日常がある。
その「いつも」を残すことが、
湊の新しい目標になっていった。
――次回、第八十三話「クリスマスの約束」へ続く。
コメント
1件
ちょうど読み終わったよ〜!!🌸 今回の湊くんの写真に対する向き合い方の変化、すごく素敵だったな。 「特別じゃなくていい、誰かの『いつも』を残したい」って気づく過程がじんわり沁みた😢 しかも紬が「私は好きだよ」って言うのがもう…推しカップルの距離感尊すぎてアツい!! イルミネーションも商店街も、湊の目を通すとどっちも宝物に見えてくるんだよね。 次回のクリスマス約束、絶対泣くやつだこれ…楽しみすぎる😭💕