テラーノベル
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翌日、仕事帰りに花斗のお迎えへと保育園に寄る。
「愛音、これ、昨日メールしたやつ」
保育園に着くと早々に、保育園の先生を勤めている私の姉が、チラシを渡してきた。
「ありがとう」
チラシを受け取り、早速そこにある文言を、呟くように読み上げた。
「『親子で英会話、始めませんか?』」
昨日のことをそれとなく姉に伝えると、ちょうどいい習い事があると、姉が教えてくれたのだ。
花斗をピックアップして、帰宅する。
今日は壱月は早上がりだが、明日は朝早いフライトなので、相談は明日の帰宅後に保留。
壱月の作ってくれた夕飯を食べ、お風呂に入る。
早々に寝てしまった壱月を起こさないように、花斗とそっとベッドに入った。
「パパ、おやすみ」
隣の部屋で寝ている壱月に、花斗が小声で声をかける。
花斗が壱月に理解があるのは、自分もパイロットという職業に憧れているからである。
「ママ、あしたのおむかえは、パパだよね?」
「うん。楽しみだね」
「でも、ママのおむかえも、すきだよ?」
その一言に、幸せがあふれ出す。
ああ、もう。
私は壱月にも息子にもこんなに愛されて、なんて幸せなんだ。
だからこそ、頑張りたいと思った。
きっとホームパーティーは、一度じゃない。だから、自分のことくらい自分で守れるようにならないと。
いつまでも、壱月を頼るのはよくないと思う。
明日、帰ってきたら壱月に英会話教室のことを相談して、それから体験教室に参加して、花斗も良さそうだったら……。
そんな段取りを頭の中で組みながら、私も眠りについた。
*
翌日の夕方、仕事から帰宅後に壱月に英会話教室についてさっそく相談した。
「俺は愛音の成長にもなるし、いいと思う。けど――」
壱月は花斗とブロック遊びをしていた手を止め、なにかを考え込む。
「けど?」
聞き返すと、壱月は「やっぱりいい」と花斗との遊びに戻ってしまう。
「えー、なに?」
エプロンを着けながら、ぶーっと文句を言ってみる。今日の夕飯の当番は私だ。
「いや、いいって。体験、行ってみなよ」
「でも、壱月が納得してないなら行きたくない」
「いや、納得してるから」
「してないよ。『けど』って言いかけた」
すると壱月は黙ってしまう。
「花斗も聞いたよね?」
聞くと、花斗は「いってたよ」と素直に教えてくれる。
それで、壱月が「あー、もう!」と後頭部をガシガシ搔き、ぼそっと言った。
「愛音との時間が減るのは嫌だなと、思っただけだ」
「ふっ……!」
想定外の答えが嬉しくて、思わず笑みがもれる。
「今、笑っただろう」
壱月がムキになって、唇を尖らせる。
「うん、笑った。あまりにも、幸せ過ぎる回答だったもので」
ニマニマしながら答えると、壱月はさっと立ち上がる。
そしてずかずかと私の前まで歩いてきた。
やばい、怒らせた?
身構え、体を強張らせていると――
「そのくらい、愛音のことが好きってことだ」
――壱月はそう耳元で囁いて、唇にキスを落とした。
「不意打ち! ズルいです!」
私はそう言うと、ケラケラ笑う壱月の声を聞きつつ、逃げるようにキッチンへと飛び込む。
「パパ、ズルはダメなんだよ」
リビングから、花斗の怒る声が聞こえた。
コメント
1件
ああ、もう、この回……最高でした……! 壱月が「愛音との時間が減るのが嫌だ」って本音をぽろっと零すところ、完全に不意打ちでやられました。しかもその後、耳元で囁いてキスまでするって、反則級のズルさですよ。それに花斗が「パパ、ズルはダメ」って怒るのも可愛くて、家族の空気感がほんわか温かかったです。愛音が自分の成長のために英会話に挑戦しようとする前向きさも素敵で、続きが気になります!