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教室にはもう誰もいなかった。
放課後、雨が静かに窓を叩いている。
🐣(あ〜あ……傘、持ってこなかった)
カバンを抱えたフィリックスは、窓の外を見つめて小さくため息をついた。
天気予報、見たのに。ヒョンジンに「今日は降るぞ」って言われたのに。
そこへ──
「……ほら。だから言ったじゃん?」
🥟「抜けてんの、直んないね。リクは」
フィリックスが振り返ると、そこには黒い傘を手にしたヒョンジン。
髪が少しだけ濡れてて、でもその顔はいつも通り自信たっぷり。
🐣「……ジナ、来てくれたの?」
🥟「当たり前でしょ。心配で来たに決まってんじゃん」
ヒョンジンは無言で傘を開いて、フィリックスに差し出す。
でもそれは「先に行け」って意味じゃなかった。
🥟「一緒に帰るんだよ」
🐣「……うん」
((フィリックスが傘の中に入り込む))
ふたりの距離が、ぴたりと近づく。
肩が触れそうで、触れない。でもすこし歩けば、自然とぶつかる。
🐣「……ジナの傘、ちっちゃくない?」
🥟「いや、リクの肩が広いだけじゃない?」
🐣「は!? それヒョンジンが言う!?」
ぷくっと頬を膨らませるフィリックスを見て、ヒョンジンは笑う。
そして小さくぼそっと。
🥟「でも……こうやって、くっついて歩けるから、いいじゃん」
🐣「……っ、ばか……」
((フィリックスがうつむいて、耳まで赤くなる))
雨の音にまぎれて、誰にも聞こえないように、ふたりの鼓動だけが重なっていった。